急性冠症候群(ACS)における看護師の観察ポイント

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#1247 2020/10/31UP
急性冠症候群(ACS)における看護師の観察ポイント
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治療は医師だけで行えるものではありません。様々な医療従事者がチームとして働くことで効果的な治療・ケアが展開出来ます。看護師は病院の中では誰よりも患者の側にいる医療者です。看護師のアセスメントが異常の早期発見につながります。今回は急性冠症候群(ACS)における看護の観察ポイントを紹介していきたいと思います。

今回は急性冠症候群(ACS)について、わかりやすく説明していきます。

循環器というと、難しい、専門性が高いという苦手意識が先行する傾向にあります。私の後輩看護師も、心電図が読めない、難しくて関わりたくない、私そんなに頭良くないから無理です。なんて意見をよく聞きます。心電図学はとても奥の深い学問であり、専門性を高めると、それに比例して難しくなります。しかし、異常の早期発見をするポイントはとても簡単ですし、看護学校でも基礎は勉強しているので、アセスメントを難しく考える必要ありません。今回は、致死的な状況を見分ける基本的な部分について説明していきたいと思います。
私達、看護師は急性冠症候群(ACS)の患者の状態を適切に評価し、安定化させるための基本的な知識を持っていなければなりません。専門的なコースではアメリカ心臓協会(AHA)のACLSコースがあります。一日で学べるコースもありますが、基本的な部分が理解できていない人は2日間のコースでしっかりと学ぶことをお勧めします。
ACSは時間との勝負です。早期認識、早期発見、早期搬送が治療の鍵を握っています。ACSには安定狭心症・不安定狭心症・心筋梗塞があります。その違いを簡単におさらいしてみます。

狭心症とは胸の中央、またはその周囲の圧迫感または不快として現れる症状があります。それは激しい痛みではないことが多く、普段あるからちょっと様子を見てれば大丈夫と思う患者さんが多いのも特徴です。心臓の栄養血管である冠動脈が一時的にに虚血に陥っている状態です。安定狭心症に伴う不快感は、著しい運動や、活動、強い興奮時に引き起こされることが多いです。
不安定な狭心症とは、疼痛や不快感が強く、時間が長い特徴があります。軽い動作で起こったり、安静時に発症したりするリスクがある狭心症です。具体的には2か月以内に発症したり、一日に3回以上発作が起こったり、一か月以内に1日以上安静時に症状があったりします。
心筋梗塞は、冠動脈にプラークが完全に詰まって壊死した状態を言います。
原因として最も多くみられるのは、冠動脈粥腫(かんどうみゃくじゅくしゅ)の閉塞または破綻です。その状態が安定しているときは、固定した冠動脈粥腫があっても十分な血液供給が可能なのですが、ストレスがある状態では十分な血流が得られなくなります。
不安定な状態になるとACSが発症します。

ACSを示唆する症状には、
○胸の中央部で数分間継続する不快な圧迫感・膨満感・絞扼感(締め付けられるような感じ)・疼痛
〇肩、首、片腕または両腕や顎まで広がる胸部不快感
〇背中や肩甲骨の間まで広がる胸部不快感←これらの症状はプラークが直ぐ破綻する可能性があるので、より注意が必要です。
〇立ちくらみ、めまい、失神、発汗、吐き気、嘔吐などの胸部不快感
〇原因不明の突然の息切れ←胸部不快感を伴う場合と伴わない場合

があります。ここで上記以外に注意しなければならないのが、糖尿病患者・高齢者・女性です。
糖尿病患者は疼痛鈍麻や血管内の粥腫が徐々に詰まっていくため、症状になれてしまい、気が付かないことが多いので注意が必要です。
高齢者は、単純に症状に気が付きにくい場合があるので、看護師が細かくアセスメントしていく必要があります。
女性には女性ホルモンのエストロゲンがあります。これは血管を拡張させる作用があります。女性の場合、この女性ホルモンエストロゲンが50歳から約10年間で急激に減少します。つまり今まではホルモンの作用で血管が拡張していましたが、このホルモンが分泌されなくなることで症状を発症しやすくなるので注意が必要です。
上記を単純に説明すると狭心症は、不安定なプラークで血管が詰まりかけた状態。心筋梗塞はプラークで血管が完全に詰まった状態という事です。
胸部不快感には致死的となりうる疾患が他にもあるので、そこを抑えておくのも看護師としては必要になってきます。
大動脈解離・肺塞栓症・胸水およびタンポナーデによる急性心炎・自然気胸・食道破裂なども上記と同様の症状を訴えることがありますので、きちんとアセスメントをして早期発見につなげる必要があります。
ACSの症状を発見したら看護師は、患者の症状の安定化、トリアージ、迅速な報告をしなければなりません。意識しておくことは気道、呼吸、循環のモニタリングと補助を行うことです。普段より密に、バイタルを測定し、心リズムをモニターすることを心がけましょう。万が一に備えて救急カートの準備や、CPRをすることも念頭に置いておきましょう。必要に応じて除細動も考慮するため、モニター付き除細動器の場所を把握し準備しておくことも大切です。
治療に関しては医師が指示して実施しますが、何をするのかを看護師もしっておく必要があります。何が必要でどのような治療を行っていくのかを簡単に記載していきます。

・酸素:患者さんが呼吸困難である場合、低酸素血症である場合、心不全の明らかな徴候を示している場合、動脈血酸素飽和度が90%未満、または不明な場合、酸素を投与します。酸素量は非侵襲的モニタリングで測定される酸素飽和度が90%以上になるように調整します。よく、酸素は毒ですということを耳にしますが、短期間の酸素療法では酸素中毒にはなりません。
・アスピリン(アセチルサリチル酸)製剤の投与:アスピリンは血小板を阻害します。早期の阻害により冠動脈再閉塞のイベント再発を抑制することが出来ます。容量は160mg~325mgなのでしっかりと数字を覚えておく必要があります。ここで注意しなければならないのが、投与する患者にアスピリンアレルギーがないか、ここ最近の活動性消化管出血がないかです。悪心、嘔吐、活動性消化管潰瘍、その他の上部消化管の疾患がある場合にはアスピリン座薬300mgの使用を検討することを覚えておきましょう。また急性症状時なのでアスピリン製剤は飲み込むのではなく、かみ砕いた方が吸収が良いので、そのこともしっかりと把握しておきましょう。
・ニトログリセリン(三硝酸グリセリン):ニトログリセリンは虚血性胸部不快感の軽減に効果的です。末梢動脈および末梢静脈の膨張により、左心室および右心室の負荷を減らすことが出来ます。禁忌でなければ、医師の指示の基、ニトログリセリン舌下錠またはスプレーを症状が継続する間3~5分間隔で投与します。投与は合計3回まで繰り返します。これは血行動態が安定している患者のみに投与することを忘れないでください。ニトログリセリンは静脈拡張薬であるため、下壁心筋梗塞および右室梗塞では心拍出量と血圧を維持するために右室充満圧に依存するところが多い為、使用時には注意が必要です。疑われた場合は右側胸部誘導をとりましょう。右室梗塞が疑われた場合は、ニトログリセリン、その他の血管拡張薬、利尿薬も禁忌となります。低血圧(収縮期血圧が90mmHg未満)徐脈(50回/分未満)または頻脈患者、バイアグラなどの勃起不全薬を使用している患者には使用を避けましょう。
・モルヒネ:医師の指示にて、ニトログリセリンの舌下錠やスプレーに反応しない胸部不快感には投与薬の選択としてあげられることを覚えておきましょう。
チーム医療とは、医師・看護師・それ以外のコメディカルで行います。誰かが知っていればいいという事ではプロとして失格です。治療に精通することは、医師以外でも知っておく必要があります。知ることで準備できる時間を短縮出来たり、間違った治療法にも気が付くことが出来ます。
まとめ

循環器は専門的で苦手分野が先行する学問でもありますが、知ることで多くの患者さんの命を救うことも出来るやりがいのある仕事でもあります。今回は簡単に急性冠症候群(ACS)について話をしてみました。皆さんが現場で出来るアセスメントツールとして少しでも活用できればと思います。治療は多くの医療従事者がチームとして動くことで円滑に行われます。治療は医師のみが行うではなく、看護師としても参加しているという認識を持つことが大切だと私は思って仕事をしています。様々な職種の視点で医療にかかわることはとても面白いことです。自分の部署でも、その面白さを是非見つけてみてください。

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