産業看護師に転職を検討している方へ、必要な知識や業務内容についてご紹介します。

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#1084 2020/05/23UP
産業看護師に転職を検討している方へ、必要な知識や業務内容についてご紹介します。
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産業看護師について興味を持っている方も多いかと思います。産業看護師にいつかなりたい・転職を検討しているという方へに、産業看護師の業務内容や必要な知識についてお伝えします。

皆さんは、「産業看護師」についてどのくらい実際の仕事内容についてご存じでしょうか?
私は元々都内の大学病院の病棟で6年間勤務し、その後夫の転勤・引っ越しを期に退職・転職し、現在は産業看護師の非常勤として勤めています。
正直、病棟勤務していた頃は、「産業看護師って何をしているのだろう?」「どんな知識や勉強が必要なのだろう?」と疑問に思っていました。
実際に産業看護職として転職してみると、全く病棟看護師と業務内容や必要な知識が異なっていたのです。

まず、産業看護師の仕事の内容を簡単にお伝えします。

産業看護師は、労働安全衛生法という法律に基づき、企業の健康や安全衛生の向上をはかるという役割があります。
そして、具体的には、企業の健康診断のサポート、安全衛生委員会などのサポート、ストレスチェックの案内や高ストレス者との面談、復職者や時間外労働時間が長い従業員との面談、産業医との連携などの業務を行っています。衛生委員会というものは、50名以上を超える従業員を抱える企業は必ず行わなくてはならず、さらに産業医や産業看護師、衛生管理者という職場の安全に関わる担当者などのメンバーを決めるよう法律で定められています。他にも、その議事録の保存期間や報告内容などが決められています。
また、産業看護師は、<企業様が法的に安全衛生に関わることを尊守している>というエビデンスを残すサポートも担っています。
衛生委員会では、衛生講話という、職場の安全衛生に関する内容の講話が話し合われます。
そして、その講話を行った後で議事録を残すことが決められています。毎月その衛生委員会のテーマを設定・提案します。例えば職場巡視についてというテーマやストレスチェックについての内容のテーマ、メタボリックシンドロームや過重労働などについても講話の内容となります。講話の内容を考えることも一つの仕事となっており、その内容については企業様のニーズに沿ったものを産業看護師から提案するということもあります。

ここまで、色々と業務内容を綴りましたが、一つ一つ、病棟看護師とはだいぶ業務内容が違いますよね。
従業員二年2回行う、ストレスチェックというものや、過重労働者への面談などは、これ以上その状況が進行した時に勤怠不良や心身への支障をきたさぬよう、専門職としてアセスメントして予防的介入や現状の緩和を目指します。
いずれにせよ、仕事に就くことが出来ているような方が対象となるので、病気があり病院に入院してくる・外来を受診するような方が対象者ではないです。また、ADLも自立しており、介護度ももちろん低いです。直接従業員と関わるというよりは、組織やそこに属する方々の健康サポート、というような形ともいえると思います。そういったベースがある中で、いかに産業看護職として問題がある対象者や事柄に個別的な対応ができるかも求められます。
例えば、時間外労働が毎月長い企業であれば、それに対しての介入やサポートを手厚くする、具体的には面談希望者がいないか企業に打診したり、疲労度チェックをツールを用いて行う、などです。地域の健康支援を行うわけではないので、行政で働くような保健師とは対照も業務内容も少しずつ異なってきます。
いかに潜在した問題をみつけ、従業員が健康で安全に業務を行うことができるか、といったことや、従業員の健康を守るための法律を守りながらどのように問題点を改善していくか、という視点が必要となります。

一方、病棟看護師から企業産業看護師へと転職して、一番難しいと感じたことが、企業相手なので、医療者が理想とすることをなかなか実践しにくい、という事です。
やはり健康管理についての必要性をいくら産業看護師が伝えたとしても、そこをどう受け止めるかは企業様の健康意識によって左右されますし、その温度差も企業様ごとに異なります。
「もっとこのように対応・介入できたら、よりよい健康支援ができるのに…!」と思っても、なかなか企業様の業務の中でそれを実践することが時間的にも物理的にも様々な理由で難しい事が多いです。
また、産業看護師は企業様のなかでは少数、もしくはその部署に1人という事もよくあるので、同業種と話し合うことが出来ず、孤独を感じやすいかもしれないと思います。私は何人かでサポートを行う体制なので、孤独感を感じないですし、一人で判断に迷う事は少ないですが、産業看護師の中には一人で対応をしなければならかなったり、業務量が多い際には負担を強く感じる方もいるかと思います。

では、そんな産業看護師ですが、実際にはどのような知識や勉強が必要なのか?という話をしていきます。

産業看護師に必要な知識は、ベースとしてあった方がいいと思われる考え方は、まずは「労働安全衛生法」という法律の理解です。
こちらの法律に関わる介入を最低限押さえることが出来なければ、担当する企業様の従業員の中に過労・メンタルヘルスで問題が生じた人がいた場合、「法律の指示通りに対策を講じていなかった」、と介入を行ったエビデンスがないとして、<安全配慮義務に違反した>と見なされることとなり、民事訴訟されることもあり、企業への不信感が高まることになります。ひどいケースでは、損害賠償を求められたり、報道されたり、企業側も大きな損失を負う事になります。
それを回避するために、まずは法律に基づきエビデンスを残しつつ、実際に従業員の安全衛生やメンタルヘルスに対する介入を行うことが産業看護師にとって重要な役割なのです。これを理解しているかどうかで、かなり産業看護師としての実践力が異なってくると思います。

次に、具体的にどのような勉強をすればよいか、実践に役立つかをお伝えしていきます。まずは、前述した法律の自己学習です。
こちらは理解するまで時間がかかりますし、法律となると難しくて勉強する気がなかなか起きにくい方も多いと思いますが、事例や症例を基に勉強していくと良いと思います。
インターネットで労働安全衛生法・違反・事例などと検索すると、沢山出てきます。具体的に産業看護師の介入までは記載されていませんが、「こういう症例は法律の〇という部分に違反していると判断されたのか」と理解できると思います。
某企業で時間外労働が長く、メンタルヘルスに支障をきたし、自殺をしてしまった事例などがあり、その家族が訴訟を起こして一時話題になったことがあります。その事例などから「月〇時間残業時間を超えたからこのような過労が生じ、訴訟に至ったのか」などとも分かってくると思います。

他にも、保健師の予防医学・健康増進についての考え方、メンタルヘルスに対する介入、カウンセリングの自己学習を行えると尚良いと思います。
産業看護師の書籍はまだまだ少ないので、産業医の本などから勉強したり、メンタルヘルスに関連する書籍から勉強しても良いかと思います。
メンタルヘルスも、仕事自体が原因・例えば過労などの負担の強い業務や人間関係によるものが原因なのか、鬱などの本人が罹患している疾患自体によるものなのか、プライベートが原因なのか、という事で対応も変わってきます。
かなりメンタルヘルスに関する内容は濃いので、少しずつ深めていく形でいいと思います。またカウンセリングは看護師として傾聴する力がついているかと思うので、その力を活かし・伸ばせるようにできると良いと思います。
より質を高めたいなら、カウンセリングに関する資格を取る、文献を読むなどしてもいいかと思いますが、看護師という資格があるならば、あえて資格を二重に取らなくても、個人的には何とかなると思っています。

他、法律で定めている事なので、「厚生労働省のホームページ」を読むとかなり勉強になります。他、労働基準監督署 のホームページも参考になります。
個人的には、解剖整理やフィジカルアセスメントの方が勉強していて楽しいと思えたので、法律の勉強を進める事はハードルが高いと感じていました。しかし、産業看護師として必要な考え方の基盤となる労働安全衛生法を抑えてしまえば最低限は良いので、ある意味繰り返し触れて慣れていけば理解しやすい勉強内容なのかな、と思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?産業看護師の仕事内容と必要な知識・勉強方法などについてお伝えしました。
産業看護師は一般的に希少求人扱いなので、希望するときにすぐ転職先が見つかるチャンスは少ないかもしれませんが、いつか産業看護師として働きたい・病棟以外で働きたい・転職に備えて勉強しておきたい、などといった方に少しでも役に立つ情報となれば嬉しいです。

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