「学校で学び、実習で実践してきたはずなのに、アセスメントってどうするんだったっけ?」と悩んだり、自分で一生懸命アセスメントしたはずなのに、先輩に「肝心な事に気づけていない」と注意をされた事はありませんか?
アセスメントを考える上で重要なポイントをおさえ、患者の状態を正確にとらえていけるお力になれればと思います。
新人看護師をはじめとして、専門領域を変えられる方々も、時にアセスメントにつまずくことがあるのではないでしょうか。
看護教育機関では、身体的、心理的、社会的側面から患者をみる、アセスメントする事が大切だと学びます。
しかし、いざ現場にくると、患者の訴えや症状、様々なデータ、医師の治療方針、家族などの情報が一斉に、自分の周りに飛び込んで来ます。
新人看護師は、それをどのように整理してどのように行動したら良いか、分からなくなってしまう事が多いです。
ここで最も重要な事は、「この患者に今1番大事な事は何なのか」に着目する事が出来るかという事です。
現場でよく耳にする「優先順位」のことですね。
筆者が新人教育、既卒教育に従事した時の体験談も含めてアセスメントを考える上で重要な事を述べていきたいと思います。
1.アセスメントとは何か?
カルテ記載時にSOAP形式をとられている病院も多いのではないでしょうか。
アセスメントとは、SOAPのなかの「A」にあたるプロセスのこと。
主観的な情報(患者の発言・訴え)と、客観的な情報(バイタルサイン、観察項目、血液・画像データ、医療者からみた患者の行動など)を統合し、現在の問題点・介入方法を分析する事です。
2.飛び交う情報をどのように整理していけばよいか
筆者も新人の頃に、先輩に指導してもらった事は今でも忘れませんが、一番優先されるべきは、やはり「命」です。
なので、呼吸、循環、脳血管、神経などの命と直結する所に何か異常が生じてないかを、初めにアセスメントすることは非常に大切です。
ここで事例として、慢性期領域から超急性期領域へ異動して来られた方への指導時のエピソードを紹介します。
救急車で運ばれ、原因不明の心機能の高度低下を認め精査中の患者がいました。ご高齢でしたのでベッド上では、ご本人も何が起きているのか分からず、酸素吸入はしておりましたが、安静時は自覚症状もあまりなく、外見上は苦しそうな様子も伺えませんでした。精査中でもあり、医師もβ遮断薬の使用開始の判断を悩まれていました。
慢性期から超急性期領域に異動されてきた方が、この患者を担当したのですが、「この日の目標は、車椅子に移乗する時間を長くし、離床を進めていく事です」とフォローについていた私に報告をされました。
そうアセスメントされた理由を問うと、「検査の時に一瞬でも患者さんが車椅子に座れた事が嬉しかったとおっしゃったからです」と返答されました。
確かに患者の訴えを重視する事も大切ですが、「安全」が成り立った上で安楽を考えなければなりません。
その日は、精査中という事を踏まえながら、心機能がどの程度低下しているのかを検査結果から随時情報を収集していき、ケアなどの関わりの中でバイタルサインの変化や、症状を把握し、増悪の兆候がないか一緒にアセスメントを行いながら、心臓への二重負荷につながらないケアの組み立てをしていただきました。
この方は慢性期領域では、教育係や実習指導もされていた方なのですが、専門領域が変わるだけで着目ポイントやアセスメントをしていく速さも変化するので、とても苦労しておられました。
患者が今、超急性期、急性期、回復期、慢性期、終末期のどの位置にいるのか、状況は目まぐるしく変わっていき、時には自分のアセスメントが追いつかない事もありますが、
生命に直結する事が起こっていないかをまずはアセスメントしてみましょう。
そこから、それに付随した患者・家族の不安や訴えなどの心理的な側面や、急性期を脱して自宅に帰る準備をするための社会的な側面など、どんどん患者を全人的にみていけるようになるはずです。
3.身体的側面に対するアセスメントを深めるためには?
患者の心理面については、先輩看護師よりも新人看護師の方が、よく情報収集をしており、寄り添おうとされる姿勢も、逆に見習わなくてはいけないなと思う部分が多いのですが、身体的側面に関してのアセスメントに関しては、指導する立場として「違うところに気づいて欲しいな」と思うところが多いのが現状です。
それはきっと、疾患や治療方法、術式、合併症、副作用に対する知識が不足しているところが大きいと思います。
そのため、はじめは大変だと思いますが、勤務が終わり、帰宅後も机上での勉強、知識を深める行動は必要になってくると思います。
それをノートにまとめ、患者の状態と照らし合わせて、参考書と同じような治療経過を辿れているのか、思うように効果が表れず治療が進んでいない状態なのかなど、患者がどの時期にいるのかを考えていくことで、介入方法や患者の思いが見えてくることがあります。
4.患者の治療領域によっても優先順位は変わる
またアセスメントの優先順位も領域によって変わります。
終末期においては、痛みや苦痛症状を緩和する事や、安楽、患者の望み、訴えをなんとか実現できないものかを優先する事も重要になってきます。
患者の疾患、術式、合併症を勉強するのはもちろんの事、患者が今どの時期にいるのかを考えましょう。
5.記録へはアセスメントをどう書いたらいい?
「もっとも重要な事項」を優先して書いていきます。
先ほど述べてきました、生命に直結するような情報があった場合は、それに対するアセスメントを先に書きます。
「●●ドレーンからの排液増加あり、性状も新鮮血へ変化しコアグラ認める。心拍数上昇、血圧低値、Aライン採血値よりHb(ヘモグロビン)、Ht(ヘマトクリット)などの貧血所見の増悪も認め、後出血の疑いあり。至急主治医へ報告する。」という記録と、
「挿管チューブまき直し時に、右口角に発赤あり。増悪ないよう保護材使用し、観察していく。」という記録では、どちらが緊急性や優先順位が高いでしょうか。
どちらも記録としては必要ですが、記録を書く上でも優先順位を考えましょう!
6.最後は自己満足なアセスメントになっていないかを確認しよう!
アセスメントは共有することも大事!
そして、最後に看護師本位のアセスメントになっていないか、医師の治療方針や患者の思いに沿っているかなどを、他の看護師とアセスメントを共有しましょう。
それが、現場でいう「報告・連絡・相談」や「カンファレンスの開催」です。
自分が間違った介入をしていないかを確認したり、もっと良い方法や選択肢を相談し、他の看護師から提案してもらえたり、自分の引き出しを大きくしていく事が出来ます。
自分の引き出しが増えることは、患者により良い看護が提供していく事につながりますよね。
そして、それを実践し、「患者の反応」を確認して、良かったのか、患者には違う方法が良かったのかを再びアセスメントし、評価していく。
アセスメントをしていく中で、追加で集めた方が良い情報が浮かび上がってきたら、それを収集し「O:客観的情報」に加えて再度アセスメントをする…。
「情報収集」「アセスメント」「評価」は決して一方通行ではなく、繰り返していく事で、良い介入ができてくるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
大切なことは、アセスメントの優先順位を考える事と、自分のアセスメントが一方的でないか、患者の反応や、他の看護師と共有して確認していく事です。
緊急性のある事を見逃し、医師への相談・報告が遅れる事で、患者の生命の危機に直結しないよう、最初は大変だと思いますが、疾患や術式、合併症への知識を深めていきましょう。
上記で述べさせていただいた思考を繰り返していけば、先輩看護師や医師への報告や相談も適切に、スムーズに行えるようになってくるはずです。
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