「田舎の小さな個人病院だからアットホームで、仕事も楽だろう」なんて幻想をお持ちの看護師さん。実はそうとも限らないのです。安易に転職を決めて後悔しないよう、実際に仕事を経験した私がアドバイスしたいと思います。
もう、大きな病院であくせく働くのに疲れた、これからは田舎の小さな個人病院でのんびり働きたい。そんな風に考えて、転職を検討している皆さん。ちょっと待ってください。確かにテレビドラマでは、田舎の小さな個人病院は、アットホームで仕事も楽などというイメージが先行していますよね。しかし実際は、そうとも限らないのです。実際に田舎の個人病院に就職して、とんでもない目に遭った私が、その実情をお話ししましょう。
●小規模な個人病院の恐ろしさ その①
看護学校で習ったことが、当然のように「間違い」だと指摘される
小さな個人病院だと、院長先生を含めスタッフ全員が開業してから、ずっと自分たちの病院の中でだけ、医療行為を行っているケースが少なくありません。
中には30年以上も、同じメンバーで仕事し続けていることもあるのです。
しかも、勉強会などに積極的に参加しないケースが多いため、下手をすると、その知識は30年前のままで更新されずに継続されています。
恐ろしい事ですが、例えば、滅菌された摂子を1週間、再滅菌せずに使用し続けるなど・・・(30年前にもこんなことは許されませんでしたが・・・・(笑))
しかも、それを「おかしいのでは?」などと新人が主張すると、「生意気だ」「うちのやり方はこうなんだから」などと言われ、逆に新人が間違っている、指導に従わないなどと叱られたりするのです。もちろん、看護学校ではこのように教えてもらったなどという言葉は何の説得力も持ちませんし、エビデンスなどという言葉自体通用しません。
知識と技術のある看護師ほど、この時点で自分の目指す看護の方向性を見失ってしまい、やっていけなくなります。やる気のある看護師さんで「大きな病院から、小規模な病院へ転職して、じっくりと患者さんに向き合おう」などという前向きな理由で転職する人は要注意です。
●小規模な個人病院の恐ろしさ その②
いじめやパワハラの温床だが、どこにも救いの手はない
小さな個人病院では、スタッフの数が限られています。残念ながら、いじめやパワハラが多い病院も少なくありません。まあ、これは大病院でも同じなんですけどね。
問題は救いの手が無いことです。大病院のように上司や組織が、救いの手を差し伸べてくれることはまずありません。せいぜい院長先生が、全員の前で「○○さんが、いじめられているみたいだけど、まあ、そんなことせずに仲良くやってよ」などと、余計な発言をして、火に油を注ぐくらいが関の山です。院長先生自身、イジメやパワハラに対する対応策への知識と認識がないため、こんなお粗末な対応しかできないのです。
転職をするなら、とにかく、できるだけ人間関係のよい職場を選ぶこと。事前に察知することはなかなか難しいですが、病院を訪れた際、スタッフにおびえているような気配があれば要注意かもしれませんね。
●小規模な個人病院の恐ろしさ その③
「なんやそれ?」と思わず突っ込んでしまう規則がたくさんある
人間の慣れというのは恐ろしいものです。どう考えても、それは看護師の仕事ではないだろうという仕事が、特定の個人病院では当たり前のように勤務の中に組み込まれていたりします。それを当たり前に受け入れている先輩看護師さんたち。その姿は、まるで飼いならされて感覚がマヒしたペットのよう。
ひどいものだと、院長の下着を手洗いで洗濯をするとか、更衣室に取り付けられた隠しカメラの存在をあえて見なかったことにするだとか、院長の飼っている犬に嫌われないよう必死に媚びるだとか・・・・書いているだけで馬鹿馬鹿しくなってきますが、本人たちは大まじめです。ここだけの話、セクハラというか、もはや犯罪に近いものさえありますよね。
しかし、働き続けていると、いつの間にか「仕方ない」という気持ちになり、ついには当たり前だと感じ始めてしまいます。恐ろしい事ですよね。
多少の奇抜な規則には目をつむるべきですが、あまりにもひどい規則のある病院なら、早急に再度、転職を検討したほうが良さそうです。
●小規模な個人病院の恐ろしさ その④
労働基準法がなんぼのもんじゃい! 「何の落ち度もないのに、いきなりクビ!」もあり得る!
「あんなに可愛がっていたスタッフなのに、いきなりクビにするなんて!」などということが個人病院では、あたりまえのように行われます。
理由は、愛犬の病院の手配が遅れたから。いや、そもそも看護師の仕事じゃありませんって(笑)
以前、私が勤めていた個人病院では3年で、15人ほどのスタッフがクビになりました。クビになったスタッフたちは、労働基準監督署に相談するなどの行動を独自に起こしたようですが、私が見る限り、病院側がなんのダメージも受けていないところを見ると、さしたる効果は無かったようです。本当に労働者の権利って守られていないのだと、つくづく感じます。
●小規模な個人病院の恐ろしさ その⑤
身内びいきがすごい!スタッフに院長の家族がいる病院は要注意!
「仕事ができない」「要領が悪い」「態度が横柄」「性格が悪い」「パワハラがひどい」など、どんなスタッフにも欠点はあります。
しかし、たとえこれらすべての欠点を兼ね備えていようと、けっしてクビにならず、許されてしまうのが院長先生の家族です。
許されるだけならまだしも、院長が、そのしりぬぐいを他のスタッフに押し付けたり、本人に直接怒ることができないストレスを別の人にぶつけたりすることもあるので、やっかいです。
また、主観的な意見をそのままストレートに院長先生に伝えるため、家族の意見が、そのままスタッフに対する評価となることが往々にしてあります。
転職先を決める際には、スタッフの中に院長の身内が存在するのか、確認しておいた方がよいでしょう。
そして、もし転職先に身内が存在してしまった場合、その取り扱いには細心の注意を払うよう肝に銘じておきましょう。
●小規模な個人病院の恐ろしさ その⑥
患者さんはほぼ身内扱い。患者さんのクセが強い!
病院自体が地域に根付いた田舎の病院である場合、必然的に患者さんも開院当初からずっと通院し続けているケースが多くなります。
そのため、男性患者さんの中には病院のスタッフを「知り合いのおねえちゃん」だと思っている人も少なくありません。
中にはあいさつ代わりにあたりまえのようにおしりを触る患者さんも。ここで「セクハラです!やめてください!」などと大きな声を挙げようものなら、生意気な新人看護師が口答えをしたと院長に言いつけられることを覚悟せねばならないでしょう。
また、患者さんごとに対応に関する細かい決まりがあるのも、このような病院の特徴です。
例えば「AさんはBさんと仲が悪いので、同時に来院した場合は配慮する」とか「Cさんはかつらなので首より上に触れてはいけない」とか。
内容はともかく、細かい決まりがあるのは大病院でも同じだと思いますが、問題は、その内容がカルテには明記されていないこと。長年働いている看護師たちにとっては、当たり前のこととなっているため、カルテに記載する必要がないのでしょうが、新人看護師にとっては、まさに混乱の極みです。
このような病院に転職した場合は「きちんとカルテに記載してください」などとむなしい主張をすること自体をきっぱりとあきらめ、自分でメモを取りましょう。
ホステスさんはお客さんの情報をメモって対応すると言いますが、それに似た心構えが必要かもしれません。
まとめ
田舎の小規模な個人病院に転職することを検討しているなら、これらの事を踏まえた上で、自分に向いているか向いていないかを十分検討した上で、結論を出しましょう。
中にはこの環境がぴったり合っているという人もいるようですので、必ずしも転職先としてダメというわけではありませんよ。
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