看護師には看護過程という患者さんをアセスメントするツールがあります。
患者さんはそれぞれ入院の背景が異なります。
また、今までの人生における基礎疾患や手術歴の有無なども同様に異なります。
どのように患者さんの特徴を捉えるのか悩みますよね。
そこで、この記事では患者さんの特徴を捉えるための看護過程の展開する際のポイントについてご説明します。
■看護過程とは
看護過程とは、看護師が看護ケアを具体的に実践するための方法論の1つです。
看護過程にはいくつかのプロセスがあり、大きくは「(1)情報のアセスメント⇒(2)看護診断⇒(3)計画⇒(4)実施⇒(5)評価」という流れで成り立っています。
では、その(1)から(5)の流れはどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。
■アセスメント
アセスメントには患者さんについての情報収集とその情報がもつ意味の分析を行います。
患者さんの情報とは、患者さんから直接発せられた言葉や、表情や態度、検査初見やレントゲン画像の所見などあらゆる内容を含みます。
この「患者さんの情報」には2種類あり、それぞれ主観的情報(subjective data:S)と客観的情報(objective data:O)に分けられます。
主観的情報には、患者さんの直接的な訴えや内容です。
客観的情報には、看護師が得られる検査データの数値やバイタルサインなどが該当します。
患者さんのアセスメントについては、膨大な情報があり複雑です。
実際にアセスメントをしよう!と思ってもなかなか気が重く戸惑うと思います。
そこで、看護過程にはアセスメントの枠組みが存在します。
少し難しい話になりますが、ヘンダーソンによる14の基本的ニーズに基づいた枠組み、オレムによるセルフケア理論に基づいた枠組み、ゴードンによる機能的健康パターンに基づく枠組みなどがあります。
看護学生さんは学校で、看護師さんは職場でそれぞれ指定の枠組みがあると思うので調べてみましょう。
どの枠組みを使っているかで、アセスメントの項目に違いがあります。
しかし、1つ1つの枠組みの項目の要素を丁寧にアセスメントしていくことによって患者さんの全体像が把握できるようになるでしょう。
アセスメントでのポイントは、患者さんが入院するということは退院もあるということです。
どういう理由で入院(主病)となり、どういう状態(治癒、寛解)で退院するかをイメージしましょう。
退院先は?家族の思いや負担は?今後の通院は?など退院後の生活の中で困ることがないか想像してみましょう。
そうすると、患者さんが抱えている問題点が見えてきます。
実際の臨床においては、多職種間連携や入退院支援など多くのスタッフが関わります。
医療の高度化に伴い、リハビリや退院支援などの分業や、業務のタスク・シフティングが行われています。
それぞれの役割があることで、同じ患者さんを見ていても気付くことは異なりますので、情報共有や意見交換をしましょう。
自分が気付かなかった視点や得られていない情報が発見できるのでメリット尽くしです。
■看護診断
看護診断については、NANDA(北米看護診断協会:the North American Nursing Diagnosis Association)による看護診断ラベルを用います。
NANDAには13の領域と46の類、診断ラベルから構成されています。
その他にもNIC(Nursing Interventions Classification)という看護介入分類やNOC(Nursing Outcomes Classification)という看護成果分類があります。
NICやNOCはNANDAの指標に連動して使用することができるものですが、多くの病院や学校ではNANDAを導入しています。
よって、まずNANDAの利用法をマスターしましょう。
NANDAの看護診断には大きく3種類あります。
(1)実在型の看護問題、(2)リスク型の看護問題、(3)ウェルネス型の看護問題がありますので、それぞれ説明したいと思います。
(1)実在型の看護問題については、実際に患者さんに生じている問題です。具体的には手術後の疼痛や高体温、骨折による可動域異常などがあります。
(2)リスク型の看護問題では、今現在生じてはいないが、今後将来にわたって起きる可能性がある、と考えられる看護上の問題点です。
例えば、離床にともない転倒や転落を起こす可能性や、手術による創部の感染リスクなどがそれに当たります。
(3)ウェルネス型の看護問題は、患者さんの現在ある能力や状態を促進することにより、心身にとっていっそう望ましい状態にすることができるという考えである。
多くは産後の自己健康管理や、セルフケアの促進による知識や手順などの説明などがそれに当たります。
看護診断は1個でなく複数立案することもできます。
患者さんの問題となっている看護問題に優先順位をつけて、介入していきます。
看護診断におけるポイントは、看護上の問題であることから看護介入の結果によって具体的に評価ができるかどうかが重要となります。
看護診断で問題を立案したものの、治療そのものに影響を大きく受けることや、看護師での介入が困難であっては評価ができなくなります。
看護診断を立案する場合は評価方法もセットで考えることが大切です。
■看護計画
看護計画には観察計画(observational plan :O-P)と直接ケア計画(treatment plan :T-P)、教育計画(educational plan :E-P)の3つの介入方法があります。
(1)観察計画(observational plan :O-P)は観察による計画です。手術の創部やバイタルサインなどがそれに当たります。
(2)直接ケア計画(treatment plan :T-P)は看護師が実際に介入する計画です。創部の処置や日常生活援助などがそれに当たります。
(3)教育計画(educational plan: E-P)は看護師による患者への教育や指導となります。創部の自己管理やストーマの交換方法、インスリンの自己注射の手技などがそれに当たります。
前の項目でも述べましたが、看護計画は看護診断を立案する際にどのような内容で介入するかを考えておく必要があります。
どのような状態を目標とするのか、期間は、評価方法はどのようにするのか、具体的に考えるのがこの計画の段階です。
実際の臨床では治療のクリティカルパスというものが用意されていることが多いです。
クリティカルパスというのは患者さんの治療の流れの計画表のようなものです。
看護計画のポイントは、このクリティカルパスを上手に活用して、適切な時期に適切な看護計画を立案して介入することです。
■看護計画の実施
看護計画まで立案すれば、その次は看護計画を実際に行ってみましょう。
ただ看護計画の内容を行うのではなく、具体的にどこまで達成しているかどうか、次への課題は何かといった視点で実施していきましょう。
そうすることで、看護計画の評価がより一層具体的に評価することができます。
看護計画の実施におけるポイントは、個々の看護師の技量には差異があることを踏まえてケアをある程度均一化できるような「下準備」を行っておくことです。
例えば、インスリンの自己注射であればチェックリストを用いて、〇(自立)、△(声かけや一部介助が必要)、×(看護師の全面的な介入が必要)など誰が見ても理解できるようなツールを用いましょう。
そうすることによって看護計画の評価する際にも焦点が絞りやすく、より具体的な課題や問題点が浮かび上がってきます。
■看護計画の評価
看護計画の評価は学校や病院により異なります。あるいは自分が決めた期日があれば、その期日に評価する必要があります。
患者さんが、立案した看護計画の目標を達成しているかどうか、達成していれば看護計画は終了となります。
しかし、達成していなければ看護計画の継続や、患者さんの状態が看護計画に合致していない場合もあるので、その場合は看護計画の修正が必要となります。
看護計画の評価でのポイントは、患者さんの状態とニーズを把握することです。看護計画の立案から介入、実施まで相当の時間が過ぎています。
急性期では患者さんの状態は日に日に変わるため看護計画が後追い状態になることがよくあります。
また、手術前後において手術前では不安な思いがあったけれども、手術後では疼痛の訴えが中心となるようなケースもよくあります。
患者さんの求めるニーズに対応して、その都度看護計画を見直して評価していく必要があります。
以上が看護過程の展開とそのポイントの説明でした。少しでもこの記事が看護過程の展開に役立てば嬉しく思います。
まとめ
看護過程の展開は、患者さんのニーズをタイムリーに把握し、そのニーズを充足させるための計画を立てる一連のプロセスです。
看護過程におけるポイントは、患者さんの「今」から「先」を見通し早め早めに介入していくことです。
そのためには、看護師のケアの均一化や多くのスタッフの意見を取り入れ、看護計画に反映していくことが大切です。
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