私は以前は病院で仕事をしており、病院の医療しか知りませんでした。その中で、退院し自宅に戻った患者さんがどのように過ごしているのかを知りたいという気持ちが強く、訪問看護に携わることにしました。
訪問看護師になって初めは、不安や戸惑うことも多かったです。私が働く訪問看護ステーションは、看護師の1日の訪問軒数は、平均5軒程度です。
初めの訪問は、慣れるまで先輩看護師と同伴で訪問し、流れを学んでいきました。時間単位で訪問が決まっているので、事前の情報収集はもちろん、きちんと計画をたてて利用者へのケアを行い、家族と話をして情報も得ながら、適切なアドバイスも行っていかなくてはなりません。2週間に1回訪問の利用者もいれば、毎日訪問の利用者もいます。限られた時間の中でアセスメントを行い、適切な看護ケアを提供していくことが必要とされます。 また、移動時間や記録時間も含めてスケジュールをこなしていくことは、慣れるまで大変でした。
訪問看護師の仕事は、主治医が作成する訪問看護指示書に基づいて、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、服薬管理などを行います。病院や施設など常にスタッフがいる状況とは違い、在宅での療養は、利用者はもちろん家族も不安なことがたくさんあると思います。利用者や家族の相談に乗ったり、アドバイスをしていくことも重要な業務です。しかし、病院での看護師とは違い、訪問時間は利用者と1対1で向き合い、利用者の生活にじっくり関わることができます。家族からの相談に応じ、看護師の視点で療養上のアドバイスをします。さらに自宅療養を継続していく上で、訪問看護師やケアマネージャー、ヘルパーなどの他事業所のスタッフさんとの連携が重要で、自宅に置いてある連絡ノートや電話で情報共有を図るなど、事業所を越えて患者さんを支えているスタッフとのコミュニケーションがとても大切です。
医師は医学的な視点で患者さんを診察していきますが、同行看護師は訪問時以外の情報を入手し、診療に役立てられるよう、患者さんの生活により近い視点で周囲と連携しながら療養環境を整備して行く必要があります。また、訪問診療スケジュールの確認や調整、物品の手配、患者さんやご家族との電話対応等があります。
訪問看護を導入する際には、医療保険、介護保険いずれの場合でも、主治医が作成する訪問看護指示書が必要です。 主治医が作成した指示書の交付を受け、訪問看護ステーションと利用者で契約を結ぶことで、はじめて訪問看護サービスが開始されます。その際に、医師からできるだけ多く利用者の情報を聞き出して、利用者の疾患や健康状態はもちろん、性格や生活歴も詳しく聞くように心がけていました。指示書の内容をもとに、訪問看護計画書を作成します。看護やリハビリの目標、問題点、解決方法、評価などをまとめ、主治医と利用者、その家族に提出します。医療知識のない人が読んでも理解できるよう、分かりやすい言葉で書くことようにしていました。
また、計画書に基づき訪問看護を実施したら、定期的に報告も必要です。訪問看護報告書を毎月1回作成し、主治医に提出します。利用者と関わる上で、医師との関わりも重要で、この報告書だけでなく、何か気になることがあれば電話で相談することも多かったです。
訪問先では自分一人ですべての対応が求められるため、責任の重さを感じることもあります。実際、訪問看護師として転職する際は、そこがとても心配でした。しかし困った場合には、電話で訪問看護ステーションや、主治医に相談することもできます。そのためにも、担当の利用者の情報も、他スタッフと密に連携をとって、共有しておくことが大切だと思います。
病院で看護師をしていると、診断名がつけられた状態で入院、治療するなかで患者と関わるため、疾患からその人を見てしまうことが多かったです。しかし訪問看護師は、自宅で過ごす利用者の生活の延長線上で関わっていきます。もちろん在宅であっても疾患の治療も重要なことであり、必要なことですが、病院で疾患から見る看護と比べ、訪問看護は利用者の性格や生活に密接に関われる分野だなと思いました。
私が関わった利用者で、病院を退院後在宅へ移行するにあたり、複数の服薬管理をしなくてはならなかったのですが、服薬カレンダーを用いてセッティングしても、当初は飲み間違えが多く、疾患が多く服薬数も飲む回数も多かったため、どうしたらいいか、どういう方法があるか、悩みました。服薬回数が多かったものを、医師へ相談し朝にまとめてもらうなど調整してもらい、利用者の自宅での生活動線を見て、飲み忘れのない場所に内服をセッティングするなど工夫をし、飲み忘れや間違いもなく内服ができるようになりました。週に数回の関わりの中で、全てを管理できるわけではありません。独居の利用者にとって、服薬を管理していくことはとても大変なことですが、重要なことであり、内服を忘れていた利用者が毎回飲んだ後のカレンダーにチェックをしてくれるよう、習慣になってくれたのもとても嬉しかったです。認知症や疾患、年齢も様々ですし、すべての人でうまく管理がいくわけではないですが、看護師の関わりとして利用者や家族から感謝された時は、とても嬉しかったです。
訪問看護をしていて、マイナスなことでいうと、私の訪問看護ステーションは、自転車で2キロ圏内を電動自転車でまわっていました。雨の日も真夏の暑い日、真冬の時期も、自転車でまわるのは大変なことです。運転に関しても常に注意を払っています。毎日約束した時間に自宅に着けるよう、日々裏道を探ったりスタッフ同士で情報交換を行ったりして、ステーションの周りの道にとても詳しくなりました。車で訪問するステーションもあります。
訪問看護師になって、病院と在宅の大きな違いは、ケアの場所が違うだけではないということを学びました。病院と在宅では、まず目的が違っていて、病院は治療するためのところで、患者にはそのための制限が強くなる一方で、在宅は利用者の希望にどこまで寄り添えるかというところが大切だと感じました。初めは拒否的な対応をしていた利用者が、次第に顔を合わせるうちに打ち解けてくれたり、そういうコミュニケーションの中でより良いケアを提供し、利用者の生活の質を上げていくことができるのだなと思いました。医療機関は、治療が中心の病気を治すところなので、患者は病院のルールを守って生活してもらいます。訪問看護は、利用者の日常生活の場へ看護師が訪問し、利用者の生活ルールに沿ってケアを行う必要があります。また、病院のような設備が整っているわけでもなく、安全面からも十分とは言えないことも多く、ケアの一つ一つに工夫や家族、利用者、他スタッフとの話し合いでやり方が決まっていきます。医療だけでなく生活のサポート、精神的ケアなど、利用者が求める生活により近づけていく支援が、訪問看護として重要なことです。看護師という立場で利用者と関わるなかで、お互いの信頼感をじっくり高めていく過程もあり、とてもやりがいのある仕事だと思います。
訪問看護で働くことを考えていても、一人で対応できるか心配だなぁと思っていました。周りの訪問看護師もみんなそう言っていました。訪問看護は一人で利用者宅でケアを行いますが、在宅医療では他職種同士の連携の考え方がとても強く感じました。主治医やケアマネジャー、ヘルパー、リハビリスタッフなど、さまざまな職種と共に、チームとして一人の利用者や家族に密接に関わり、在宅生活に支えるために協力し合っています。
まとめ
初めはみんな不安を抱えながらの訪問看護です。一人ですぐにできる人はいません。在宅での利用者や家族との関わりの中で、信頼関係、コミュニケーションを大切にし、その人らしい生活を送っていけるよう、多職種との連携をしながら看護業務を行っていくことが大切です。訪問看護ステーションの所長、先輩看護師から学び、力を合わせながら訪問看護師として成長していけるので、チャレンジしてみて下さい。
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