一分一秒、患者の状態が変化する救命センターで使えるツール

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#1105 2020/06/13UP
一分一秒、患者の状態が変化する救命センターで使えるツール
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救命センターでは、様々な患者さんが搬送されてきます。意識のある方からない方、軽症の患者さんから重症な患者さんまで、一日を通して、何人来るのかもの目途もつきません。一分一秒と患者さんの状態が変化していく中で、冷静に判断できる良いトレーニング方法とツールがあるので紹介していきたいと思います。

私は、社会人経験のある看護師です。
一般大学を出て、仕事のあり方に疑問を感じて、新規一転、看護師を目指すことを選択しました。専門学校での学びを得て、自分の夢だあった、高度救命救急センターで勤務するべく、故郷を離れ、現在は東京都大学病院高度救命救急センターで勤務をしています。

救急センター内では、ウォークイン(歩ける患者)からドクターヘリにて搬送されてくる意識不明な患者まで様々な症例が毎日、数限りなく運ばれてきます。症状も千差万別で、どの症例においても安心することは出来ません。高齢者の方の中には、救急車を呼ぶのは悪いから、頑張って歩いてきたという大動脈解離症状の方や、上腕の開放骨折患者の方もいました。かといえば、虫に刺された、何の虫かわからないので救急車を呼んだとか、お腹が痛かったけど今は大丈夫とタクシー代わりに救急車を呼んで来院する患者もいます。受け入れる側として、看護師として医療、看護を平等に扱わなければならない、患者が悪いのではない、疾病を予防・治療するのが、我々の目的であることを理念としていますが、現実は難しい気持ちのの葛藤があります。

そんな医療現場ですが、私が勤務している、高度救命救急センターでは大きく分けると、一次二次救急と三次救急で分けることが出来ます。
ウォークイン(歩ける患者)、意識がある患者と意識不明で重症化している患者の違いと認識して頂ければ良いと思います。その二点でも、落ち着いてトリアージすることが出来る共通した訓練方法があります。どの症例においても、全体を見渡す必要性や、症例を振り返って、自分のとった行動がどうであったかを振り返るフィードバックは重要になっています。私の病院においては、各勤務の終了時に、自分が関わった症例において、医療者としての関りや、動き方が適切であったかどうかを振り返る時間を作っています。そうすることで、次に同じ症例が来院したときに、迅速に動けるようになるからです。
救命救急センターで必要なのは、患者さんの状態を瞬時に、確実に見分ける方法です。その方法が、AHA(アメリカ心臓協会)のBLS(一次救命処置)とACLS(二次救命処置)のプロバイダーコースです。
聞いた印象としては、救命処置をするだけで、処置的な部分が多く、一般病棟などには関係ないというイメージを持つ方も多くいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。このツールには、どのような科でも使用することが出来る重要なポイントが多くあります。
大きなカテゴリーとして分けるのであれば【手技】【知識】【トレーニング】【チームダイナミクス】です。
この内容がなぜ、医療現場として必要なのかを、ポイントをふまえて紹介していきたいと思います。最後まで読むと、日ごろの看護を行う上で重要になると認識出来ると考えます。

【手技】ポイント①

心肺停止での確実な方法を実施出来るー心肺蘇生と言うと、「胸を押せばいい。」と思っている人が多くいると思います。一般人ならそれでいいかもしれませんが、医療従事者では絶対にダメです。エビデンスが理解できなければいけません。胸骨圧迫にと言われて、胸骨がどの部分を医学的に示しているか理解している人は意外と少ないんです。胸骨は解剖学で胸骨丙・胸骨体・剣状突起の三つの骨を合わせて胸骨と言います。その胸骨の下半分、剣状突起を避ける部分を15秒から18秒で30回になるペースで押さなければなりません。深さも5cm~6cmと規定があります。ペースがなぜ重要か?それは、冠動脈還流圧に由来します。心臓の栄養血管である冠動脈は、拡張期に血液が多く流れるという特性を持っています。心臓は、全身に血液を送り出すポンプのような機能を担っています。その為しっかりと拡張させることが重要なのです。ペースが速すぎると拡張がしっかりと行われていないため、冠動脈還流圧が上がらないとういうことにつながります。一生懸命に胸骨圧迫を行っても、ペースが速すぎると、適正な効果が得られないという事です。次に深さです。規定が6cmになったのは、深さが足りないということが言えます。急変時に胸骨圧迫を行っていても適正な深さが保てていなかった為、6cmと追加になりました。深く押すだけではなく、しっかりと拡張させることも重要です。このことを根拠を含め理解しておくことが重要で、日ごろからのトレーニングをしないと実践で行うことは出来ません。

【知識】ポイント②

トリアージするための評価を理解するー患者さんが現在どういう状況に陥っているのかを適正に評価するために一次評価・二次評価を行う必要があります。一次評価とは、ABCDEアプローチです。A:気道-会話が出来ますか?気道は開通してますか?B:呼吸-呼吸状態はどうだろう?呼吸は早くないかな?陥没呼吸はみられないかな?聴診して、肺の音に変化はないかな?C:循環-血圧はどうだろう?抹消の色はどうかな?冷たくなっていないか?手先は湿っていないかな?D:神経学的所見-瞳孔は?左右差はないかな?痛み刺激を与えてみて反応はあるかな?E:外傷-全身を観察して、打撲や出血、腫脹などはないかな?が一次評価です。これを頭に入れて行うのは、慣れが必要になってくるので、身に付くまではポケットに入れて順番に確実に評価するようにしましょう。
次に二次評価です。SAMPLE評価ともいいます。英語の頭文字をとってサンプルと日本語では読んでいます。S:自他覚症状-どんな症状がありますか?または周囲の人にどんな状態でしたか?A:アレルギー-アレルギーありますか?薬・飲食物・環境要因など。M:薬-どのような薬剤を飲んでいますか?また処方されている薬はありますか?お薬手帳はお持ちですか?P:病歴-以前何かで入院・受診したことはありますか?治療をしていますか?E:イベント-このような状況なる前にどのような事柄がありました?いつから訴えていましたか?などです。これも、迅速に情報を収集するためのツールになるので確実に使えるようになるまでは見ながら行いましょう。

【トレーニング】ポイント③

自分の病院で仮想患者と想定したトレーニングを月に一回くらいのペースで行う事です。机上の学習では、実践で動くことは困難です。日ごろからシミュレーション教育が重要になってきます。心肺停止患者の蘇生方法から入って、慣れてきたら意識のある患者やアセスメントを入れた模擬訓練などを行うことが重要です。医療とは経験です。とにかくトレーニング回数を増やすことが臨床で役にたつ近道です。病院で教育がないのであれば、上申して環境を整えることも大切ですし、プロバイダーコースを受けていれば復習することは無料で出来ますので、何度も通って、確実に自分の手技をあげることも重要です。

【チームダイナミクス】ポイント④

医療はチーム蘇生です。様々役割を分担して、一つの目標に向かって動くことはとても重要になってきます。チームダイナミクスは、救命のコアといってもいいと私は感じています。まずは役割を迅速に分担します。リーダー、胸骨圧迫(循環担当)、換気(気道管理)、薬剤係(点滴管理)、モニター・除細動係(AEDや心電図付きモニター)、記録です。それぞれの役割を分担し、自分の仕事が確実に行えるか、また、滞ることがないようなコミュニケーションスキルを用いて訓練することが重要です。
医療現場はチームワークが重要です。ピリピリした環境を作るのも大切ですが、動きを制御してしまう雰囲気は医療として良くありません。日ごろからお互いのコミュニケーションを図り、シミュレーションすることが大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?救命救急は一分一秒を争う現場です。また、重症患者は必ずしも救急車で運ばれてくるわけではありません。ウォークインで来院されている患者さんの中にも、重症患者は潜んでいるのです。救命センターで働く看護師として、トリアージから蘇生の技術をエビデンスを持って実施する重要性が認識する事、また何度もシミュレーショントレーニング行うことの重要性を認識出来たのではないでしょうか?医療はチームです。そのことを意識して、今できることから始めてみてはいかがでしょうか。

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