みなさんは新生児のバイタルサイン測定を正しく行うことができますか?最近は少子化で分娩件数が減少している影響もあり、学生時代の産科実習でも1グループに対して担当させていただけた赤ちゃんが1人だけで、ほとんど実技が出来なかったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで、新生児看護をしてきて12年目の私が普段行なっている新生児のバイタルサイン測定のコツをお伝えしたいと思います。
新生児のバイタルサイン測定は「呼吸カウントを取ろうと触れたら泣かれてしまった。」「授乳直後で正確なバイタルサインが測れない。「体温測定が難しくて測るたびに差が出る。」など、新卒の看護師さんでなく他の科を経験してきた既卒の看護師さんでも慣れるまでは難しいことが多いですよね。
そこで、ちょっとしたバイタルサインを測定するコツをお伝えできればと思います。
中には「そんなの基本中の基本でしょう。」と思われることもあるかと思いますが、ほとんど初めて新生児のバイタルサインを測定するという方を想定してお伝えしていきますね。
?測定の順番は、呼吸数?心拍数?全身観察?血圧?体温測定?ミノルタ値?体重測定
?秒針の付いている通常の時計でも測定できるが、ストップウォッチを使用するのが最もオススメ。
?母子同室中はお母さんにも協力してもらいましょう。
?うまく測れない時には粘らずに切り上げて、再度タイミングを合わせる方が結果的には効率が良い。
[呼吸数カウント]
病院にもよるかと思いますが、赤ちゃんたちの着衣は肌着のみ、もしくは肌着+ドレスというところが多いかと思います。
その場合、まずは服の上からそっと片手を胸腹部に乗せて呼吸数をカウントします。着衣の前を開けて(はだけさせて)測定をするとその動きで泣き出してしまう場合がありますし、測定の間中服をはだけた状態にしていると新生児は環境温の影響を容易に受けるのですぐに体温が下がってしまいます。特に冬場やエアコンの側、窓の近くなどにいる場合には注意してください。
測定の際には、本当に軽く触れている程度で胸腹部の動きがわかるかと思いますので、押さえつけないようにしましょう。モロー反射で呼吸数や心拍数が上昇したり、泣き出してしまうことがあります。測定時間は出来れば慣れないうちは1分くらいかけられると良いですが、なかなかおとなしく出来ない子もいますので私は15秒測定したものを4倍しています。15秒の間で正常値より明らかに呼吸数が早い時などはそのまま20秒測定したり、30秒測定したりと時間を延ばしてカウントしています。
正常新生児の呼吸数は40?50回/分です。新生児の容体悪化や急変で一番わかりやすく、変化も大きいのが呼吸数です。啼泣後時間が経っていなかったり、授乳の直後であれば当然上昇しますので、正しく評価するためにもせめて呼吸数だけはSTATE1-3の時に測れるようにタイミングを見計らいましょう。
[心拍数カウント]
呼吸数が測れたらそのまま着衣の前面をそっと開いて新生児用の聴診器を差し込み、心拍数をカウントします。この時、必ず聴診器の肌に温まる部分を軽く握るなどして温めてから児の胸に当てましょう。また新生児は生後早期のうちは心雑音が聴取されることが比較的よくあります。医師の回診時まで待てるのか、その場で報告をしなければならないのかを考える上でもどの程度の雑音の強さなのか、どの部位で聴取されるのか、どのような種類の音がするのかなどをある程度聞き分けるためにも聴診器の幕面ではなくベル面で聴診するようにしましょう。また、不整脈がないかを確認するためにも私は30秒程度は聴取するようにしていますが、途中で泣き出してしまった時に切り上げられるように、10秒や15秒の時点では何回だったかも頭に入れながら測定しています。もし、途中で不整脈が見られた場合にはどのようなリズムなのかや1分あたり何回出現するのかを確認するために2分程度は継続して聴取します。
正常新生児の心拍数の正常値は120?140回/分です。成人の心拍数に慣れているとかなり早い印象になると思います。
また、心拍数が測り終わったら、そのまま聴診器をそっと膜面に切り替えて呼吸音を聞きましょう。前面だけでなく、両脇の下あたりにも聴診器を当てて呼吸音がクリアであるか粗雑な音がしないかなどを評価しましょう。
[全身観察]
私は普段このタイミングで初めて新生児の着衣前面を完全に開いています。
その際に目視できる呼吸の異常(肋間陥没がないか、剣状突起がどうか、胸腹部の動きがどうかなど)がないかを確認し(保育器に収容していたり、呼吸数の変化などあらかじめ呼吸状態が正常から逸脱していることがわかっている場合には呼吸数をカウントするタイミングで確認しています)、そのまま腹部状態の観察(腸ぜん動音や腹部膨満の有無、触診した際の硬さなど)、皮膚症状の有無、四肢末梢の冷感(新生児はダイビング反射の影響で正常でも多少ひんやりとはしていますが)やチアノーゼがないか、大泉門の陥没や膨隆がないかを確認します。
[血圧測定]
正常新生児の場合、あまり血圧測定は行わないかもしれませんが、心雑音が聞こえた際などが必要になります。
個人的には新生児のバイタル測定の中で最も正確に測定することが難しいと感じます。マンシェットを巻いた際に動き出したり泣き出したりする子が非常に多いので、特に上肢下肢に特に指定がない場合は下肢で測定するといくらか測りやすいと思います。また、できるだけおとなしくしていてもらいたいので、哺乳瓶の乳首部分を利用したおしゃぶりを使用することもあります。
[体温測定]
新生児の体温測定は通常のように腋下で測定することもできますが、服を脱がせることで起きてしまったり、おとなしく体温計を挟んだままにしておくことが難しいので、私は頸部で測定をしています。新生児は褐色脂肪細胞が背部に集中していることもあり、横からやや後頸部の皮膚の重なる部分に体温計を差し込んで測定しています。この時、体温計を浅く差し込んでしまうと当然ですが体温が実際より低く出ますので、しっかりと差し込むようにします。体重が小さめで首回りが比較的スッキリしている場合には、軽く首をかしげるような姿勢になるよう、児の頭を軽く抑えるのも良いと思います。また、首回りは皮膚の重なっている部分に汗をかいていることも多いので、そういう時には軽く首回りをガーゼなどで拭ってから測定しましょう。
正常新生児の体温は36.5℃?37.5℃です(体温計によって多少誤差はあるかと思いますが)。エアコンの風が当たる、窓際にいる、啼泣直後、抱っこの直後、授乳の直後などは一気に36℃台前半になったり、逆に38℃を超えたりするので注意しましょう。
これらのことが終わってから、必要な時はミノルタ測定(経皮黄疸測定)や体重測定を行います。
また、バイタル測定の基本ですがなるべく測定者自身の手を温めておくというのも意識しましょう。新生児のバイタルカウントは成人と比較するとどれも早く、特に心拍数は児の状態によっては数えることが追いつけないほど早いことなどもありますので通常の時計の秒針ではなくストップウォッチを使用することをおすすめします。実際、私の周囲でも母子同室、正常新生児室、NICU、GCUなど病院や場所にかかわらず測定の際はほぼ必ずストップウォッチを使用していました。特に慣れないうちは測定中にストップウォッチから目を離しても大丈夫なように15秒や30秒で「ピピッ」と小さな音が鳴るように設定している人もよくいました。
また、測定の際に新生児室やNICUなど病室内にいる場合は良いのですが、母子同室中の場合には授乳や面会のタイミング次第でこちらが訪室した際にスムーズにバイタルサイン測定ができるとは限りません。担当する患者さんが多ければそれだけさらにタイミングを計るのが難しくなりますので、お母さんたちにも協力していただいて、授乳が終わって眠ったりおとなしくなったタイミングで知らせてもらうようにお願いしたり、児の状態によってはとりあえずこれだけ(例えば呼吸がやや早かった経過のある児なら呼吸数だけでもとか、心雑音のある児なら心音だけでもなど)は測定しなければ評価ができないので早い時間に確認したいなど、必要性をお伝えして授乳時間や面会時間の調整をしていただけるようにしていくことも大切です。
そして、測定したいタイミングや測定途中で児が泣き出してしまった場合などはそのまま粘って時間をかけるよりも一度切り上げて、またタイミングをみて再度測定する方が結果的に正確な値が測れたり、短時間で住むことが多いです。どうしても今測らなければ!と深追いせず、新生児の測らせてもらえるタイミングに合わせていくというのも新生児看護では重要なことの一つだと思います。
まとめ
新生児のバイタルサインの測定のポイントについてお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
新生児は成人の患者様とは違って、こちらが行いたいことに対して協力してもらったり、状態変化を口頭で説明してもらったりということができない分、慣れないうちはバイタルサインを測定することの難しさをを感じる場面が多くあるかと思います。
しかし、新生児は正常児であっても急に状態が変化することもあり、悪化した際のスピードも非常に早いので全身状態を正確に評価することは非常に大切です。自分では言葉で訴えられないからこそ看護師の観察能力が重要になってきますので、些細な変化を見逃すことなく看護ができるよう、役立てていただけたら嬉しいです。
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