看護師なら誰しもぶつかる壁の一つが、アセスメントです。「患者像が見えない。」「文章が長すぎる。」など簡潔にかつ誰が見ても患者像が読み取れるように書かなければなりません。今回は、だれもがぶつかるアセスメントの難しさを解消していくための書き方のポイントを紹介したいと思います。
◎アセスメントとは
アセスメントとは、患者の主観的情報に加えて医療者が観察した客観的情報を組み入れ患者の問題点、それを引き起こしている原因、今後の方向性を考えていく必要があります。
主観的情報については、患者自身が発する表現がすべて含まれます。私が今まで実習生を指導している中で「患者が言葉を話さない場合は何を入れたらいいんでしょうか?」とよく質問を受けました。
前述したように主観的情報は患者の表現することすべてです。つまりは、患者の表情「目を閉じた、口を開けた、舌を出した。」などがすべて該当します。
しかしここで注意しなければならないのは客観的な解釈を入れてはいけない事です。実例を挙げると、ある男性が看護学生が訪室した際に大きな声を上げて「水をくれ」と訴えました。
学生はその日のアセスメントに「訪室すると水を飲みたいという思いから怒り始めた。」と記載しました。怒ったというのは学生の判断であり、解釈になってしまっています。怒ったという解釈は主観的情報に加え客観的情報から判断して導きだす必要があります。
客観的情報については、医療者が観察したものが該当します。例えば自分が患者を観察した際に見た傷の大きさ、排便の性状、量、医者から患者への説明なども含まれます。よく間違えが起こりやすいのは多職種から患者への説明を主観的情報か客観的情報かどちらにするべきかわからないという人が多いです。
あくまでも判断のポイントになるのは、患者が直接表現しているのか、していないのかで判断していきます。医者からの説明自体は患者は言葉を発していません。説明を受けて患者が何か反応を示したり、言葉を口にした際にはそれらは主観的情報として捉える事ができます。
そして最後に重要なのが方向性の決定です。主観的情報、客観的情報から解釈をし現在の状態がどのようなものなのかを考えそれに対して看護としての方向性を決定していきます。ここで重要なことは、前述した客観的情報、主観的情報にすべて解釈が伴っている事です。アセスメントを初めてする人や学生にはよく見られますが、情報の記載はあるが解釈と方向性が伴っていないことがあります。ここで実例をあげます。
「97歳男性 COPD末期でSpO2:80%で喘鳴強く、チアノーゼ著明、酸素0.5L、呼吸苦の訴え強く努力呼吸あり。COPDは60歳の時に診断を受けSPo2は90%キープの指示あり」と情報は少ないですがこれからどのようにアセスメントをしますか。
ある学生は「COPDがありチアノーゼ、呼吸苦、喘鳴強い。酸素量が足りていないため酸素増量を検討する必要あり。」このアセスメントはどうでしょうか。根拠に欠けていると感じると思います。少し情報を整理してみると「97歳男性COPD末期で、本人より呼吸苦の訴えあり酸素0.5LでSpO2:80%、チアノーゼ著明で努力呼吸。」とまとめると酸素量が不足していると判断が根拠と結び付けて行えると思います。
そして「上記の状態を踏まえて、0.5Lの酸素では不足しているため酸素の増量、呼吸が安楽にできる体位にする必要あり。」と加えると解釈から今後の方向性を導くことができます。学生などの多くは、情報の解釈で止まりその先の看護の方向性が見えなくなっています。自分がアセスメントを書き上げた際には「なんでこの看護の方向性が必要なのか?」と問い直すと自分の解釈を振り返る機会になると思います。
◎アセスメントの応用
ここまで記載したのは本当の基本的な事項です。実際の病院ではここまでできれば業務上問題はありませんが、私はこれにプラスαで考えるようにしています。
それは患者の過去、現在、未来にまで焦点を当てる事です。前述した例では、「過去67年間もの間COPDと付き合って来た経過があります。そして現在になり呼吸苦が出現してきたことを考えると加齢と共に肺の機能が低下して病状が悪化している。将来は呼吸苦が進行する可能性がありまた、退院する場合は在宅酸素療法では対応できない可能性あり療養先の検討が必要となる。」が3側面を踏まえたアセスメントになります。
こうしていくと看護をする立場の人間も看護の方向性だけではなく、今後の退院先の検討にもつながると思います。
現代では在宅療での生活が基本となっているためアセスメントの段階から退院を意識した行動をする必要があります。
私は今現在、急性期病棟で勤務していますが課題としては残院日数の短縮です。
現在はDPC包括ケアにより疾病名で入院日数などが決まっておりそれを超えると病院の収益に影響を与えてしまいます。
治療は医師の仕事ですが、退院の為の介護サービス利用の検討や家族、地域との懸け橋は看護師が中心となって行っていかなければなりません。
看護師は入院した日から退院支援が始まります。現在の状況からアセスメントし、今後患者がどのように退院へ運んでいくのか。
自宅への退院の為には必要なサービスはないか、家族の支援はどこまで可能か、自宅での服薬管理は主に誰が行っているのかなどを入院時にすべて情報収集する必要があります。
しかも病院では1日に何件も入院が入ってくるため短時間で必要となる情報を効率よく収集しなければなりません。
私は在宅支援が必要な高齢者の入院(骨折、廃用症候群、胃瘻造設)が入ってきた際には、家族構成はもちろんですが経済状況、家族全員の仕事と帰宅時間、部屋の見取り図など詳細なまでに情報を収集する事を心がけています。
アセスメントは人によって様々な捉え方をしますが何より大事なことは、そのアセスメントをだれが読んでも患者の全体像(生活、社会、心理)が把握できるようにしなければならないと私は考えています。
とは言っても高齢社会となり入院してくる人の基本年齢も90歳を超えるためその人を入院当日だけで把握するのは非常に難しいのも現実です。
そこで重要になるのが多職種連携です。
地域サービスなどを利用している高齢者が多いので、入院時に必ず入院したことを関係各所に連絡し情報を集めます。
病院によっては地域連携室などといった外部のサービスとのやり取りを担ってくれる部署もありますのでそこの担当者を通じてやり取りをしていくことも大切なことです。情報が集まったらアセスメントにそれらを加えて再度アセスメントを修正し直します。そして何よりもアセスメント時に大切なのは、患者本人の意思なのです。私はアセスメントを記載する時には必ず本人の思いを聞き取り家族の意向も聞き取ります。
なぜなら本人の思いがあっても最終的に家族がお世話をするキーパーソンなので家族の意思が優先されるからです。両者の意思が相反する場合には折り合いがつくところで調整するのも看護師の役割となります。必要な時には家族と患者本人で話をする場所を作り、意思決定支援をすることが看護師の役割としても挙げられます。
まとめ
看護師が行うアセスメント一つで患者の退院日を左右し、その後の人生にまで大きくかかわることがあります。責任重大なアセスメントだからこそ看護師は情報を精査し、必要な情報を関係各所とやり取りする必要があります。そして何よりアセスメントを左右するのは情報量もそうですが、看護師の知識です。日ごろから多くのことに目を向けて知識を集めておくことが最終的にはいいアセスメントをするのに非常に重要となってきます。
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