MSWの私が思う、就職前にやってほしいこと

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#886 2019/11/10UP
MSWの私が思う、就職前にやってほしいこと
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学生さんに、「MSWとして就職するためには、今のうちに何を勉強しておけばいいですか?」と聞かれることがあります。私の答えは、「いろんなところに行って、いろんな体験をして、いろんな人に会うといいよ」です。納得いかない顔をする人、ポカンとする人、いろんな人がいますが、学生の時にしかできないことは、たくさんあると思います。その理由をお話ししたいと思います。

MSWの現場は本当に様々です。
その地域の、その分野の知識が、かなり深いレベルで求められます。加えて、その病院その病院の決まり事があります。

例えば、面談の際によく紹介する制度のひとつに、オムツの助成があります。
市町村によって対象者も違えば現物支給・現金支給といった方法、支給額も違います。川1本、道1本違えば、別の自治体。クライエントは、MSWの案内に従って役所に申請に行きます。もしかしたらその息子さんは、働き盛りのサラリーマンで、なんとか午前中だけ休みを取り、役所に行ったのかもしれません。もしかしたらその奥さんは、自分も足が悪いけれど、入院中の夫のために頑張って役所まで歩いたのかもしれません。もしかたらそのお嫁さんは、隣町に住む自分の母親に赤ちゃんを預けて役所に行ったのかもしれません。せっかく役所まで行ったのに、情報が間違っていたら大変なことです。また、制度はどんどん変わっていきます。社会資源は、働く病院が決まってから必要な地域の必要な分野を調べ学んでいくしかないのです。
何を見れば、どこに聞けば、正確で必要な情報が得られるのか知っていること。調べたことを使えるように整理しておくこと。相手の状況に配慮できること。そのようなスキルや、いろいろな状況の人がいることを知っていることのほうが大切だと思います。

「いやしかし病院で働くのだから、医学的知識は必要だろう。患者さんに何か聞かれるかもしれないし。」そう思い、私も勉強した記憶がありますが、医学の知識は本当に広くて深い世界です。医学部の学生さんが6年かけて学ぶことを、福祉の学生が少しかじっても歯が立ちません。加えて、私が初めて就職した病院は専門病院でしたので、かなり勉強されているクライエントが多かったのです。よく勉強されたクライエントが知りたいことは、一般的な知識を自分の状況に当てはめるとどうか、ということでした。当然、私はわかるはずもありませんでした。
「主治医に聞いたけど、聞きたいことと別の答えが返ってきた。」「先生も忙しいし、どこから話せばいいのか。」このような相談を受けることがありました。医者からも「あの家族は何が聞きたいのかよくわからない。説明したはずなのに、同じことを何回も聞かれる。」という話を聞くことがありました。餅は餅屋。MSWは医者ではないので、病状説明をする必要はありません。むしろ、個別性に富み、刻一刻と変わる病状を勝手に説明してはいけません。MSWの専門性は、医学ではなく、クライエントの自己決定を支えることです。自己決定するためには、クライエント自身が必要な知識を得る必要があります。MSWに必要な医学知識は、医療職に質問ができる程度で十分です。それよりも、この人は何に困っているのか、何が心配なのか、どんな風に変わりたいのかを聴けることや、この人は何を当たり前だと思っているのか理解することの方が必要です。
いろんな分野の人に、いろんな状況の人に、いろんな地域の人に会えるのは、就職前の方が断然有利です。いろんな場所に行って、いろんな体験をすることも、時間の自由がある就職前の方がしやすいでしょう。例えば、スノーボードは滑っているのは一瞬であること、これは経験者は誰でも知っていることです。そのために早起きして雪山に行って、更衣室で着替えて、動きにくい格好で歩いて、リフトに並んで、帰ったら道具の手入れがあって…ということは、経験していなければわからないでしょう。「毎週スノーボードに行っている」と聞いたときに理解できる深さ、想像できる仮説、配慮は、全く変わってきます。シュノーケリングで船酔いした時のどこにも避難できない辛さ、マラソンを完走した時の達成感、ハモれた時の心地よさ、毎日の満員電車、車通勤で渋滞した時の焦り、海外のトイレの汚さ。いろんなことを経験して感じたことは、他者の話を聞く上で、絶対に役立ちます。

また、病院の決まり事は様々です。ある病院では許可されていたことが、別の病院では許可されないこともあります。ある病院では提供されているサービスが、別の病院では有料になることもあります。
組織体系も様々です。MSWは、栄養科や放射線科などのコメディカルに属している病院もあれば、医事課や総務課などの事務部に属している病院もあります。退院支援部門として看護師と働く職場は、看護部に属していることもあります。私が働いた病院では在宅診療部の一部だったので、上司は医者でした。上司の職種が違うということは、MSWとして求められることも、MSW部門として評価される基準も異なるということです。
また、協働する相手がどの職種のどのポジションの相手かによって、内容がどのような案件かによって、チーム内での役割も変わってきます。場合によっては、年上の看護師やリハビリ職種の中でMSWがリーダー的ポジションを取らなければいけないこともあります。これは、自分自身の、今までの他者との関わり方が顕著に出ます。部活やアルバイトで、先輩との関係が築けていた人は上手です。「お父さんの友達がよく家に来て、一緒にお酒を飲んでいた」と言っていた新人さんは、医者に気に入られるのが早かったです。これも、勉強というよりは、いろいろな景色を見て、いろいろな体験をして、自分の引き出しを増やしておくことが役立ちます。

MSWの仕事は、相手を理解するところから始まります。
それは、患者・家族といったクライエントもそうですし、一緒に働く多職種、院外の関係職種にも当てはまります。相手がどんな状況で、どういう状態を目指していて、どういう方法で実現していきたいのか。その実現を支援するのがMSWです。そしてそれは、本人からしか教えてもらえません。どの仕事でもそうですが、新人さんが突然できる仕事ではありません。必要なスキルは入ってから覚えればいいと思います。大切なのは、謙虚に相手から学ぶ姿勢、素直に感じて受け取る心、相手の状況を想像する力、その上で自分自身を見つめることです。

まとめ

いろんなところに行って、いろんな体験をして、いろんな人に会う。なぜ大切か、理解していただけたでしょうか。クライエントも、一緒に働く相手も、多くは親世代です。上っ面の対応は、すぐに見抜かれます。「いい子だな」「自分の言葉で話してるな」「一生懸命やってくれそうだな」と思えるような人と、仕事をしたいなと思います。就職したら、ご自分の体験や今の世代の当たり前を、上司や先輩たちに是非教えてあげてください。

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