在宅医療が注目されている昨今。
入院期間はどんどん短くなっています。高齢化が進む中、独居老人や介護を必要とする患者様でも在宅に返すという方針は変わらず、患者様自身の生活をイメージしてアセスメントをすることの重要性が高くなっています。今回は、高齢患者様の看護をするうえで大切な、内服管理についてのアセスメントのコツと事例をご紹介します。
1.残薬の状態を確認せよ!
まず確認したいのは、患者様が管理していた薬の状態です。どの薬を、いつ、どのように内服し、誰が、どのように管理しているのか。これを細かく確認できれば患者様の生活が少しイメージできるでしょう。また、いつから内服していたかを確認することで慣れている薬かそうでないかを知ることができるので、アセスメントのヒントになります。
例えば・・・
おくすり手帳にきちんとシールが貼られていて、処方された日から数えると大体飲み忘れがなく、いつ、何を飲むのか分けて保管してある患者様、中にはケースに入れてきちんと分けている患者様や、輪ゴムでまとめている患者様など管理方法は個々それぞれのアイデアが光ります。しかし、中にはおくすり手帳もなく、すべての薬が同じ袋にまとまっていて、おまけに1錠ずつシートが気ってあるので残りの数を数えることすら一苦労。確実に飲んでない薬があると分かる残薬量など管理が全くできていない患者様もいます。1日2回飲むものと3回飲むものがゴチャゴチャになっている患者様も意外と多いです。
入院患者様の情報収集をする際は、この残薬確認にも最新の注意を払ってよく観察してみてください!
2.患者様(主介護者様)の認識力を確認せよ!
薬の内容が確認できたら、患者様へ聞き取り調査をします。おくすり手帳や薬剤鑑別などで何の薬か分かっていても、実際にご本人や家族など主介護者様へ確認をしましょう。この薬はいつ、どのように飲んでいますか?何の薬と聞いていますか?などと尋ねてみると、薬に対する理解度が分かります。
例えば・・・
血圧の薬で1錠だけ毎朝飲んでいる、こっちは毎食後で、この漢方は食前に飲むなどしっかり認識をしている患者様もいれば、1日2回の処方薬を3回飲んでいたり、認識が曖昧だったりすることもあります。また、認識力が曖昧な患者様でも、家族は管理できていると信じていて「薬の管理は本人に任せています」と全く関与していない場合もあります。また、自己判断で飲まない時もあるとカミングアウトする患者様もいます。意外にも、管理できていないように見えるバラバラの薬でも、薬の名前や形状をしっかり覚えていて確実に飲めている患者様もいるので聞いてみないと分かりません。
認識力が怪しい場合や、この管理方法では必ず間違いが起きると予想される患者様には、管理方法の改善や便利グッズなどのツールの提案など、何らかの介入が必要になるので、よく聴取しましょう!また、病棟の患者相に合ったアセスメントシートを作成することも確認漏れの予防になります。
3.患者様(介護者)の身体機能を確認せよ!
残薬確認や認識を確認できたら、実際に薬を内服しているところを観察しましょう。錠剤はシートからきちんと取り出せていますか?薬袋は薬をこぼざすに開封できていますか?飲み終わった後に袋に薬が残っていませんか?衣類や床に薬が落ちていませんか?患者様の視力や手指の動きまで注意を払って観察すると、飲み残し、飲み忘れを防ぐヒントになります。
例えば・・・
内服薬は白色が多く、視覚的にとても認識しづらいので、落としていても気が付かない、こぼれていても見えないなんてことは大いにあり得ることです。シートから薬剤を取り出しにくく、取り出せても落としてしまう患者様もいます。朝食後と昼食後の薬を読み間違えて内服を間違える患者様もいます。飲み終わった後の薬包に薬が残っていることもあります。
患者様がどの程度内服できるかを観察することで、介護者の力をどこまで借りて、患者様自身にはどこまで服薬管理を任せるのかという境界線を判断することも看護師の大切な仕事です!
4.アイデア勝負!薬剤師や医師など他職種と連携せよ!
このままでは間違いが起きてしまう。飲み忘れや飲み間違いによって病状が悪化してしまう恐れがあると判断した場合、それまでの服薬管理の方法は改善しなければなりません。しかし、在宅に帰る患者様にとって出来なければ介護者に任せるというのは、必ずしも可能な選択ではありません。認識力や身体機能のアセスメントで何が出来て、何が難しいのかをしっかり確認したら、あとは看護師の力の見せ所!家に帰っても継続可能な管理方法を患者様と一緒に考え、入院中に練習することで自信につなげることができれば、在宅でも心配なく内服管理を続けることができます。そのために入院後の早い段階で情報収集とアセスメントを行うことが大切です。また、服薬管理をするうえで、看護師だけでは解決できないこともあります。薬剤師や医師など他職種と相談しより良い方法を模索する必要もあります。
例えば・・・
錠剤のシートが扱いづらいなら、薬剤師に相談して一包化するなどの対応ができないか確認することも大切です。また、お薬カレンダーやお薬ケースなどの便利なツールを使って薬を分けたり、色付きの札を用意したり、視覚的に注意を引き付ける方法を提案することも大切です。錠剤が大きく飲みにくいならば、薬剤を割ることが出来ないか、苦くて飲みにくいなら、思い切って薬を変えることはできないか医師に相談することもあるでしょう。
看護師のアイデア次第で方法は無限大です!提案・実践して難しい箇所は修正し、患者様にとって一番良い方法を模索すること、時には薬を変えられないか医師に相談できる大胆さも必要です!
5.アイデアの種はいろんなところにある!情報収集を心がけよ!
内服管理の方法は人それぞれです。提案する側の看護師も着眼点が鋭くアイデア豊富な方と、そうでない方もいるでしょう。日ごろから、実践した内服管理の方法を共有して実例を集めておくことで管理方法のアイデアを増やすことができ、患者様に合った内服管理を実現することができます。また、昨今は100円均一やホームセンター、ネット通販などで内服管理についての便利グッズが販売されることもあります。お買い物のついでにチェックしてみると新しい情報を仕入れることができるかもしれません。他にも、医師や薬剤師をはじめ患者様に係る他職種間で意見交換をすると意外な一面を発見できることもあります。また、配置移動も多い仕事なので、誰が来ても同じようにアセスメントができるよう、病棟の患者相に合ったアセスメントシートを作成し、日々修正しておくことも大切です。
例えば・・・
実際に提案した管理方法を写真に残しておくと資料として活用できるのでオススメです。便利グッズは、お薬カレンダーやお薬ケースのほかに、お薬アラームなど聴覚に訴える方法もあります。また、薬剤師や医師は薬の知識が多いので代替薬品を提案してくれることがあります。他にも作業療法士や介護士など職種が違うと患者様の見方も変わるので、内服管理のヒントを持っていることも多いです。実際に作業療法士からもらったアドバイスは、シートから薬を取り出せるけど手指のこわばりがあり薬をつまむことは難しので、小皿で受けてはどうかというもので、実践して成功した例がありました。
まとめ
内服管理は入院したから看護師が管理するのではなく、入院を機に患者様や介護者様の負担が軽減できる方法を提案・実践することが目標です。何もかも取り上げてしまうことは患者様の自尊感情の低下につながりかねません。看護をするうえでその判断はとても難しく感じていますが、すべては患者様のためです。病状や清潔行為などアセスメントすることは他にもたくさんありますが、内服管理についてもしっかりアセスメントしていきましょう。
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