わたしは大学病院で5年間、看護師として勤務していました。配属先は手術室です。そんなわたしの大学病院の手術室で働いた経験からメリットやデメリットをご紹介し、皆さんの就職先を探すヒントになればと思います。
大学病院なので、1つの診療科だけではなく、多くの診療科の手術を行います。その中でわたしが就職した大学病院の手術室での経験を基にわたしが感じたことを書いていきたいと思います。
<手術室の看護師の役割>
・器械出し
医師に器械を渡すことを中心に行います。器械の名称や手術の流れを覚え、手術に必要な器械の準備をし、手術がスムーズに行えるよう直接サポートしていきます。
[主な仕事]
手術に必要な器械の準備、器械台の整理
器械を医師に渡す
・外回り
器械出し以外の術中に関する看護で、間接的にサポートをしていきます。術前、術後訪問も行います。
[主な仕事]
必要物品準備、麻酔介助、体位固定、環境整備
コストチェック
<メリット>
・専門的な知識や技術を学べる
手術室では器械の名称や手術の流れなど、看護学校では教わらなかったことが多いので、就職して1から勉強をしなければなりません。しかし、同じ時期に手術室の看護師になった人達とはスタートが一緒なので、勉強をすればするほど差がつき、頑張りがいがあります。
何から始めて良いのか分からなかったので、わたしの病院では、術式別の手術の流れや必要物品が書かれた手技書が用意されており、最初の頃は手技書を丸暗記していました。他にも先輩からおすすめしてもらった本を購入したり、病院外で行われているセミナーなどに参加したりしていました。
器械出しは慣れてくると、手術の進行状況を見て次の器械は何を使うのかがわかってきます。医師に何も言われなくても渡せた時は、嬉しいという気持ちと自信が持つことができました。
外回り看護師では、麻酔がかかり意識のない患者さんに対して、丁寧に迅速に手術開始までの準備ができるか、患者さんの身体に手術創のみで手術を終えられるかなど、知識と技術と経験が求められてきます。
知識の面では手術中に使用する薬剤の副作用や禁忌、体位固定時の留意点など覚えることがたくさんありました。また患者さん一人一人体型や皮膚の状態などが違ってくるので、患者さんの個別性に合わせて臨機応変に対応していきます。意識のない患者さんは手術中、自分では意思表示ができないので、その分外回り看護師が広い視野を持ち、細かいことにも気付いていかなければなりません。
たくさん経験をし、先輩看護師のを見て学び、アドバイスをもらいながら実際に行うことで徐々に身についてきます。そして医療は日々進歩していくので、常に新しい情報を入手し取り入れていくことが大事だと思います。
大変ですが、手術が何事もなくスムーズに終わった時には達成感を味わえます。
・コミュニケーション能力が身につく
手術室ではコミュニケーションを取らないと手術が円滑に進みません。必要な物品が用意できていなければ、手術の進行を妨げてしまうこともあります。なので、事前に医師に確認することが大切です。また、手術中でも手術の進行状況を見ながら、必要そうな物品を先読みし、外回り看護師に準備しておいてもらったり、医師に聞いたりと自分からどんどんコミュニケーションをとっていくことで手術がスムーズに行われます。
わたしは最初の頃、緊張していて医師とコミュニケーションをとるのが苦手だったのですが、「1年目の○○です。よろしくお願いします。」といった挨拶から始めたことにより、医師も名前を覚えてくれて、優しく教えてくれました。基本的なことですが、挨拶をしっかりすることは、コミュニケーションをとるきっかけになると思います。
・新人教育環境が整っている
わたしの就職した大学病院では、プリセプター制度があります。新人看護師に対して、精神的サポートのプリセプターと技術・全体的なサポートのアソシエイトという先輩看護師がつき、指導していただきました。その他の先輩看護師も新人看護師のサポートを行い、みんなで育てていくという体制でした。1年目の頃は主に手術中は毎回プリセプターかアソシエイトの先輩看護師がついていてくれるので、相談しやすかったです。業務終了後には振り返りをしてくれていたので、聞き忘れていた点や曖昧だった点がなくなり、アドバイスももらうことができ、本当にありがたかったです。先輩看護師同士でも情報交換をしていたので、自分の状況を把握し、それに応じたサポートをしてくれていました。
この体制は就職した病院によって変わってくると思うので、もしサポートをしてくれるのか不安を感じる方は、その病院のホームページなどに教育体制のことが書かれていることが多いので、事前に調べておくと良いと思います。
<デメリット>
・患者さんとの関わりが少ない
患者さんとコミュニケーションをとるのは、手術室に入室して麻酔がかかるまでと手術が終わり麻酔から覚めた後のみです。緊張であまり話さなかったり、麻酔から覚めても手術室でのことは覚えていなかったりするので、病棟と比べると患者さんとの関わりが少ないです。
手術をするほとんどの患者さんとは、1度だけしか関わりません。その少ない時間の中でも緊張や恐怖心を和らげられるように、麻酔がかかるまで声かけや手を握るなど患者さんのそばをなるべく離れないよう心がけます。患者さんとの関わりは少なく、物足りなさを感じる方もいるかもしれませんが、関わりが少ない分、いかに患者さんがリラックスして手術を行える環境を整えられるかが、腕の見せ所だと思います。
・基本的な技術が取得しづらい
大学病院の手術室では採血や点滴などほとんど医師が行うので、基本的な技術はあまり経験できませんでした。わたしは看護学校の講義や実習で清拭などは実際に行ったことはありましたが、採血は模型で行っていました。わたしの就職した大学病院では、1年目の研修で採血を実際に行い、普段の看護業務では行うことはありません。
病院により異なると思いますが、基本的な看護技術を多く学びたいのであれば、病棟やクリニックなどが良いのかもしれません。
・急患対応が多い
緊急手術というのが日常茶飯事です。急に予定ではない手術に入らなくてはいけないので、どの手術にも対応できるように、手技を頭に入れておかないといけません。慣れるまでは手術の流れなどを書いたメモを常に持ち歩いていました。勤務時間ギリギリに緊急手術が入ると、最後までその手術につくことになり残業となります。日によって違ってきますが、急に残業になったり、残業の日が続いたりすることもあります。
・拘束時間が長い
大学病院での手術室では、24時間勤務の当直があります。当直の業務は主に次の日使う器械の準備や休憩交代要員、在庫のチェックです。緊急手術が入らなければ夜は仮眠できるのですが、緊急手術が入るとずっと働き続けなければなりません。長い手術の時は立ちっぱなしなので、足が辛くなってきます。
他にもオンコールという人手が足りない時に呼ばれ、それ以外は家で待機という日があります。深夜など時間は問わず。いつ呼ばれるかわからないのでその日1日は休んだ気がしませんでした。
また、多くの診療科の手術に入るので、たくさんの知識が必要になってきます。休みの日も手術のことを考える日が多く、日々勉強しなくてはなりません。休みの日に勉強していても足りないと感じることもあります。勉強をし知識をつけることでやりがいや達成感はありますが、プライベートと仕事をしっかりわけるのは、数年厳しいのではないかと感じました。
まとめ
参考になりましたでしょうか。大学病院の手術室は、とても大変で忙しいイメージがあると思います。その中で、迅速に効率良く、適切な看護を行っていかなければなりません。でも、誰しもが最初から出来るわけではないので、勉強をして知識、技術を身につけて、たくさん経験を積むことが大切になってくると思います。少しでも手術室看護師に興味を持っていただけたら、嬉しいです。
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