老年看護に興味を持ち、病院から老人保健施設へ転職しました。老人保健施設の概要や老人保健施設と病院の違い、看護師の役割について説明しています。老人保健施設の看護師の役割として実践したことを具体的に明記しています。これから老人保健施設へ転職を希望する方へ読んで頂きたいです。
私は、看護師の資格取得後、約15年の勤務経験があります。最初は、二次救急病院に就職し、結婚を機会に三次救急病院へ異動、その後老人保健施設で働きました。老年看護に興味があったので老人保健施設へ転職しましたが、病院との違いを痛感する日々でした。今後、老人保健施設に転職する方へ向けて、看護師の役割そして私が実践したことについてお話ししたいと思います。
老人保健施設とは
入居者の対象は、介護保険の要介護が1~5の方です。病状が安定していて入院治療の必要がないが、家庭への復帰を目指すために医療スタッフが生活管理を提供します。施設医の管理のもと、看護師が24時間常駐していることが多いです。作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などのサービスも併せて提供しています。在宅復帰が目的のため、入居期間は3~6ヶ月程度です。
病院と老人保健施設の違い
病院は治療を提供する場所ですが、施設は主に生活をする場所です。そのため、医療機器や薬品などが限られています。AED・12誘導心電図・EKGモニター・吸引器・ネブライザー等はあります。酸素投与が必要なときは、酸素ボンベでの対応です。院外薬局と提携しており、施設医の指示のもと、服薬管理を行っています。服薬類は充実していますが、輸液は数種類しかありません。褥瘡に使用するドレッシング剤も少なく、あるもので工夫して処置しています。
基本的に身体抑制は実施しませんが、用具が不足するときは、シーツ類を使用することもあります。施設内にある物を用いて、ケアや処置などを行っているのが現状です。
入居の対象が定められているため、入居者のほとんどが高齢者です。病院は診療科別に病棟が分かれていますが、施設は様々な疾患の方が入居します。幅広い疾患の知識が必要です。「看取り」に関しては、施設によって異なります。
私が勤務していた施設は、看取りはやらない方針だったので、病状悪化時は病院へ受診して入院してもらいました。食事のメニューの種類が豊富で、入居者も楽しみにしています。リハビリスタッフのもと、リハビリやレクリエーションは充実していて、集団もしくは個人で実施しています。
誕生日会や季節の行事、ドライブによる花見、外食、ぶどう狩り、クッキング、施設庭内の散歩、保育園児との交流など屋内外の活動もしています。七夕やクリスマスなどの行事は、昼食時に行事食が提供されます。行事によっては、看護師も付き添うこともあります。
老人保健施設の看護師の役割
入居している高齢者の健康管理と服薬管理、異常の早期発見が主な仕事です。施設には医師が常駐しています。
回診の準備や介助、医師との連携を図ります。施設医の指示のもと、服薬管理、輸液や採血の実施、検査や処置などを行っています。
施設で対応できない病状の悪化などがあった場合は、施設医に紹介状を依頼し、看護師付き添いのもと受診対応をしています。(病院母体の老人保健施設の場合は、紹介状が必要ない場合もあります)病状説明など家族へ施設医から説明するときは、看護師も同席します。入居者の家族との関わりや状態変化時の家族連絡をします。
介護士、リハビリ、栄養部門、ケアマネージャー、事務職など他職種との連携の中心的な役割をするのが看護師です。私が実践していた老人保健施設における看護師の役目について、具体的にお話ししていきます。
施設医との連携
施設医は、火曜以外の平日のみ施設内に勤務していました。その他、何かあったときは、電話にて対応していました。
午前10時から回診があるので、それまでに準備をしていました。状態に変化のある入居者を中心に報告や相談をして、指示を仰いでいました。看護師は24時間体制の中、交代で勤務しています。スタッフ間で共有できるように、医師からは具体的な指示をもらい、看護記録に明記しました。
ときには、看護師から提案をして医師から指示を出してもらいました。比較的どの時間帯でも電話連絡のつきやすい施設医でしたが、指示は回診時に仰ぐように心がけていました。施設医は、午前6~7時には出勤していました。状態の悪い入居者さんは、施設医が出勤したときに報告をしていました。
経験不足
病院勤務のときは、整形外科、神経内科、精神科で勤務経験がありませんでした。そのため、それらの疾患の入居者への対応が不安でいっぱいでした。
施設に就職したばかりの頃は「もっと様々な診療科を経験してから転職するべきだった」と後悔ばかりでした。次第に「このままではいけない」と感じるようになりました。
経験のない疾患は自分で調べつつ、同僚看護師に分からないから教えて欲しいと伝えるようにしました。精神疾患の入居者への対応の仕方は、同僚看護師の対応の仕方も見るようにしました。
パーキンソン病の方が入居することが多く、経過を見ながら疾患を覚えるようにしました。小腸ストーマを取り扱ったことが無かったので、介護士から教わりながら覚えることもありました。
経験不足だから出来ないではなく、実践しながら覚えることも必要と思いました。自分ひとりで抱え込まず、同僚看護師に相談しながら仕事を勧めました。様々な疾患の方が入居しているので、疾患の勉強になります。
優先順位の明確化
施設は満床で100床ありました。私が勤務していたときは、多いときで80人程度の入居者がいました。
勤務するスタッフが少ない日もあり、入居者全員に目を配ることが出来ないことも多々あります。
病状の安定している方が入居しているので、スタッフの少ない勤務日は、状態が悪い方を優先的にケアしていました。介護士に依頼できる業務は任せ、看護業務に専念していました。
高齢者は、食事摂取量と水分量の低下により弊害が生じるので、水分強化を介護士に依頼しました。排尿・排便状況の確認も介護士に依頼していました。食事や水分、排尿や排便状況は、表に記入していたので、介護士と看護師で状況確認をしていました。入居者も多く、数ある業務の中からポイントを絞って業務をしないと、入居者の管理はできないのが現状です。
他職種との連携
施設は医師や看護師だけでなく、介護士、リハビリ、栄養部門、ケアマネージャー、事務職などが勤務しています。
それぞれの職種に役割があり、そこから得られる情報を共有しています。介護士は、入居者と接している時間が多いので、情報共有がとても大切です。入居者の状況変化時は、業務記録に記載します。
多職種を交えて、入居者のカンファレンスを実施しています。入居者は、今後、在宅で生活する方もいれば、他の施設へ入居する方もいます。入居者のニーズに合ったケアの提供を多職種と交えて行います。
病院受診
新規入居者とその家族に対し、施設は看取りをやっていないことを最初に説明しています。そして同意書があり、状態悪化時に搬送する病院先や看取りを行う場所について記載し、署名と印鑑を依頼しています。そのため、入居者の状態が悪化して病院を受診する際に看護師は、施設で管理出来ないことや看取りを行わないことを強調して伝えています。入居者が入院できるように看護師は促しています。
高齢者の入居する施設なので、積極的な治療や延命を希望されないケースが多くみられました。癌に対する告知も本人にされないことが見られます。入居者の家族のニーズに合った受診対応が必要です。
まとめ
老人保健施設は、病院とは異なり、生活を提供する場です。看護の対象も高齢者に限られます。その環境の中で、看護師の役目と私が実践したことをお話ししました。入居者の健康管理と服薬管理、異常の早期発見するために自分が行うことを考える必要があります。老人保健施設の看護師は、限られた物品の中でのケアや他職種との連携、優先順位の明確化、受診対応、経験不足の克服などが求められると思います。
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