どの都道府県にも一つ以上は存在している大学病院。
非常に専門性が高く、敷居が高いと思っている方々はたくさんいらっしゃるのではないかと思います。これから看護師になろうとしている人、大学病院への転職を考えている人、自分が大学病院に向いているのか不安な人に、働く上で必要とされることを、実際の経験を交えておしらせしようと思います。
1.はじめに
私は二つの国立系大学病院での経験があり、今現在は300床ほどの急性期病院で働いています。大学病院で働いていたと話すと、周りの同僚に「忙しくて休み取れなさそう」「給料は高そう」「大学病院って、処置とかは全部研修医がやってくれるから看護師のスキルあんまり上がらないらしいね」等々、いろいろな意見を聞きます。しかし、実際に働いたことのない人たちにとってはただにイメージに好きません。そのイメージが完全に事実とは異なるということも多々あります。そのイメージを払拭し、大学病院とはどのようなところなのか、働く上で必要とされることはどのようなことなのか等、正しい情報をお伝えすることで皆さんの背中を押すことができればと思います。
2.大学病院・大学病院看護師の特徴
①専門性はやはり高い
その大学病院によって規模は異なると思いますが、基本的には病床数・病棟数が多く、診療科が細かく分かれています。最新の医療機器に囲まれ、最新の治療を施す場所が大学病院です(医師によっては古くからの治療方法を好むということもあるので、必ずしも最新!という訳でもありませんが...)。最新の治療を求めてわざわざ県外から来られる患者様方、非常に珍しい疾患をもっている方、難治性の疾患をもっている方も大勢います。よって、そこで働く看護師は当然、日々勉強を続けていかなければならないのです。個人的に勉強するだけではどうしても追いつかないということも多々あります。なので、わからないことがあれば直接先生に聞いたり、病棟的に必要なことであれば先生に勉強会を開催して頂けるように依頼して、病棟スタッフ全員の知識の底上げを図る、ということも必要とされます。時間外の勉強会が行われる機会は多いと思います。それを面倒だと感じる場合、あまり大学病院は向いていないかもしれません。しかし、新しい知識を得ることを「おもしろい!」「楽しい!」と思える人にとってはやりがいのある場所なのではないかと思います。
②どのような看護師が働いている?
ある程度のやる気がないと続けるのが難しい場所なのではないかと思います。自分はどのような看護師になりたいのか、どのような知識を深めたいか、専門性を高めるにはどうしたらいいか、将来を見据えてしっかり考えて行動できている人は多いです。もちろん、そのような人ばかりという訳ではありません。安定しているから、新人からここにいるし慣れているから今更辞める気にもならない、という方々もいます。しかし、勉強会であったり、看護研究を積極的に行わなければならなかったり、時間外で拘束されてしまうことも多いので、やる気がないと「面倒」「なんで時間外にこんなことをしないといけないの、ただ働けるだけでいいのに」など、不満がどんどん溜まってしまうのではないでしょうか。先輩後輩関係なく、やる気に満ち溢れていて、努力を怠らない人たちの中で働くと、自然と自分もそうなっていくということもあると思います。切磋琢磨して、良い刺激を受けながら働くことができるので、もうちょっと看護師として頑張りたいと思っている方々には大学病院をおすすめします。逆にそれが負担になってしまいそうだったり、自分何もできないや...と落ち込んでしまうようなら、大学病院で働くという選択肢についてもう一度考えた方がいいかもしれません。
③看護研究の実際
「大学病院って看護研究ばっかりやってるイメージで面倒くさそう」と思っている人もいると思います。
実際、市中病院に比べるとかなり盛んだと思います。私は新人から4年間とある大学病院で働いていましたが、その4年間で行った看護研究は4件です。チーム研究ではなく、個人で研究をしたということもあります。逆に、看護研究をしたことのないという人も各病棟に数名はいるかもしれませんが、運よく研究チームメンバーに任命されなかっただけで、研究をする機会は山ほどあると考えてください。そこで、必要とされること。
それは看護研究の進め方や方法をきちんと理解できていることです。看護系大学や、大学の看護学科卒の方々は、卒業論文として看護研究を行うことが多いのではないかと思います。
もしかしたら、卒業のためにやってるだけだから今だけしのげればいいやと思っている方もいらっしゃるかもしれません。国家試験の勉強で卒論どころではないと思っている人も多いかもしれません。
実際私の周りにもそのような学生はたくさんいました。しかし今頑張っておけば、就職してからかなり役に立ちます。
良くも悪くも、私が卒論として看護研究を行っている時のゼミの先生はかなり厳しく、看護研究のイロハを叩き込まれたのですが、その時しんどい思いをしてでも頑張ってよかったと心の底から思っています。
実際に学生時代の知識が役立ち、研究がスムーズに進んだからです。大学の先生方は、研究も積極的に行っている方々ばかりですから、いわば研究のプロフェッショナルです。
就職してからは、自分の近くに看護研究の進め方を細かく教えてくれる人はいません(市中病院だと特に、病院内に研究の指導をしてくれる人はおらず、外部の先生に頼るしかないということもあるほどです)。なのでこれを読んでくださっているあなたがもし看護学生であるならば、看護研究の進め方についてしっかり勉強してください。先生にどんどん質問してください。
看護研究の方法を学ぶ機会がない、という学生さんでも大丈夫です。就職してから、看護研究ってどんなモノなんだろう?と興味をもって、基礎的なことでもいいので知識をつけることをおすすめします。
3.大学病院の給料や福利厚生面は?
給料に関しては大学病院によって差があると思いますが、国立大学系の病院であれば国家公務員に準ずる給料になるので安定性は抜群です。夜勤手当に関しては、同じ国立大学系病院でも大きな差があります。
休みはしっかり取れます。リフレッシュ休暇や夏休みといった長期休暇も、普通の市中病院に比べたら多いのではないかと思います。
休みがしっかり取れる理由の一つとして考えられることは、スタッフ数が多いのでということなのではないかと思います。大病院ということもあり、毎年4月になると大勢の新人さんが入ってきます。中途入職の数も多いです。やはりある程度意識を高くもって入職する方もたくさんいるので、そこまで看護師の入れ替わりは激しくないです。
よって病院全体で見ると、喉から手が出るほど看護師が欲しい!という状況はあまり見られません。市中病院だと4週8休、ちょっと大変なところだと4週6休なんてところもありますが、大学病院になると祝日の代休も必ずもらえます。
普段は専門性も高く、頑張らなければならないことも多いけれど、休みをしっかりとってリフレッシュできるような環境は整っているのではないかと思います。育児休暇は基本的に1年ですが、子どもが3歳になるまで病院に籍を置いたまま休むことができる、というような制度を設けていることもあります。
子育てとの両立のため、看護部や人事との調整で、無理のない範囲での時短勤務が希望できたりと、ママさんナースにとっては割と働きやすい環境なのではないかと思います。余談になりますが、時短勤務を選択すれば、委員会や係、看護研究が免除されることが多いので無理なく働くことができると思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?
大学病院とはどのようなところなのか、少しだけでもお分かり頂けたでしょうか。やっぱり大変そう...と思った方もいらっしゃると思います。
私の考える、大学病院で働く上で必要とされることは、以下の3つです。
・日々の勉強を怠らず、知識のアップデートを行うこと
・将来的にはどのような看護師になりたいのか(認定・専門・特定でもなんでも良い)をしっかり考え、切磋琢磨していくこと
・看護研究の進め方や方法についての知識を身につけること
大学病院に限らず、働く場所がどこであっても、看護師である以上は努力を怠らず、でも無理なく、楽しく、働いていけるといいですね!
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