認知症の患者さんを看護する際のアセスメントのコツ 

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#775 2019/07/26UP
認知症の患者さんを看護する際のアセスメントのコツ 
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認知症を持つ患者さんは年々増加傾向になっています。実際の現場でも、認知症の既往がある患者さんをケアすることは多くあります。
認知症の方とあまり関わりを持ったことがない人は、ケアをする際に対応に悩むことも少なくないでしょう。
今回は、そういった認知症の患者さんへのアセスメントのコツについてまとめました。

普段の行動からの情報収集

認知症の人をアセスメントするなかで重要なのが、普段の行動をよく観察し、そこから情報を収集することです。認知症の方は具体的に自分の思いや感じていることを、こちらに言葉としてうまく伝えることができません。

そのため、普段繰り返し行っている行動の中から、それがどういった意味があるのか、なぜその行動を行うのかといことに興味を持ち、看護者はそのことに気付く必要があります。

例えば、必ず夕食の後はそわそわと落ち着きなく席を立ち、徘徊し始める患者さんがいたとします。そういったときに、「またやっている」と思うのではなくまずは、繰り返し行われるその行動になにか意味があると気づくことが必要です。


認知症を持つ患者さんの困った行動は、しばしば看護者からないがしろにされてしまうことがあります。それに重要な意味があることに気付かないままに、自宅に帰ろうとしている患者さんに「医師の許可がないので退院はできません」などといった当たり前の声掛けをしても、患者さんにはまったく届いていないのです。

そういった声かけばかりしていると、患者さんにとってはなにか理由があって徘徊しているのに、「どうしてそんな的外れなことを言うんだ、信用できない」とますます症状が悪化してしまうことにつながりかねません。


徘徊や妄想、暴力といった認知症の患者さんの困った行動はBPSDと呼ばれます。

そのBPSDは看護者が適切な対応をすれば症状は悪化せずに回数も少なくなってくることが分かっています。その一方で、看護者が対応を誤ると、よりBPSDがひどくなり患者さんと介護者をより一層悩ませてしまうことになってしまいます。認知症も進み、回復が難しくなってしまうこともしばしばあります。

そうならないためにもまずは、認知症の人を看護する上でのアセスメントの第一段階として、普段の行動に意味があるということを念頭に置き、情報収集をすることが重要になります。

家族などから、患者さんの今までの人生や大切にしてきたこと、人となりについて情報収集する。

前述したように、患者さんの特徴的な行動について気づくことができたら、次に本人以外からの情報収集を行います。

認知症の人のアセスメントにおいて、この家族からの情報収集が最も重要になってくるといっても過言ではありません。

重要なのは、その人の人生の中で大切にしてきたことや、生活歴、人となりについて情報を収集するということです。

具体的には、
「農家に嫁いできて今までずっと農作業にかかわってきた働き者な人」や「長年夫の両親を介護してきて苦労をしてきた人」、「先祖を大切に思う人で、朝晩は必ず仏壇に手を合わせて、毎月お墓参りを欠かさなかった」など、その人の人間性が分かるようなことを情報収集することが、認知症の人を看護する上で大変重要になってきます。


一見医療の現場ではそういったことは治療に関係ないと思うかもしれませんが、看護を行う上では必要ですし、患者さんのことを深く知ることは、治療がスムーズに行えるかどうかにもつながっていると思います。

例に出した、必ず夕食の後はそわそわと落ち着きなく席を立ち、徘徊し始める患者さんは家族から話を聞いてみると、その女性は長年夫と二人暮らしで晩年は夫の介護のため、必ず夫が食べやすい夕食を手作りし、一生懸命に支えていた人だったとします。

この情報が合わさることで、その患者さんは夕方になるといつも徘徊する理由は、自宅に帰って夫の食事の準備をしないといけないと考えているという風にアセスメントすることができます。

そうすると、今までは徘徊しても「まだ入院中だから許可がないと退院できません」などといった的外れな受け答えではなく、「ご主人は、今日は娘さんが食事の準備をしてくれるといっていましたので大丈夫ですよ。安心してベットに戻りましょう」といった適切なケアや声掛けにつなげることができます。

そうすれば、患者さんは安心することができ、なんどもそういった対応をすることで患者さんの徘徊の回数も減ってくるという効果があります。そうなることで、患者さんの心配事は少なくなり、入院生活を安心して過ごすことができ、治療に専念できるようになるのです。看護者としても、認知症の患者さんの気持ちに寄り添えることでスムーズに治療や看護、介護が行えるのです。

認知症の患者さんの行動には、こうした人生の中で大切にしてきたことや、人となりがとても行動の軸となっていることが多いです。

私が以前、総合病院にて看護師として勤務していた際の事例としては、

男性の患者さんでトイレに行くと必ず床に排尿している患者さんがいました。そういった場合、「床にしないでください」と何度言っても効果はありません。まずは、トイレについていき、なぜそういった行動をするか情報を収集しました。

すると、洋式トイレですがその患者さんは必ず立ったまま用を足していたのです。

次に家族から除法収集をしてみると、自宅は男性が建てた思い入れのある古民家で、トイレは男性用の小便器が設置してあるとのことでした。そのため男性は病院にある洋式トイレは使用したことがなかったのです。

このため、洋式トイレでの用の足し方に慣れずにこのようなことになっているのだとアセスメントできました。


そして、そのアセスメントからケアとして、トイレに「一歩前へ」と張り紙をすることにしました。そうすることで、それ以降は患者さんもトイレの床を汚すことなく用を足せるようになりました。そうすることで、男性の自尊心も傷つくことがなくなり、入院生活をより安楽に過ごせることができるようになりました。

このように、認知症の患者さんの行動には必ず意味があるということを学びました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

認知症の患者さんをアセスメントする上で重要なのは、

①普段の行動からの情報収集
②家族などから、患者さんの今までの人生や大切にしてきたこと、人となりについて情報収集
の2つと述べました。何気ない情報や気づきと思うかもしれませんが、今後認知症の患者さんが増加する中で、アセスメントはより一層難しくなってくると思います。

これらのポイントを押さえて、これからの看護に繋げてくれると幸いです。

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