訪問看護に興味はあるけれど、知っておくべき情報ってあるのかな?なるには何か準備が必要なのかな?と考えていらっしゃる方は多いかと思います。訪問看護は病院勤務と全く違うのでさまざまな面で想像がつきにくいかもしれません。転職してからこんなはずじゃなかった!と思わないために、具体的に訪問看護師になるために知っておくと良いこと、準備しておくと良いことをお伝えします。
・夜勤はない、あっても緊急時の待機制
訪問看護師は病院勤務ではありませんので、夜勤はなく基本的に日勤です。訪問看護ステーションによっては夜間の緊急対応加算(24時間緊急対応加算)を算定しているのでそのようなステーションの場合は夜間対応を当番制で行っている場合があります。その場合、待機制(自宅待機で緊急時には電話対応、あるいは緊急訪問)を導入している訪問看護ステーションがほとんどです。待機時の給料はステーションによって違います。病院の夜勤と比較すると待機制のほうが安いことのほうが多いようです。実際に私も病棟勤務から訪問看護ステーション勤務へ異動となった際はお給料が減りました。しかし基本的に日勤なので生活リズムが整うというメリットはあります。
・必要な資格として運転免許は必須
訪問看護師は利用者さんのご自宅に訪問をします。その際の手段ですが、都心部の訪問看護ステーションを除き、車を使用する訪問看護ステーションが圧倒的に多いです。ですので、運転免許は必須と捉えてよいでしょう。また、訪問の際にステーションが保有する公用車を使用するのか、個人の自家用車を使用するのかはステーションによって違います。ステーションを選ぶ際に確認が必要です。事故をした時の対応や保険などの取り決めは重要です。
・一度も行ったことがない家にたどり着くスキルが必要
先に述べた24時間緊急対応の加算などで夜間の待機中(緊急当番)に緊急訪問の要請が入ることがあります。その際に、一度も自分が行ったことがないようなお宅に地図や住所を頼りにたどり着かなくてはならないことがあります。本当に深刻な方向音痴の方はつらいかもしれませんが、最近は地図アプリもありますのでだいぶハードルが下がっていますね。
・現場で必要な衛生材料の準備は誰がしてくれるのか確認が必要
訪問看護師は、訪問先でさまざまなケアを実施します。排泄や保清のケアはかなり多いですが、その際に使い捨ての手袋や、自分が身に着ける使い捨てのエプロンなど、衛生材料がいろいろと必要になります。それらを利用者さんにすべて準備してもらうのか、ステーションが準備するのか、看護師自身が自費で必要な分を準備しなくてはいけないのか、ステーションによって違います。すべてあたりまえのように病院内の物品を使っている病院勤務とは違いますので確認が必要でしょう。
・看護記録が「手書き」である
病院では電子カルテが圧倒的に多い昨今。在宅現場でも電子化は急がれていますが、なかなか普及が難しい状況です。訪問先で記録を残す方法として手書きが採用されているステーションがまだまだ大多数です。ほとんどのステーションで記録は複写の用紙が使われており、一枚を利用者宅に残し、もう一枚をステーションで保管するという方法が取られています。電子化だと「利用者宅に残す」という方法をどう取るかが大変難しいのだと思います。近年ではタブレット端末などを活用するステーションが増えていますが、看護記録そのものは手書きです。そこで私自身もつまずいた問題の一つが、漢字がすぐに出てこないということです。電子カルテに慣れていたので、医療用語を漢字で書けと言われてもすぐに書けないという状況になり、かなり戸惑いました。ちょっとしたことですが、訪問看護に転職、就職を考えていらっしゃる場合は医療用語の漢字を意識しておいたほうがよいかもしれません。
・「一人」で訪問するという責任を理解しておく
訪問看護師は基本的に一人で訪問先に出向きます。何が起こってもまず自分自身が対応しなくてはなりません。利用者さんの状態変化時の対応はもちろんのこと、訪問中の想定外のトラブルにもまず自身の対応が迫られます。さらには災害時の対応も想定しておくことが重要です。近年の自然災害では停電があたりまえのように起こったりしますので、そういった場合の対処法や自身の避難方法、緊急時のマニュアルの把握など理解しておかなくてはならない部分が多いのです。私自身も病院勤務時代は管理者が理解しておけばよいだろう、と考えていた事柄も訪問看護師になってからは自分自身が理解していないと自分が困るということを実感したため、看護の面以外にも管理的な面もしっかり把握するようになりました。個人にかかる責任のような部分において訪問看護師は負担が大きいかもしれません。ですが、看護師として、働く個人として責任感を持てるようになります。
・さまざまな人と連携する場面が多い
訪問看護は介護保険での訪問であればケアマネージャーが利用者さんの状態に応じて組み立てる「介護保険サービス」の一つです。デイサービスやヘルパー、訪問入浴などのサービス事業所と同じ立ち位置です。ですので、必然的にケアマネージャーと密な情報共有が必要となりますし、他事業所との連携も重要です。また訪問看護は医師からの指示があって実施できるものですので、指示を出してくれている医師との連携や市町村など行政機関、他のステーションや地域の個人医院など連携先は多岐に渡ります。毎月「報告書」という形で医師に文書を送付する義務がありますし、電話での多職種とのやりとりは日常茶飯事です。日常の看護業務以外に連絡調整業務が多いことも訪問看護師の特徴です。大変な面もありますが、日常的に多職種連携の環の中にいるという実感が持てます。病院勤務時代には味わえないやりがいの一つです。
・マナーや言葉遣いにいっそう気を配る必要がある
訪問看護師はご自宅にお邪魔します。人様のお家です。そして利用者さん自身は「患者」ではない「普通に地域で暮らす人」です。「患者」でいる時は、自分よりも若い看護師からため口をきかれても我慢できていたかもしれませんが、自宅では当然そうはいきません。病院の中よりも訪問看護の現場のほうがマナーや言葉遣いに高いものを求められる、といっても言い過ぎではないと思います。就職や転職前にいま一度ご自身の言葉遣いやマナーを見直してみてもよいかもしれません。
まとめ
いかかでしたでしょうか。
この文章を読んで訪問看護の現場の実際的な部分が少しでも知ってもらえたなら、うれしいです。責任やマナーだとか、ちょっと重たいワードも出てきてしまいましたが、尻込みする必要はありません。訪問看護師として働くことで少しずつ、必ず培われます。そしてそれらはすべてやりがいに繋がります。訪問看護師は、「患者」ではなく「普通に生活する人」たちの当たり前の日常を支える重要な仕事です。「患者」として向き合う必要がある病院との大きな違いはそこにあります。一人の人として接することができる素晴らしい仕事です。看護師としての視野を広げるために、多くの方に経験してほしいと考えています。
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