排便困難な対象者に対する効果的なアプローチ

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#1038 2020/04/09UP
排便困難な対象者に対する効果的なアプローチ
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皆さまは、お仕事を通して、便秘傾向にある対象者に遭遇したことがあると思います。 それは病院に入院している患者さんのみならず、在宅で療養している患者さんもいれば、施設に入居している利用者さんもいるでしょう。下剤を内服してもらって、それが効果があれば良いのですが、実際にはなかなか上手くいかないものです。そのような場合における効果的なアプローチについて今回はポイントを絞っていくつか説明します。

日本消化器病学会によれば、「便秘とは、排便が数日に1回程度に減少し、不規則な排便感覚となり、便中の水分含有量が不足している状態を指す」とあります。 便秘は、高齢者に出現し易い状態です。その理由として、筋力低下に伴い運動量が次第に不足していくことや腸の動きが鈍くなるためです。便秘が進行すると、吐き気や嘔吐、痔出血、最悪の場合、腸穿孔をきたすリスクがあります。日頃から適切な排便ケアを実施することで、対象者が、快適な日常生活を過ごすことができます。

<脱水傾向になっていないか確認する>

便秘を生じ易い高齢者は、加齢に伴い口渇を感じにくくなります。 その結果、水分摂取量が減少してしまいます。 脱水になりますと、便中の水分が抜けてしまい、硬便となって結果的に便秘になってしまいます。 そこで、In-out表というものを作ることをオススメします。 1日の水分摂取量と尿量を比較していくことで、バランスを観察していくことができます。inが多ければ水分過多、outが多ければ脱水傾向と言えるでしょう。また、声のハリがなかったり、皮膚や口唇の乾燥でも、脱水傾向を察知することができます。 もし脱水が疑われるようであれば、こまめに水分補給を促したり、経管栄養をしている方であれば、主治医と相談した上で注入する水分量を増やすなどの方法をすることも方法の1つです。 但し、腎疾患をお持ちの患者さんで水分制限の指示がある方は注意が必要です。水分摂取量を増やして良いかどうか必ず事前に確認しましょう。

<下剤を指示どおりに服用しているか、適正量か確認する>

下剤を服用し忘れる患者さんも中にはいます。特に認知症の高齢者に多いと言えるでしょう。その場合、服薬チェックをする必要があります。 また、在宅で療養している患者さんが便秘傾向で、介護者が認知症をお持ちというケースもあります。その場合、介護者が下剤を服用させるわけですが、時折忘れてしまうということもあるようです。 そんな時、服薬カレンダーを活用すると効果的です。 予めスタッフ側で薬をセットしておけば、その減り具合を見て、家族である介護者が下剤を服薬させたかどうかが分かります。 一方、下剤を指示通りに服用しているが便秘傾向であるというケースもあります。その場合は患者さんや主治医、周りのスタッフに相談の上で下剤を増やすなど微調整を図ることも必要です。

<運動を促す>

運動を促すことで、腸の動きが活発になり便秘が解消されることがあります。歩行可能な対象者については、「最近、1日にどの程度運動されていますか?」と聞いてみるのもいいでしょう。 また、歩行が難しい場合、時に寝たきりの高齢者については関節可動域訓練(ROM)を行うことも効果的です。 相手の表情を観察しながら10秒ずつゆっくりと下肢の伸展・挙上、足関節の運動、上肢の運動を介助していきます。 関節可動域訓練を行うことは廃用症候群を予防することにもつながります。また複数回、仰臥位から側臥位へ体位変換することも効果的です。リハビリにもなり、ベット上で運動していることと同じなので腸の動きが活発化し、自然な便意を促すことにもなります。 さらに運動を促すことは昼夜逆転を防ぎ、対象者の良質な睡眠をサポートすることにもなります。

<温罨法及び腹部マッサージ>

これは、特にベット上で寝たきりの対象者にオススメの排泄ケアです。腹部に温罨法を実施することで、腹部の血流を促進させ、副交感神経を優位にさせるので腸の動きが活発になります。 また、対象者の表情を観察しながら、温めた手で腹部を優しくマッサージすることも効果的です。

<浣腸を実施しても、なかなか排便がみられない場合>

このような場合、もしまだ対象者に便意がある場合は、スタッフ側で援助することが効果的です。具体的には、肛門周囲を優しくマッサージします。すると、その刺激により排便が促進される場合もあります。 時に寝たきりの高齢者の場合、腹部の筋力も低下しているので、なかなか怒責がかけられません。そのようなことも考慮した上で、対象者の状態もこまめに観察しながら愛護的にサポートすることが重要です。

<背部清拭を行う>

これは、ベット上で寝たきりの対象者にオススメの排便アプローチです。これについては意外に思われるかもしれませんが、清拭により身体を温めることで、それが対象者にとって良い刺激となり排便が促進されるケースがあります。浣腸を実施した後、排便に到るまでに個人差はありますが多少時間がかかりますので、その時間を活用して温タオルで背部清拭を行うことをオススメします。

<食事内容を検討する>

患者さんの普段の食事内容を観察することも大切です。一般に、食物繊維が不足すると便秘になり易い傾向があります。便秘解消のためには特に水溶性食物繊維がオススメです。具体的に言うと、海藻類、大麦、こんにゃくなどです。これらの食材は便を柔らかくする働きがあります。但し、嚥下機能が低下している高齢者に関しては、誤嚥リスクがあり最悪の場合、肺炎に到る可能性もあるため、適宜ミキサーにして摂取し易いよう食事形態の工夫が求められます。また、善玉菌を増やし腸内環境を良くすることも便秘解消には効果的です。いつも摂取しているヨーグルトにオリゴ糖を加えたりするのも方法の1つです。

<対象者の心理的側面を考慮する>

援助を必要としている人は、持病があったり加齢による身体機能の低下など、様々なストレスに晒されています。慢性的なストレスは、便秘の原因にもなります。 対象者が今、どのようなストレスを抱えているのか、何気ない日常会話から把握していくことも大切です。そのストレス緩和のために、リラクゼーションや、レクレーションが効果的な場合もあります。寝たきりの患者さんの場合、思うように入浴できず清潔を保てないことにストレスを感じている方もいらっしゃいます。 そんな時、ベット上で足浴を行ってみると、患者さんはリラックスしストレスの緩和に繋がることもあります。足浴の際、アロマなどを活用してみることも効果的です。このような援助を行うことで結果的に便秘が改善させるケースがあります。

<注意点>

これまで、いくつかのポイントに絞って便秘解消の方法を説明してきましたが、援助を行う過程で逆に下痢に転じてしまう場合も想定されます。そうなるとシーツが汚れたりスキントラブルが生じる原因となり対象者のQOLは低下してしまいます。同時にオムツ交換をする介護者も大変になってしまいます。その場合は下剤の量を減らすか中止することを検討します。定期的にこまめに観察し微調整することが重要となってきます。

<身体に負担の少ないオムツ交換について>

介護をされている方で、オムツ交換をされる方は多いでしょう。一方で寝たきりの患者さんのオムツ交換をする際は、ちょっとしたコツがあります。これは介護者の腰痛予防のためにも大事です。 まず、オムツ交換を始める前に、ベットの高さを援助し易いところまで調節します。ベットの高さが低すぎても高すぎても腰痛の原因になるので注意します。 また、体位変換時は、てこの原理を応用して、患者さんの身体をコンパクトにするように意識します。 具体的には、対象者の両手を胸の上に乗せ、下肢の膝を曲げることです。そうすることによって介護者にとっても患者さんにとっても負担が少ないオムツ交換となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?便秘の原因には、様々な可能性が考えられますので、多角的なアプローチによって改善に向かうようサポートしていけたら良いですね。活動・食事・心理・薬剤など様々な側面から対象者の状態をアセスメントし、個別性を考慮した援助ができれば、さらに効果的な排泄ケアができるでしょう。日々の介護を工夫しながら、より良い援助ができるよう頑張っていきましょう。

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