就職にあたり考慮すべき点としては「福利厚生の充実度」が挙げられます。 人気国家資格とは言え、人命救助にかかる最も身近な存在である為に、肉体的及び精神的な疲労の蓄積が高い職種でもあります。 現在は常時50人以上を雇用する病院等であれば年に1回、ストレスチェックがあります。 職場としては実施義務が科せられますが、労働者としては努力義務であります。
就職にあたり福利厚生の充実度を挙げた理由としては、離職率の高い病院においては、有給休暇が取りづらいだけでなく、慶弔時の調整も困難であること、出産後保育所に落選した場合の育児休業延長の「実績がない」だけで延長を拒まれてしまうケースも散見されます。
一つずつ考察したいと思います。
まず有給休暇については、平成31年4月1日以降は年に10日以上有給休暇が付与される場合は5日の取得が義務かされていますが、この認識が徹底されていない場合もあります。
有給休暇は心身のリフレッシュを目的に労働者(看護師)に与えられた権利であります。心身を充電した状態でより良い看護を提供することがヒューマンエラーの抑止にも繋がるだけでなく、後世の教育にも繋がると思います。 次に「慶弔」は生きている限り誰しも必ずと言って良いほど訪れるものと考えます。また、予期しない場合に起こることもあります。 そのような時に全く整備されておらず、かつ、まだ有給休暇が発生していないとなれば、「欠勤」せざるを得ないこととなります。出費がかさむだけでなく、給与も減額となると(口には出せずとも)痛い結果となります。結婚は他のケースと比較して予見可能性があるとしても親族の他界等はそうとは言えません。
次に就職後の育児休業の問題について、現在の取得率は女性で約80%台と安定しているものの、男性については10%にも届いていない状況です。
産前休暇及び産後休暇は女性のみでありますが、特に男性については先進国と比較すると極めて低い数値で推移しています。 育児休業に関しては、休業期間中は看護師としてカウントすることもできず、病院によっては人員配置基準の「7対1」や「10対1」にも影響することとなり、延長することにとてもナーバスな印象を持つ病院もあります。 育児休業期間中は法的にも給与支払い義務はなく、社会保険料も看護師、病院ともに免除扱いとなり、将来受け取る年金額にも反映される為に労使Win-Winとなり得ますが、背に腹は代えられない(人手不足など)と考えられるケースが多いです。近年では求人の差別化を図るために病院内保育所を設立する病院も増えています。 しかし、住居が近隣であれば良いものの、遠方からの電車通勤看護師の場合、生後間もない赤ちゃんと満員電車に揺られて通勤する労力は想像に難しくないと考えます。 また、保育所に入れた場合でもまだ赤ちゃんゆえに熱発や他の病気に罹ることも多く、その度に(家族の協力が難しい場合)仕事を調整せざるを得ない状況となります。育児休業に関しては法律の上限では2年間まで可能となります。 しかし、2年間上限いっぱいまで利用する看護師は決して多くはありません。(基本的には保育所に入れなかった等の明確な理由が必要です)病院側も看護師確保の為に復帰できない場合は様々な施策を講じてはいるものの決定打には至らない状況です。
次にそもそもの看護師全体の人手不足の要因として、「潜在看護師」の多さが挙げられています。
これは、専門性の高さゆえに一度子育て等で現場を離れると日々変わる医療業界に対して再就職しづらいと感じることや、不規則な勤務形態である為に体調管理が難しく、現役時代と同じように勤めあげる自信がないと感じることや、看護師という職業一つとっても臨床や訪問看護等、活躍の場所は多種多様であり、疲労の蓄積が大きかった「臨床」には戻れないと感じる看護師が多いのも現状です。 よって、一つずつ考察したいと思います。まずは子育て後の復帰に関しては、病院求人等に「中途採用・再就職」の看護師を積極的に受け入れるような求人があるかを確認しておくことが肝要と考えます。これは、人手不足対策と同時に子育てを経験した「先輩看護師」を積極的に採用しようと窺わせる姿勢ともとれます。これは、育児休業に対し、同じ病棟内のスタッフの理解も得やすく、また、新卒だけでなく、中途での採用も受け入れることで、人手不足対策にも一定程度貢献し得ると考えます。
次に不規則な勤務形態ゆえの体調管理については、言うまでもなく、夜勤の疲労感が挙げられます。
夜勤については、特に三次救急の病院ともなれば、急患の対応頻度も高くなり、身体的にも精神的にも疲労困憊となり、かつ、月に4回~5回は夜勤に入ることとなります。給与面では満足度は高いもののそれに伴った疲労度は想像に難しくないと考えます。
次に臨床には戻れないと考えることについて、
前述の夜勤とも類似している部分もありますが、訪問看護、保育所勤務、看護師の活躍できる場所は、全国津々浦々に色々な形で求められています。 その中でもやはり臨床のハードワークは否定できません。経験を積み、将来的に主任、師長と明確なキャリアパスが描けている場合は疲労を感じることは少ないと感じられるものの一度目的意識を失った場合に「宙ぶらりん」の状態で勤務し続けるには困難な職種であります。 近年は医療訴訟や悪質クレーム等、患者側の権利主張も激しく、ベッドサイドで暴力を振るわれる看護師も散見されます。 この場合は当然、自分自身で自己負担分を支払い、健康保険を使うのではなく、労災保険で保護されることとなりますが、「精神的な」落ち込みによるパフォーマンスの低下も示唆されています。 看護職は人が生き続ける限りなくなることはありませんが、決して誰でも務まる職業ではありません。 また、近年ではほとんどの病院で「電子カルテ」での運用となっており、一定のPCスキルが求められます。 また、電子カルテだけでなく、2019年中には頻発した自然災害時には停電することも想定され、その場合の代替策(紙カルテでの運用等)への知見を深めておかなければなりません。 あとは、通常業務だけでなく、医療法では感染、安全に関する研修会の出席も義務付けられています。 これは診療報酬上の勤務時間にも該当するものですが、通常業務をこなしながらの個別スケジュール管理にも目を光らせておく必要があり、つい忘れていたとなった場合は、病院が損害を被ることもある為に、大切なこととなります。
最後に勤務していく上で覚えておいたほうがよいことをお伝えしたいと思います。
一つは仕事と自己学習の線引きです。 国内で勤務する看護師も当然、労働基準法の制約を受けることとなりますが、病院によっては、ここが曖昧なケースがありあす。新人で入職していきなり、異議を唱えることができる人は少ないと思いますので、プリセプターとよく話し合い、適切なワークライフバランスを心掛けて頂き、長く看護師として活躍して頂きたく思います。次は、休憩時間についてです。 労働基準法では労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間が「最低基準」です。しかし、日によっては休憩が取れないこともあります。 そのような場合はどのような運用をしているのかをプリセプターに確認しておくことが大切です。(後で時間をずらして休憩時間を設けるなど)日々のこのような疲労の蓄積がヒューマンエラーに繋がることは想像に難しくありません。そして、最後は就職の反対の退職についてです。 一番申し上げたくない項目ではありますが、大切な項目でもあります。 どうしても人間関係が合わないこともあります。そのような時でも看護師は前述したとおり、その病院だけが活躍する場ではありません。 何日前までの申し出か病院の就業規則に明記されています。また、退職金受給の為の最低勤続年数も併せて確認しましょう。 退職後は失業手当を除き、収入がなくなることが一般的です。 広い意味で「看護業界」に貢献する為にも、またあなたを必要としてくれる病院が必ずあります。
まとめ
人命を預かる医療現場では特に「報告連絡相談」が大事とは言うものの、まずは自分自身の体調管理があって初めて看護を提供し得る状態となります。通常のサラリーマンと比べても日勤、夜勤、遅番など多様な勤務形態があり、かつ、他の医療従事者との連携も看護師が主体となって調整するケースも多々あります。
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