抗がん剤副作用である、吐き気や倦怠感、口内炎、味覚障害により食事がすすまず、必要な栄養、水分をとることが難しくなることがあります。その際に患者さんの全体的なアセスメントを行い、臨床にて実際に行った看護を記入していきます。
3年目外科看護師、担当看護師をしていた患者さんの入院から退院に向けてアセスメント、看護をした内容になっています。
大腸癌 ステージⅣ FOLFOX療法 1クール目
3日目 自覚症状 吐き気 倦怠感 による食欲不振
まず、70代男性、体重、点滴量、食事量などから必要な水分、栄養がとれているか算出する。
抗がん剤の副作用の吐き気や倦怠感がいつ頃でやすいのかを把握しておきます。
吐き気に対して行った看護
患者さんは、ビーフリード輸液である、末梢静脈栄養輸液製剤(PPN製剤)500mlにエリーテン5mgを1アンプルを日勤帯にて点滴していましたが、「やっぱり気持ち悪い感じがしてあんまり食べる気がおきやんわ。ほっといてほしい」と初めての抗がん剤治療であり、心を閉ざしている状態でした。
まず、患者さんとの信頼関係を築いていくために、コミュニケーションをおこないました。目線を合わせ、患者さんの言葉をしっかりと傾聴し、しんどい思いも共感しました。そうすることで患者さんが元々農家をされていたこと、野球が好きでよくテレビを見ているということや、昔からあまりしんどいことを口に出さず我慢してしまうという性格ということを知りました。担当看護師であることを伝え、気軽に相談していただくことを伝えると、笑顔で「よろしくお願いします。」という発言がありました。
そして、食べれるものを無理せず少しずつでも摂取していただくために、嗜好する食べ物、元々どのような食生活を行っていたか、などを情報収集しました。
その後栄養士と情報共有、カンファレンスを行い、連携しました。普通食だったので、ご飯からお粥への食事形態の変更、朝はパンがいいとのことだったのでパンへの変更などを行いました。
医師にも報告し、持ち込み食可能の指示を頂いたり、栄養剤のエネーボなど相談しました。
患者さんは冷たいフルーツやアイスが好きで家族に持ち込み食として持ってきてもらい、無理することなく、食べることができました。
しかし、なかなかそのほかの食事の摂取量が増えず、医師が処方したエネーボも3割程度の摂取でした。そのため、再度アセスメントを行い、栄養剤のエネーボを冷やし、シャーベット状にして提供すると、「美味しくてシャリシャリして食べやすい、こんなに冷やすだけで変わるんやね」と笑顔で全量摂取していただきました。
倦怠感に対して行った看護
患者さんは、倦怠感があり、表情が暗く、ベットにて臥床しておられる状態でした。入浴も拒否をされました。バイタルサインには変動はなく、正常値だったので、安楽な援助につなげるためにアセスメントし、足浴か洗髪の部分清拭の提案を行いました。そうすると、「足湯ならしてもらおうかな、足が冷えて夜もあんまり眠れないねん」との発言がありました。
元々農業をされていたため、足浴の準備の際に森林の入浴剤を使用するか相談すると、「落ち着くからしてほしい」とのことで実施しました。
足浴の際に、マッサージも実施しました。そうすると、表情が和らぎ、笑顔がみられました。
また、夜寝る際に湯たんぽを持っていく提案し、「少しの間だけでいいのでおねがいしたいです。看護師さん、忙しいから言えなかったけど、足が寒くて、ずっとぐっすり寝ることもできなかったんです。睡眠不足で、しんどいのもあると思います。」との発言がありました。
その次の日に、夜勤の申し送りにて、「久しぶりにゆっくり寝れて、体が楽になりました。今日は病院の中を散歩にでも行こうかな」との発言あり、倦怠感軽減にもつながったと考えます。その日の昼食の際に、いつもどおりに、病室で食事を取ろうとされていました。外の景色がみえる食事ができるところがあったので、声をかけてみると、「昨日は、たくさん寝れたし、しんどいのも楽やから景色の見えるところでゆっくりと食べてみたい」とのことでした。昨日は3割程度だったのが、食事量も半分以上摂取され、表情穏やかにて摂取させていました。
その後患者さんより「久しぶりに景色のいいところでおかゆが食べれて、気分がいい。」との発言がありました。一つ一つの看護がつながって、患者さんの食事摂取量の増加になったと考えます。
自覚症状 口内炎による食欲不振
患者さんの口腔内を観察させていただくと、赤く、口内炎がたくさんあるのを発見しました。患者さんも、痛くて食欲がまた湧かなくなっているとのことでした。
医師に相談し、歯科受診の指示をいただき、受診しました。その後、アズノールうがいを処方して頂きました。
患者さんに一緒に実施し、口腔内の清潔を保つことで口内炎軽減することを説明しました。
患者さんからは、今までやってなかったからやってほしいとのことでした。70代であり、元々内服薬は自己管理されていました。なので今後自己管理できるように、パンフレット作成を実施しました。患者さんの個別性をアセスメントしながら、うがい液の説明を見えるような文字の大きさにしたり、好きなや野球の絵をいれたりして、モチベーションがあがるように考えました。そのパンフレットを用いて説明すると、患者さんは、「これ私が好きな野球の絵やね、自分専用のパンフレットは嬉しいです、がんばってみようかな」と意欲的になった言葉がありました。見ながら一緒に行うと、スムーズに実施することができ、忘れることなく行うことができました。口腔内の清潔、保湿をたもつことで口内炎が軽減でき、食欲不振の援助の看護につなげることができたと思います。
自覚症状 味覚障害
全体的に食事摂取量は半分以上摂取されていました。しかし、食事摂取量が少ない時もあったため、理由をきくと、「食欲はあるんだけれども味が感じにくく、美味しくたべれないときがあります。なんででしょうか。私だけなのかな」と不安な表情で発言がありました。抗がん剤治療後の約5?7割にある症状であることを説明しました。退院後の食生活において不安が軽減して退院できるように、看護を考えました。まず、退院指導にむけて、食事は主にキーパーソンである妻がつくっているとのことで、妻と一緒にお話をする機会を作りました。その際に、栄養士も一緒に調理方法のポイントなど説明しました。例えば、すし酢やトマトケチャップを利用して甘酸っぱい味付けにすることや、肉や魚は焼くより煮るほうがにおいが軽減することなど具体的に説明しました。妻からも質問しやすいように、コミュニケーションをとりながら行うことで「正直退院後のご飯、不安だったけど話せてスッキリしました。主人とがんばれそうです、頑張ってみますね。」と発言がありました。退院後のクオリティーオブライフ(生活の質、人生の質)を充実するためにも、家族を含めた食事に関する退院支援の看護ができたのではないかと思いました。
まとめ
抗がん剤副作用による食欲不振の看護には、まず、他職種である栄養士や歯科などとの情報共有による連携がとても大切だということです。また抗がん剤による副作用は、精神的にも、とても苦痛です。患者さんに寄り添い、嗜好や歩んできた人生など、個別性を活かしてアセスメントすることがよりよい看護につながると思いました。
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