介護サービスを提供する時、事業所は必ず個別支援計画というものを立てて関わることになります。そのおおもとになるのは、介護支援専門員もしくは計画作成担当者が立てたケアプランの内容です。
ケアプランはアセスメントがしっかりできているかどうかで、その内容や質が変化していきます。
ご利用者に適切なサービス、必要な支援を結びつけるためには、その人その人にあった個別支援計画が必要になります。
計画を作成する時には、まずその人の現在の状況、つまり本人自身と生活環境の両面で情報収集し、課題やリスクを分析する事から始まります。
これを、「アセスメント」といいます。アセスメントは、前述した通り、情報収集と分析をセットにした総称で、介護サービスでは必ずサービス提供開始時に行われます。
アセスメントに使用するシートは、事業所で独自に用意されているものもありますが、介護支援専門員実務者研修などで使用されている日本社会福祉士会方式、MDS(RAPs、CAPS、訪問看護財団方式)などが有名です。
特に標準方式はありませんが、日本社会福祉士かい方式には財産管理や権利擁護などの項目があるので、金銭的に余裕がない、認知症で判断能力があいまいな人には適しています。またMDSは基礎疾患や服薬など医療面で支援が必要な方に適しています。
アセスメントは、個別に本人と自宅で面接しておこなう聞き取り形式が基本です。身体状況の項目では、上半身、下半身の稼働状況や、ADLと言われる日常生活動作(食事、排泄、入浴などの状態)、IADLといわれる日常生活関連動作(買物、掃除、洗濯など)や認知症などの項目を確認していきます。ここで大切なのは、ご本人の判断能力と言葉にする力がどの程度あるかという事です。認知症の人の場合、少しでも自分をよく見せようと「全て出来る」と回答する人がありますが、実際は家族が見守りをしていたり、あとから手直ししたりすることもあります。ですから、調査する職員は、ご本人とは別に、日頃同居している家族や、介護している人に同席を求めて、本人からの聞き取りの後、少し場所を変えて、本人無しで調査内容の確認をすることも大切です。
基本の二つ目に自宅で面接をする、と記載しました。
これは、本人が安心して面接出来る環境に配慮する、という意味もありますが、調査をする職員が、本人の生活環境や状況を客観的に把握することが出来るというメリットがあります。
以前こんなことがありました。あるご利用者が特別養護老人ホームに入所されることが決まったので、かかりつけの先生に情報を聞きながら、このあと訪問することを話すと、「介護の人たちは、よく訪問して面接されるよね。私たちは診察室でしてるのに、なぜお家にわざわざ出向くの?」これには正直驚きましたが、この話は介護サービスは生活モデルに基づいておこなわれる、ということの良い事例といえます。もともと治療は医療モデルといわれる考え方に基づいて実施されます。病気には必ず原因があり、治療はその原因に対して行われます。診察で症状や検査結果をもとに医師は原因を推察します。その原因に対して最も効果的な方法、例えば手術や薬など治療方針を決め、原因を完治させるこの一連を医療モデルといいます。
生活モデルは原因と結果という因果関係の図式ではなく、今起こっている課題が本人に原因があるのか、取り巻く環境にあるのか情報収集し、弱っている機能を強く、強みをさらに強くすることで、課題を克服するという考え方です。
具体的な事例でいえば、例えば一人暮らしの高齢者の方が、買物に行きたいけれどもいけないという相談があったとします。その原因が両膝の関節症でうまく歩けない、という事であれば、杖を支援することで、たとえ膝が完治しなくても買い物に行けるようになります。これはつまり、本人の身体機能に原因があるので、その弱っている機能に対して、アプローチして改善した例です。もう一つ別の事例でいうと高齢者の身体機能は問題ないですが、スーパーまで行くバスが一日一本しかないので行けない、という環境側に課題があったとします。そういった場合援助者としては隣近所に買い物代行を頼む、あるいは行政に対してバスの増便を地域から声を上げて対応してもらう、という声を集めるアプローチを行うことで、環境の改善を図り、買い物が行けるようにする、という個人と環境両方に働きかけをおこないます。これが課題のために本人、環境双方にアプローチする生活モデルの考え方です。
ですから、かかりつけ医の先生が、「なぜお家にわざわざ出向くの?」という問いに対して、答えるならば、福祉や介護の生活支援をおこなうときには、本人にどの程度課題があるのかという事を見極める事が必要になりますが、同時にどんなお家で暮らしておられるのかという事も観察をします。玄関まで階段が沢山ある人や家中がゴミだらけの人、たくさんの家族に囲まれている人もいれば、近隣とも仲が悪く地域の中でも孤立している人もあります。そんな中で本人にとってリスクとなるもの、強み(ほかにないこの人の持っている力)は、診察室や面接だけでは把握することが出来ません。どのような環境の中にその人がいるのかという事も踏まえて情報収集して初めて、生活者としての課題が見えてくるのです、という回答になります。
これは介護の施設にいる人にも当てはまります。特別養護老人ホームには要介護の認定を受け、日常生活の様々な行為に介護が必要なひとがたくさん入所されています。そこでは介護職員や看護師、相談員や栄養士など様々な職種がチームになって施設サービスを提供しています。施設には施設ケアマネジャーという専門職がいて、入所者一人ひとりにアセスメントを行い、出来る事、出来ない事、支援する方針や内容を作成して、チーム員はもちろん本人や家族の同意のもとケアプランを作成しています。
最近は介護施設ではたらく人は、最初に「バイスティックの7原則」という対人援助の基本7原則を学びます。そこには秘密保持や受容といった基本的な人と関わるうえでの基本姿勢が7つ示されています。そのなかでまず最初に出てくるルールは「個別化」という原則です。
なんとなくイメージしやすいかもしれません。対応する時は個別にしましょう、家族や職員のニーズを優先せずに本人の声をしっかり聴きましょうという主旨です。
ところがある程度長く入所されている人や職員が経験を積んで対応に慣れてくると、対応方法においても、あるいはアセスメントにおいても個別化を忘れてしまいやすくなります。「要介護3という人は大体こんな感じの人だ」「施設で入所されている人は7時、12時、18時とご飯を食べるのが普通だ」と思っているかもしれません。ですが、本当にそれを本人は望んでいるのでしょうか。
施設に入られる前はどんな暮らしをしていたのでしょうか。この人にあったサービス提供を行うには、今の情報だけでは不十分です。今までどんな地域で暮らし、どんな仕事をして、どんなことが好きで嫌いだったか、そういうこともすべて踏まえて初めて、今の課題を分析することができるのです。
冒頭にも言いましたが、アセスメントは情報収集と分析です。こういった内容をきちんと把握していなければ分析も十分には出来ないという事になります。
アセスメントは専門技術の一つといわれますが、特別訓練が必要ではありません。また一度実施すればそれで終わりという事でもありません。日常生活でも私たち初めてあった人には、「この人はこんな性格だな、こんな価値観をもっているんだな」と把握しながら、その人と仲良くなったり、嫌いになったりしています。つまり、アセスメント不足という事は、その人のことを何も知らずに一方的にサービスを提供して、うまくいって当然、うまくいかないのは本人のせい、と思い込んでしまう落とし穴も持っているのです。
まとめ
アセスメントは、施設介護だけに限った話ではありません。病院や地域などで人と接する、あるいは自分の専門性を活かして人を支援する時、まず最初におこなわないといけない専門職としての義務でもあります。興味があればいろいろな教本も出ていますので、まずは自分のアセスメント力を客観的に見直し、本人にとって最適な介護、看護は何かを考える機会にしてはいかがでしょうか。
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