アセスメントとは、看護過程を行っていく中で重要なプロセスです。
対象者から見た主観的情報と医療者側から見た客観的情報を
解釈して、統合しながら患者を取り巻く看護上の問題点を分析していきます。記録としては「SOAP」で書く施設も多いと思います。
今回は意識障害で患者さんからの話しを聞くことが困難な状況でのアセスメントのポイントを紹介したいと思います。
アセスメントを適切に行うためには情報収集が重要です。その情報収集でやりがちなことは、「異常を見つける事」ばかりに着目してしまい、その患者さんにとっての正常な状態を把握していないということです。アセスメントをするためには、その患者の正常な数値を把握することも重要なので意識して情報を取るようにしましょう。
患者概要:50代、男性
病名:外傷性くも膜下出血、左急性硬膜下血腫
生活背景:妻と離婚し息子(26歳)と二人暮らし
職業:塗装業
嗜好:たばこ60本/日、飲酒:機会飲酒
既往歴;高血圧、糖尿病があるが未治療、心筋梗塞で#11にPCI施行しアスピリン内服中だが、飲み忘れあり
発症までの経過:○月△日、仕事中に3mの梯子から落下。頭部強打。その後不穏状態となり救急搬送され当院に入院。
入院時JCS:3 GCS:E4V2M6。瞳孔不動なし、対光反射あり。四肢は従命動作は入らないが、ばたばたと動かす自動運動は見られた。
こちらからの問いかけには返答せず、息子の名前を呼ぶなどの発語は認めた。CT撮影し上記診断となり、鎮静管理のため経口挿管し呼吸器管理となった。プロポフォール、フェンタニール使用し、目標RASSは-1~0。中心静脈ラインが挿入され、RBC,FFPが投与された。血圧は降圧管理のため目標はSBP110㎜Hg以下コントロールの指示で、指示逸脱の場合はハーフニカルジピンを使用し目標血圧を維持する指示あり。喀痰が多く頻回の吸引が必要であるが、吸引時には顔を激しく降り抵抗する動作あり。経口挿管中であり、鎮静はしているが自己抜管などのリスク回避のため両上肢は安全帯使用中である。呼吸器はSIMVモード、1回換気量は500~600ml、分時換気量6~7L、換気回数は12回です。自発呼吸はしっかり感知しており吸引時以外がバッキングはなし。入院翌日、声かけでうっすらと目を開けるがすぐに入眠する。瞳孔所見に変化なく対光反射も迅速にあり。右上下肢の筋弛緩が認め下肢は外旋していため左急性硬膜下血腫による麻痺の存在が疑われた。呼吸は規則的、胸郭の上りも正常で左右差なし。呼吸音は清明だが、背側肺は減弱している。体温39.0℃台、HR110~120台、洞性頻脈、稀にPVCあり。経鼻胃管挿入されGFO流量中。入院時の採血でK2.4と低値のためメインの点滴内にアスパラK20mq混注。PVC以外の不整脈はなし。
では、この患者さんのSOAPを用いてアセスメントを行ってみたいと思います。
1、S)挿管中のため発語なし(実際の記録をするときも、S情報には「○○のため発語なし」と記載します。
O)ここでは客観的な情報を記載するため意識レベルや鎮静の状態、瞳孔所見など自分が客観的に見た情報を記載します。
※実際にはSOAPを書くときは看護問題に対して記録を書くので、記録しようとしている看護問題に対して不要なO情報は記載しません。
A)発症○日目の外傷性くも膜下出血であり、現在経口挿管、人工呼吸器管理中である。安静保持のため鎮静中であるが吸引刺激には手足をばたつかせるため呼吸器との 同調性に欠ける場合あり。吸引などの処置の場合は、プロポフォールを指示分をフラッシュし吸引を行うことで頭蓋内圧亢進の予防に繋がると思われる。また、喫煙歴 もあり喀痰が多い。頻回に吸引を行い気道浄化に努めていく必要あり。人工呼吸器使用によるVAPの可能性もあるため適切なポジショニングを構築していく。
P)発症○日目であり脳浮腫の時期にある。吸引など刺激入力の際にはバイタルサインや瞳孔所見を観察していく。喀痰の量も多く頻回の吸引が必要であるため、新規に #非効果的気道浄化を立案し早期に抜管できるようSBTトライアルの実施をおこなっていく。
2、S)挿管中のため発語なし
O)体温39.0℃台と上昇、HR110~120台の洞性頻脈、本日は輸血使用していない。昨日の輸血による副作用の発現なし。喀痰の量は変わらず多く粘稠度も高い。経鼻胃管
よりGFOが開始となっているが下痢などの症状はなし。CV刺入部固定はズレなし、汚染なし。刺入部発赤なし。
A)体温上昇あり、中枢性の熱の可能性もあるが、CV挿入や経口挿管されておりチューブ類の挿入による感染の可能性もあり。本日採血オーダーないため主治医へ報告し
行う必要あり。熱型の推移に注意して観察行う必要あり。体温上昇により代謝の亢進なども考えられ、水分出納バランスに影響を及ぼす可能性あり、指示の解熱剤使用
し観察を継続していく。経口挿管やCV挿入や外傷での入院でもあるため感染の可能性は否定でいない為、#感染リスク状態も計画として追加行う
P) 感染のリスクが高いため新規計画として、感染リスク状態を立案する。
このようにアセスメントとは、主観的情報・客観的情報をもとに、分析・統合・判断・評価を行い、自分の意見や印象なども記述しておくことが必要です。
アセスメントを書くコツとしては、「現状を判断すること」「今後についての予測」が出来ればすぐに出来るようになります。
患者背景なども踏まえてアセスメントを行えば、先輩看護師から「個別性は?」などと注意されることも少なくなるのではないでしょうか。
また、アセスメントとは、「評価・査定」という意味を持っています。大体の施設が看護診断と関連つけて行うことが多いため難しいと思う要因のようです。しかし、アセスメントは解決すべき課題を把握し、客観的に評価することで、合併症などの初期症状を発見し、症状の進行を防ぐことに繋がります。また、症状に早期に対応することが出来るようになることで、患者さんの心身の負担の軽減にも繋がるのです。
このアセスメントが、患者さんの看護計画を立案するうえで重要なポイントになるので、他のスタッフにもわかるように記録に残すことも大切です。記録にも残しケアカンファレンスなどを行えば、他のスタッフからのアセスメントを聞く事が出来たりするので自分の勉強にもなりますし、自分のプレゼン能力のアップにもなります。私はプレゼン能力、言語化していくことが苦手なので進んで自分の患者さんをケアカンファに出したりして自分の弱みの克服につなげています。
今回は意識障害で自ら言葉を発することのできない患者さんのアセスメントを行いましたが、言葉を発する事の出来ない患者さんのアセスメントは苦手とか難しいと先入観で思いがちです。しかし、言葉を発することのできない患者さんは、身体症状で訴えてきます。顔をしかめる、目で訴える、手足を使って表現する、血圧が異常に上昇する、発熱する、便秘または下痢を起こす、呼吸器をつけている人であればバッキングする、など身体症状として明らかに訴えてくるのです。その小さな変化を見逃さないこと、患者に寄り添うことがアセスメントへの第一歩です。
患者さんの身体に穴が開くほど観察をすれば必ずアセスメントできる何かを訴えています。そのサインを見逃さないようにしてください。
まとめ
アセスメントと聞くと苦手意識から出来ないと思いがちですが、患者さんの身体に出る情報を把握して、その背景や原因を探り適切な対応を考えることです。特に挿管中であったり、失語で話す事が出来ない患者さんのアセスメントは難しいと思いがちですが、患者さんの状態観察から導きだされる情報を可能な限り集めて、その情報を吟味して整理することでアセスメントすることが楽しくなります。自分の行ったアセスメントを他のスタッフや医師などと共有することで益々自分のモチベーションのアップにもつながっていくと思います。アセスメントは経験値ではないことを理解して下さい。
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