看護師として働いていると様々な場面で「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が必要となります。その中での医師へのホウレンソウに苦手意識を持っている方はたくさんいるのではないでしょうか?そこでホウレンソウの必要性や医師へ報告する際の方法・ポイントをご紹介したいと思います。 まずホウレンソウとは、1982年に某証券会社の会長が社内でキャンペーンの際に使い始めたことが始まりであり、医療の場でも看護師間や、看護師から医師へとホウレンソウを行う場面がたくさんあります。 ではホウレンソウとは何で、なぜ必要なのでしょうか。
●ホウレンソウとは
ホウレンソウは言うまでもなく報告・連絡・相談を意味しています。 そこで報告・連絡・相談の意味を説明します。 ①報告:与えられた任務についてその結果や状況を伝えること ②連絡:チーム間で関係がある人に情報を知らせる ③相談:自分では判断できないことについて意見を求めること 医療の場では、医師だけでも看護師だけでも患者を看ることが出来ません。医師・看護師・理学療法士・栄養士・ケースワーカー・薬剤師など、さまざまな職種で連携し、チームとなることで、一人の患者の治療をしています。そのため、それぞれの業務の進歩状況や、患者に関して得た情報をチーム内で共有する必要があります。 以上のことから、チームとして活動する為には、個々の活動だけではなくホウレンソウをすることでよりよい医療を提供することが出来ると言えます。
●適切に医師へ報告するために必要なこと
適切に医師へ報告するために必要なものは何でしょうか。 適切に報告する際の方法やポイントについて説明します。
①情報収集
適切な情報を医師の報告するためには、まず適切な情報を得るための情報収集能力が必要です。 患者の状況を知っていないと把握することも出来ないですし、報告することが出来ません。 そのため、患者の入院経歴、治療方針、内服内容、現在の状況・訴えなど情報を正しく得ておく必要があります。
②コミュニケーション能力
よい情報共有をするためにはコミュニケーション能力も必要となります。 一人がホウレンソウをしようと思っていても、相手が聞く耳を持たなかったり、コミュニケーションを図ろうとしなければ良い情報共有をすることは出来ません。 日頃からより良い関係性を築くことで、いざ報告する場合や相談する時にスムーズに行うことができるでしょう。
③状況把握能力
適切な情報を得た後はその情報を整理し正しく把握する必要があります。 そのため、情報の適切に把握する能力が必要となるでしょう。
●医師へのホウレンソウの方法
では、正しく報告するためには、どのようにしたらいいのでしょうか。 決して難しいことではありません。報告の方法として、ISBARCという簡潔にもれなく報告するためのツールを使用することが効果的であると言われているためご紹介します。
まず、ISBARCとは、
S:Situation(状況、状態)
B:Background(背景・経過)
A:Assessment(評価)
R:Recommendation(依頼、要請)
C:Confirm(復唱)
の6つで構成されており、このような順番・内容で報告することで必要な情報を順序立てて伝えることができると言われています。
では、報告方法について例を挙げて具体的に説明したいと思います。 ※登場人物はすべて仮名であり架空のものです。
職員:看護師 山本Ns 2階病棟勤務 医師 高橋Dr 患者情報:203号室 田中さん 80歳 女性 肺炎にて入院中 既往歴:高血圧、大腿骨頚部骨折 体温38.5度 脈拍100回/分 血圧132/76mmHg SPO2 90%
I:Identify(報告者、対象の同定)
「2階病棟の山本です。高橋先生、今お時間よろしいでしょうか。」
S:Situation(状況、状態)
「患者さんのお名前は田中さんです。80歳 女性です。 38.5℃の発熱があるのでコールしました。」
B:Background(背景・経過)
「田中さんは肺炎にて入院中です。現在発熱が38.5℃あり、呼吸苦があります。 血圧は132/76mmHg、脈拍は100回/分、SPO2は90%です。」 と状況・必要な情報を簡潔に報告する。
A:Assessment(評価)
「発熱によりSPO2が低下していると思います。解熱と酸素投与が必要ではないでしょうか?」 と予測されることを分かる範囲で伝える。
R:Recommendation(依頼、要請)
「診察をしてください」「発熱の指示と酸素の指示をください」 としてほしいことを具体的に伝える。
C:Confirm(復唱)
「ジクロフェナク25㎎ 1個挿入ですね」「酸素1Lカヌラで開始ですね」など医師からの指示を復唱・メモする 以上のように、必要な情報を伝え、評価し、指示を的確に依頼することで必要な指示を得ることが出来ます。
また、医師は外来担当と入院患者ともに診察していることも多いため、緊急を要するのか、診察の合間など時間が空いたタイミングでもよいのか、報告のタイミングも判断する必要があります。
夜間の場合には、当直医への相談でよいのか、主治医の判断が必要なのかも考え、報告することが大切でしょう。 このためには、状況把握能力のほかに医師の性格や特徴を知ることも必要であり、経験を積むことである程度は出来るようになるのではないでしょうか。 そのためにも、普段から医師の治療方針を知っておくことや、コミュニケーションを図っておくといいでしょう。
また、予測できる場合改めて異常時の指示を確認しておくことも有効です。 例えば、肺炎入院であれば、発熱の指示・SPO2低下時の指示、喘息発作入院ならば、発作が出現したときの指示をもらっておくと、医師・看護師ともに負担を軽減し患者への対応もすばやく出来るのではないでしょうか。
●急変時の報告の方法
続いては、急変時の方向の方法です。急変時は誰でも焦りを感じます。 しかし急変時の時こそ、必要な情報を的確に伝え、対処する必要があります。 そのため、報告の際にはまず大切なことや結論を伝えます。 例 203号室 田中さん(仮名) 80歳女性 肺炎にて入院 既往歴:高血圧 食事時に窒息 チョークサインからの呼吸停止 意思決定なし 上記の場合どのように報告した方がいいでしょうか? 一番伝えたいことは呼吸停止したということであり、直ちに心配蘇生が必要となります。 そのため「203号室の田中さん 80歳女性が食事にて窒息し呼吸停止です。いますぐ来棟してください」と伝えます。 既往歴や食事時の詳しい状況については来棟してから報告しましょう。 このように急変時は早急な対応が必要となるため、一番伝えたいことを最初に伝えます。 また患者の情報を把握しておかなければ適切な治療を行うことが出来ません。 そのため、日頃から患者の全体像を把握しておくことが必要となるでしょう。 また、状態悪化する恐れがある場合は、あらかじめ医師へ報告し対処しておくことや、急変時の意思決定を確認し把握しておくことが大切でしょう。
まとめ
それぞれの病院にメリット・デメリットがあります。そのため、看護師として働く上で、自分にとってなにが重要なのか考え病院を選択するといいでしょう。 また、認定看護師や専門看護師を取りたい人は応援してくれる病院を選択するのも一つの方法です。興味がある病院は必ず病院見学に行き、雰囲気を自分で感じることでよりよい病院を選ぶことが出来ます。
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