在院日数の短縮に伴って、在宅で生活される方が増えています。
それに伴って、訪問看護師への期待も高まっているように感じます。普段訪問看護師として仕事をする中で、感じることをお伝えします。
高齢化社会を迎え、在宅生活を望む方が増えています。その中で地域生活の手助けをする、訪問看護への需要も増えていると感じます。訪問看護の仕事について、日々の仕事の中で気になる所をお伝えします。
・訪問看護師になるには
訪問看護の仕事をする方法として、最も多いのは訪問看護ステーションに就職することではないでしょうか。
一口に訪問看護ステーションといっても様々な事業所があります。自分のところで居宅介護支援や、ホーム、ヘルパー事業所を抱えるような大きな事業所、リハビリに力をいれているような事業所、24時間看護に力を入れているところ、少人数でアットホームな事業所…精神科訪問看護に特化した所もあります。
ご自分の希望する仕事ができるかどうか、事業所によく話を聞いて頂くと良いと思います。
大きな所では活気があり、比較的休みが取りやすかったり、職員同士で相談しやすい、色々な利用者様と関われる、代行や同行等指導体制がしっかりしている、といったメリットがありますが、人間関係が多様化しますので、ストレスに感じる方もいらっしゃる様です。人数が多く、パソコンや電話が思うように使えない、物品が足りない、等環境面でも大変なことがあります。利用者さま、関わる医師やケアマネジャー、その他のスタッフも多くなりますので、全員での情報共有がしにくく、個々のスタッフ毎の判断になりやすいデメリットもあります。
一方で少人数の事業所では、アットホームで、スタッフ間の信頼関係が築きやすく、直接管理者等と話し合いながら業務ができるメリットがあります。スタッフ間で情報の共有がしやすく、カンファレンス等も行いやすい、新しいことも始めやすいといったメリットがあります。しかし、どうしても自分が休みたいときに代わりの担当者を立てづらく、休みが取りづらい面があると感じます。子育てしていると子どもの急な体調不良は日常茶飯事です。
そんな時にどう対応してくれるかは、安心して働く上で重要なポイントです。また、人数が少ない分、事務所内の電話対応や連絡、掃除、洗濯等の雑用など、看護以外の仕事が多いことも見受けられます。
事業所も病院が母体の所、地域の看護師が立ち上げた所、等規模も理念も様々です。どちらも良い面、悪い面あると思いますので、ご自分の希望に沿った所であるか、よく検討されると良いと思います。
・訪問看護師になるためにやっておいた方が良いこと
基本的には一人で業務を行うことがほとんどです。リスク管理や処置は最低限知っておいた方が良いです。
利用者様の急変、転倒、感染症対策、自分が事故に遭う…等様々なトラブルが考えられます。すぐに連絡体制が取れる事業所がほとんどだと思いますが、事前に起こりうることをイメージしておくと、安心につながります。
また、仕事内容に関しては、それぞれに得意な分野があるととても重宝されますので、一度病院等に就職されてから訪問に携わる方法も良いと感じます。
特に処置が得意、小児、精神科の経験がある、認知症の方とのコミュニケーションが得意、等は武器になるのではないでしょうか。また、対象となる方はもちろん、ご家族のフォローも必要な場面が多いことから、家族関係論等学んでおくと役に立つと感じます。
実際に私も病院勤務の後、結婚出産を経て訪問の分野で復帰しました。当初は病院との違いに戸惑いも多く感じましたが、職場に同じような子育て中のスタッフが多かったことはとても救いになりました。技術面ではまだまだな所もありますが、しばらくは同行訪問等で教えてもらうことも可能でしたので、安心できました。関わる時間は全てその対象者のための時間になるので、時間の配分が立てやすいです。
看護以外のことでは、訪問ルートを組むのに地図が読めないと困ります。私は居住地で就職しましたので、頭の中にある程度地図が入っていて助かりました。道順だけでなく、公園やスーパー等の社会資源が頭に入っていると、利用者様との会話に役立つだけでなく、プランを立てるのに非常に役立ちます。
ケアマネジャーとのやりとりや、医師、地域の看護師とのやりとりも多いため、電話の応対や名刺交換のやり取り、書類作成も多いためパソコン業務等ビジネスマナーも必要です。
・訪問看護師のメリット
一人で判断しなければならない面が多く、大変なこともありますが、とてもやりがいがあると感じます。
長期間関わることで信頼関係ができますし、毎日バタバタとたくさんの患者さんを担当していた頃と比べると、深く関わることができていると感じています。訪問先にも色々なお宅があります。
一つも同じお宅はありませんし、皆さま背景も暮らしぶりも様々…仕事の内容もとても幅広いです。
一軒目では入浴介助、二件目は散歩の介助、三件目は処置中心…等々。訪問看護師の仕事をする前は、利用者様は重度の方が多いのかと思っていましたが、本当に色々な方がいらっしゃいますし、驚くほど回復され、終了される方もいらっしゃいます。散歩に行けるようになる、買い物に行ける、など日常の中で少しでも改善が見られると、とても嬉しいです。
就業面では、時間の調整がしやすく、夜勤も少ないため、子育て中のスタッフも多く在籍していると感じます。自転車で訪問する場合は自分の体力維持にも役立つメリットもあります。
・訪問看護師のデメリット
病院等と比べて物品、薬剤等圧倒的に揃っていません。
必要なものがない中で工夫しなければならない大変さがあります。
また、急変時など自分で対応しなければならない場面がありますので、勉強しておかなくてはなりません。急変時救急車を呼ぶ、往診医に連絡する、等日頃から頭に入れておかなくてはなりません。
また、看護以外の業務も場合によってはする必要があります。ケアマネジャーやご家族との連絡、調整等電話連絡、事業所内の調整、雑務等仕事内容は多岐に渡ります。
場合にもよりますが、都市部では自転車やバイクで訪問する事がほとんどなので、雨の日、風の日、雪の日…とても大変です。
時間に間に合わない時など、事故の心配もありますので、余裕のあるスケジュールを組むよう心がけています。
また、一人で訪問するため、まれにではありますが自分が暴言暴力を受ける対象となったり、虐待を疑うケースに出会ったり、事件に巻き込まれることもある様です。ゴミを溜め込むお宅、お世辞にも清潔とは言えないお宅も多いです。ペットをたくさん飼っていたり、とても狭かったり…本当に色々なお宅があります。
ご家族からクレームをいただくことも…。一人で抱え込まず、相談できる事業所が望ましいです。
・訪問看護師に必要なことは…
様々な分野での看護の経験があることはもちろんですが、コミュニケーションを取る機会が多い仕事であるため、人と関わることが好きな方が向いているのではないでしょうか。
お子さんの利用者さん、若い方、お看取りの方…様々な年齢、様々な疾患をお持ちの方を相手にしますし、深く関わる分、自分の言動に注意が必要だと感じています。
どんなに看護技術があっても、人と人との関わりができない方には心を開いてもらえません。どんなにきれいな処置をしようとも、その前に拒否されてしまうこともあります。まずは目の前におられる方と、と良い関係を築こうと話が聞ける方が訪問の分野では一番求められているように感じています。
もし訪問の経験がなく、挑戦することを迷っている方がいらしたら、ぜひ訪問看護の世界に飛び込んで頂きたいと思います。看護の技術はもちろんですが、日々の暮らしをしていることが仕事に活かせることがたくさんあると感じています。
まとめ
以上、簡単ではありますが、日々訪問看護の仕事に携わる中で感じていることを書かせて頂きました。この仕事の魅力はいかに利用者さまのスイッチを探せるか、だと思っています。どんなに技術があっても、信頼してもらえなければはじまらない。そのスイッチを探すのは簡単ではないですが、やりがいでもあります。よく知る地域の中で良くなって生活に戻られる方が増えるととても嬉しいです。外出自粛で多くの方が自宅に閉じこもりがちになっていると想定されます。安心して外出できるようになった時、果たして今まで通り外出できるだろうか?益々訪問看護への期待が高まると感じています。
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