姿勢、椅子の高さ、しっかりと目が覚めているか、そもそも体調がよく無いのか、食事の形態があっていないのか、など様々な要因が考えられます。
最近ではユニット型施設が主流になって来ていて個別ケアに重きをおいている介護施設がほとんどになって来ましたが、中にはまだ、旧体制のままの施設もありそういったハードでは、時間に追われて食事をゆっくり食べていただくこともできず途中で切り上げてしまう、なんてこともあります。単純にスタッフの人数が足りていないと言うパターンも考えれられます。
そういった中でその人にあった食事を提供していくのは至極難しいように思えますが、少し意識を変えて業務に当たってみるだけで介助の質が上がると私は考えています。
・まずは家族とお話してみましょう。
これは、「なんだ、当たり前のことじゃ無いか」と思われる方も多いかと思いますが、ご家族としっかりお話をする機会というのはなかなか無いように思えます。
と、言うのも介護士は基本的には現場で働き、利用者様の生活を目の当たりにしながら日々業務に当たっています。
そして、ご家族とお話をするのは主に、相談員だったり、ケアマネージャーがその役割を担っていて介護士はなかなかご家族と深いところまでお話をする機会が滅多にありません。少なくとも相談員、ケアマネよりかは圧倒的にご家族と接する機会は少ないはずです。
なので、まずは面会に来られた際や、あらかじめ相談員、ケアマネにご家族とお話できる機会を作っていただき、その利用者様が家で生活されていた時の事をしっかりと聞く必要があります。
・すきな食べ物はなんだったのか?
・嫌いな食べ物はなんだったのか?
・食べることが好きな人だったのか?
・食事を食べ終わるまでが速い人だったのか、遅い人だったのか
・パン派なのかお米派なのか麺類が好きなのか・・・・etc
上記の様な質問を投げてみて、情報を得る必要があります。そして、今、その利用者様が食べない理由は何なのかを探ってみましょう。
介護士だけの予想では、なかなか答えに結びつけるのは難しいですが、ご家族という情報源を最大に活かして、利用者様が少しでも負担なく食事を召し上がって頂ける様に努めていくのも大事なことだと考えます。
・エピソードを見つける
エピソードを見つける、と言うのはその利用者様の記憶を呼び起こしながら食事を召し上がっていただくことです。
例えば、私の施設で経験したお話なのですが、ある利用者様が玉子焼きがメニューに出てくる時に限ってよく食べ、よく発語が聞かれました。
しかし、それ以外のメニューが出る日には、さほどお話もせず、完食されることもあまりみられませんでした。
最初は、単純に玉子焼きが好きなだけだろうと考えていましたが、ある日ご家族が面会に来られた際に「玉子焼きが好きな様子で、玉子焼きが出るメニューの時はよく会話をされながら召し上がっているんですよ。」とお伝えしたところ、そのご利用者様の息子様が「僕が子供の頃に玉子焼きが好きでよく作ってくれていたんですよ。認知症が始まった頃に僕の嫁が玉子焼きをたまたま作って朝食に出した時にお袋が僕のためにたくさん作ったんだよーと長々と話をされたことがありましたから、もしかしたらその影響かもしれないです。」と教えてくださったことがありました。それを聞いた時に、その利用者様にもう一度、玉子焼きのエピソードを聞いたところ満面の笑みで「息子のためによく作ったのよ。」と話してくださったのを今でも思い出します。
そういった些細なエピソードをすくい上げるだけで、コミュニケーションの材料にもなりますし、食事を楽しみながら摂って頂けることにも繋がりますので、ぜひその様なエピソードを見つけてみるのもいいかもしれません。
結局その利用者様は、それからご家族に色々なお話を聞かせて頂くことで、食事に様々な試みを重ねることが出来てその結果、毎日の様に間食して頂くことができる様になりました。
もちろん完食して頂くことが全てではありませんが、無理なく、気持ちよく食べて頂けると言うことはスタッフとしても嬉しい事ですし、次に繋がる成果にもなります。
トライアンドエラーを繰り返しながら、目の前にいる利用者様に、施設での生活が豊かな時間になる様日々検討していくことはとても大事な事です。
いつまでも末長く元気に過ごして頂ける様に、日々の生活業務だけではなく、情報を得て現場に活かし、スタッフ全員で一人に利用者様に向き合う事こそが介護現場に一番必要な事だと考えています。
食事は生きるために必要不可欠なものですが、だからこそ無理強いして食べさせるのではなく、楽しく安全に食べて頂くことが一番です。
冒頭に記述させて頂きましたが、姿勢、椅子の高さなどそういった事にも気をつける必要は確かにありますが、本質は「楽しく食べて頂く」ことです。
当たり前のことですが意外と現場に入ると忘れてしまいがちです。
ぜひ、この機会に今一度、食事に対しての考え方を見直してみてはいかがでしょうか?
そうすれば、スッタフも食事介助が苦になることなく、日々の業務に当たることができると私は考えています。
介護の現場で働こうとしているスタッフのためにも、そしてこれから入居を希望されているご家族、お年寄りの方のためにもどの施設にも笑顔が絶えないそんな介護現場になっていくことを切に願っています。
まとめ
長々と読んで頂きありがとうございました。今回私が一番皆様にお伝えしたかったのは「利用者様を知る」と言うことでした。
新しく入居される時にサマリーが届くことかと思います。当然そこには、その利用者様の今までの生い立ちが書かれていると思うのですが、私はあれは名刺程度の紹介文としか考えていません。実際にその方と会ってみてお話をして初めてその方がどんな方なのかを理解し、そしてそこからケアが始まっていくのだと思っています。
食事に今回はフォーカスさせて頂きましたが、ご家族、御親類の方々からもたくさん情報を得てそれを武器に、利用者様の日々をお手伝いさせて頂けたらそれが一番だと思っています。
今回は最後まで読んで頂きありがとうございました。稚拙な文章ではありましたが皆様のお役に立てれれば幸いです。
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