理学療法士を目指す皆さんが様々な求人の中から自分の働きたい分野を選ぶときにどのような点に注意しますか?今回は、様々な分野がある理学療法士の中でもマイナーな分野である小児分野の病院で11年間勤務している理学療法士が働き方のポイントと今後の理学療法士のあり方についてお伝えします。
なぜ小児分野の病院に就職しようと思ったのか?
理学療法士として働くためには様々な分野の病院や施設があります。その中で主に就職先として選ばれる分野は、骨折や変形性疾患などの整形疾患を扱う整形分野と脳梗塞や脳出血などの中枢疾患を扱う中枢分野の2つです。
私も実習に行く前は理学療法士のイメージとして骨折の患者さんや脳卒中の患者さんのリハビリテーションを行うイメージがあったので、就職先としてなんとなく整形・中枢分野の病院に就職できれば良いなと思っていました。
しかし、実習先に決まった病院は私の希望分野の病院ではなく小児分野を多く扱う病院でした。
正直小児分野は難しい印象が強く、実習がうまくいくのかとても不安でした。
実際、実習自体は毎日難しい疾患ばかりで大変でしたが、何より大人ではなく子どもたちがリハビリの対象ということが印象に残りました。整形や中枢疾患のほとんどは子どもではなく大人が相手です。
こちらの思い通りにならない子どもたちを相手にリハビリを行うことは、こちらの意図したとおりにリハビリが行いやすい成人の方をリハビリするよりも大変なことです。その点、小児分野はその子の将来に関わることができるのでやりがいは何倍もあるように感じました。こういった実習の経験から小児分野の病院で働こうと決心しました。
理学療法士の小児分野の求人は多いのか?
実のところ前述したように理学療法士の求人は整形分野や中枢分野を始めとした高齢者対象の病院や施設がほとんどであり、小児分野の求人はあまりありません。
しかし、理学療法士の数はここ数年大きく増加してきているので、理学療法士自体の求人は年々少なくなってきています。その中で特に人気の分野である整形・中枢分野は就職先が段々となくなりつつあります。その点小児分野の病院や施設は難しい印象が強くまだまだ求人の数は残っているように思います。
小児分野の理学療法士としてのやりがいとは?
小児分野の理学療法は「発達」を視野に入れながら治療を行わなければなりません。また、その対象となる年代も生まれたばかりの乳幼児期から就学前の幼児期、そして小学校に入学してからの学齢期、高校を卒業してからの成人期に主に分かれます。
そのため、各時期に合わせた理学療法の目標設定を行う必要性があります。
整形・中枢を始めとした成人の方の場合では、このような長期的な目標設定はあまり行われません。ここが成人と小児の大きな違いであると思います。また、成人の場合は正常であった方が病気にかかり、失われた機能を取り戻していくためのリハビリテーションが行われていきますが、小児の場合は先天性の疾患がほとんどなので元々障害をもっている状態から一つ一つ機能を獲得していくというリハビリテーションになっていきます。
子どもたちは本来様々なチャレンジを繰り返しながら徐々に機能を獲得していきますが、理学療法の対象となる小児疾患のお子さんも同様に好奇心いっぱいに様々なチャレンジをしようとします。
こういった子どもたちの成長を間近で感じながらリハビリテーションを行うことが出来ることが小児分野の理学療法士の大きなやりがいの一つであると思います。
小児分野の理学療法士になって良かったこと
まずは毎日刺激にあふれた仕事であるということです。子どもは理性的であり自分の感情に正直ですので、毎日同じような心身の状態ではなく様々な表情や行動をみせてくれます。ときには泣いてしまったり怒ってしまったりすることもあります
しかし、一つ新しいことが出来るようになるとそれは嬉しそうに喜んでくれます。人と関わる仕事をしていてこれ以上の喜びはないように思います。理学療法士は触れることで機能改善のための治療を行う職業ですが、機能を改善していくということよりも相手が喜んでくれることが何よりも大事にして行かなくてはならないと思います。
これからの理学療法士に求められていることとは?
理学療法士の数が増加し、もはや理学療法士という資格だけ持っていても希少価値が小さいものになってきています。
そこで新たに上位の資格の位置づけにあたる認定理学療法士制度や専門理学療法士制度が出てきており、各分野での認定・専門理学療法士が増加してきています。
この認定・専門理学療法士の資格を持っていると研修会の講師を務めることが出来るようになったり、学会の査読や座長を務めることが出来るようになったりなどの利点が多くあります。
しかし、せっかく苦労して整形・中枢の分野の認定・専門理学療法士になってもそもそもの理学療法士の数が多いためにそういった利点を活かすことができません。
その点小児分野はまだなじみの薄い分野であり理学療法士の数も少ないです。
そのため、希少価値が高く研修会の講師にもなりやすく、学会の査読や座長にもなりやすい傾向があると思います。
実際私も小児分野の認定理学療法士ですが、認定を取得してからすぐに研修会の講師を務めることができましたし、多くの理学療法士関連の学会の査読をさせてもらったりしています。これからの理学療法士に求められていることは多様性のある働き方だと思います。理学療法士というと病院の中で高齢者のリハビリを行うイメージばかりありますが、様々な可能性がある職業だと感じています。
メジャーな分野に就職し病院の中だけで成人を対象に働くことも良いと思いますが、少し視野を広げてみて小児分野を始めとした多くの分野に飛び込んでいくことが必要ではないかと思います。
まとめ
実際の臨床の理学療法士の意見は参考になったでしょうか?
現在の理学療法士に求められていることは多様性のある働き方です。様々な求人の中から理学療法士として自分はどのような働き方をしたいのか、そしてどんなやりがいをもって働きたいのかしっかりと自分の考えをもつことが大切です。是非、理学療法士になって就職先に悩んだときは参考にしてみてください。
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