心不全は治療も根治するわけではなく、常に増悪するリスクを抱えています。患者自身が心不全をコントロールしていかなければいけません。看護師による退院指導が非常に重要ですが、パンフレットをただ患者と読み合わせるだけでは意味がありません。患者の情報をアセスメントし、現実的に実行可能な内容を指導する必要があります。
具体的にどのような情報を収集・アセスメントし、指導すればいいのかポイントをご紹介します。
1.心不全退院指導における基本的な考え方
私個人の印象ですが、現場では患者の生活背景や価値観が置き去りにされ、テンプレートを読み上げるような指導が実施されているような印象を受けます。どんなに理想的な生活指導を行っても患者自身が実行できないものは意味がありません。実際に心不全の治療や指導内容を守ることができている患者は20~60%程度と言われています。
慢性心不全の増悪による入院を繰り返してしまうことを防ぐためにも、患者の個別性にあった退院指導を行っていきたいものです。
ところで、看護学生時代、耳にタコができるほど聞かされた看護過程ですが…こんな感じですね。
≪①アセスメント→②看護診断→③計画→④実施→⑤評価→①アセスメント→(以後繰り返し)≫
心不全の退院指導を考える場合もこの思考が基本となります。
では、具体的にどのような手順で心不全の退院指導を行っていくのかを整理していきます。
2.アセスメント
ここが最も重要です。患者の個別性に合った指導を行うためには、看護師が患者の情報をアセスメントし、患者を多角的に理解する必要があります。まずアセスメントするためには情報が必要ですから、看護師が把握しておくべき情報を整理します。
①身体的側面
心不全の状態、今後起こりうるリスクを看護師が把握しておく必要があります。今回は退院指導に特に必要な情報にしぼって列挙していきます。
・初発なのか、慢性心不全の増悪なのか。
・原因疾患
(虚血性心疾患、不整脈、心筋症、弁膜症etc)
・慢性心不全増悪の場合、今回の契機となった増悪因子。
(塩分過多、飲水過多、怠薬etc)
・服薬している薬
・患者にとっての目標体重と受診目安体重
・患者の心機能に即した活動制限の有無・程度
②社会・生活的側面
・仕事をしている場合は業務内容
・家事をどの程度行っているか
・食事について
(誰が用意しているか、外食なのか自炊なのか、好き嫌いはあるか、塩分・水分の摂取量)
・体重測定の習慣について
・血圧測定の習慣について
・内服管理について
③精神的側面
・今後どのように生活していきたいと考えているか
・ストレスに感じること
・ストレス解消法や趣味
・悩みを抱えたときに誰かに相談するか、またその相手は誰か。
3.看護診断
情報収集した内容をもとにアセスメントし、今後患者に起こりうるリスクを考えていきます。服薬コンプライアンスが悪い患者であれば怠薬による心不全増悪リスクが想定できるし、食習慣が乱れている患者であれば塩分や飲水過多による心不全増悪リスクが考えられます。患者の生活習慣やその他の要因のなにが心不全を増悪させうるのかを明確にしていきます。
初発の心不全で非常にコンプライアンスがよく、生活習慣としては現状維持していくことが理想的な状態であれば、「健康管理促進準備状態」という診断もありですね。
4.計画
診断に基づき指導計画を考えていきます。何度も言うようですが、患者自身が実際の生活の中に取り入れることができる指導内容であることが重要です。
例えば、二人の心不全患者がいるとしましょう。
・92歳の塩分過多による慢性心不全を繰り返す男性A氏。高齢の妻と二人暮らしで今後はのんびり自由に生きたいと思っている。
・42歳の急性心筋梗塞による初発心不全の男性B氏。仕事が生きがいであり、妻と娘を守っていかなければと思っている。
この二人の心不全患者に同内容の心不全指導をすることは適切でしょうか。
高齢で今後は自由にのんびり生きたいと思っているA氏に厳しい塩分制限を課すことが彼にとってのメリットとなるかはよく検討しなければいけないと思います。今後も仕事をばりばり続けて家族を守っていきたいと思っているB氏には、彼自身が望む生活が最大限実現できるよう、しっかりと心不全の知識を理解してもらい、管理してもらうことが必要ではないかと思います。
このように患者の個別性にあった指導内容を考え計画していきます。
5.実施
指導内容を解説をつけながら項目化しました。患者の生活や価値観に合わせて内容を厳選して話していきます。
①心不全について
患者の理解度に合わせて心不全について理解してもらいます。
慢性心不全は増悪と緩解を繰り返しながら悪化していくこと、そのプロセスの中で急性増悪を予防していくことが重要であることを説明します。また、一般的な心不全増悪因子と、患者にとって今回何が増悪因子であったのかも指導します。
②心不全症状について
心不全症状について理解してもらい、適切なタイミングで受診行動がとれるよう指導します。コンプライアンス不良で内服管理や食事管理が困難な患者でも、最悪早期受診さえ出来れば急性増悪による緊急入院は回避できる可能性が高くなります。非常に重要な項目です。
③服薬管理について
患者の内服管理能力をアセスメントした上で、患者が実現可能な具体的な服薬管理方法を指導していきます。薬の効果や副作用まで理解してもらうことが理想的ではありますが、薬を医師の指示通り正しく内服することが最も重要です。薬剤の一包化や服薬カレンダーの利用、家族への協力依頼、訪問看護師などの社会資源の導入など患者の個別性にあった方法を考えていきます。
④体重測定
1日1回、決まった時間に体重測定を行い、記録してもらいます。目標体重と受診目安の体重を事前に医師に確認し、患者に伝えます。患者自身で体重測定ができない場合は家族に協力を依頼します。家族からの協力も得られない場合は訪問看護師などの社会資源の活用も検討していきます。心不全患者にとって体重の測定と記録は非常に重要です。
⑤仕事について
心不全の重症度によって許可できる仕事は異なります。基本的には活動能力に応じた仕事を勧めます。事前に医師と活動許容範囲について確認しておき、復帰時期などを話し合っていきます。
⑥食事・減塩
重症心不全では塩分は1日3g、軽症心不全では1日7g以下の減塩が推奨されていますが、かなり厳しめの数字になっていますね。とくに高齢者では、過度の薄味を意識するあまり食事量の低下を招き、栄養不良状態につながる可能性があります。調味料の使い分けなど、患者にあった減塩方法を検討していきます。栄養士に協力依頼することも効果的です。
⑦水分摂取について
軽症の慢性心不全では厳格な水分制限は不要です。しかし、口渇により過剰な水分摂取をしている場合もあるので注意が必要です。入院中は飲水量をモニタリングしておき、退院が近くなったら、入院中の飲水量をもとに医師と退院後の飲水量の目安量を話し合うことができるとスムーズです。
⑧アルコールについて
適切な飲酒習慣につとめ、大量飲酒は避けてもらいます。
≪健康21で定められているアルコール摂取量の基準≫
・ビール中瓶1本
・焼酎、清酒1合
・ウイスキー1杯
・ワイン1杯
⑨喫煙について
喫煙は動脈硬化の要因となり、あらゆる心疾患の危険因子となっています。
心不全患者では禁煙により死亡率や再入院が低減されることが示されています。
喫煙者には禁煙治療を勧めます。
⑩入浴について
温度は40~41℃、鎖骨下までの深さの半座位浴で、10分以内の短時間の入浴を勧めます。
6.評価
患者の反応を見て指導内容は適切だったのか、方法は妥当だったのか評価していきます。
患者の反応をもとに得た情報をさらにアセスメントし、診断・計画・実施・評価を繰り返していきます。
まとめ
心不全増悪による再入院は、退院後6か月以内で27%、1年後は35%と言われています。入院のたびに心不全指導を受けているはずであるにも関わらず、指導内容を守ることがきない患者が多いのが現状であることを示しています。理想的な生活指導をサラサラと読み上げるのは簡単ですが、患者の生活や価値観を理解し、患者自身が「これなら出来る」と思えるような生活指導が行われることが心不全の増悪を防ぐ重要な要素になりうるのだと思います。
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