統合失調症患者の既往に多い糖尿病、その看護アセスメントや関わるコツとは?

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#723 2019/06/04UP
統合失調症患者の既往に多い糖尿病、その看護アセスメントや関わるコツとは?
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日本では精神疾患を持つ方は少なくなく、そういった方がその他の病気にかかり、一般科で対応するケースも珍しくありません。その中でも糖尿病を併発している統合失調症の方は対応が困難になりがちです。そんなケースにもうまく対応できる方法やアセスメントのコツはどのようなものでしょうか。

 

精神疾患&糖尿病の対処方法

日本では、精神疾患を持ち通院・入院している方は300万人を超すといわれています。精神疾患を持つ方は身近に多くおられますが病院であっても例外ではありません。精神科に入院するケースは精神状態の増悪化に伴い、自傷などリスクが高まるケースや、他害行為などのリスクから入院が必要なケース、または認知のゆがみからくるQOLの著しい低下などが考えられます。そういった場合でなければ外来通院で問題なく地域に適応する事は十分可能です。

しかし、精神科通院をされている方がそのほかの病気を患う事は少なくありません。便秘や多飲などは精神科の治療過程においてポピュラーな症状ですし、高CPK血症や発熱、意識混濁など悪性症候群が生じてしまった場合は生命の危機に瀕する事もあります。精神疾患を持つ方々の中には、うまく対処行動をとることができなかったり、疾患を持ってしまう事で精神状態が悪化する場合も少なくありません。適切な治療や看護的な介入が求められるため、ケースごとに適切なアセスメントが必要なのです。

統合失調症を持つ方の中には糖尿病の方が少なくない

そのような精神疾患の方で、実は気を付けたい併発病があります。それは糖尿病です。統合失調症を持つ方が糖尿病を起こしているとき、その原因としてまず考えるべきポイントは内服薬です。抗精神病薬を使用していないかどうかは非常に重要な視点で、アセスメントの基本といえます。

抗精神病薬は主に統合失調症や統合失調感情障害、限定的ではありますが情動不安定なケースの双極性障害などで使用されます。近年は薬剤の副作用が少ないとされる非定型抗精神病薬と呼ばれるものが治療の基本となっていますが、その中のオランザピン(商品名:ジプレキサ)とクロザリル(商品名:クロザピン)で血糖コントロール不良となるケースが多く報告されています。

クロザリルは統合失調症の難治例患者にのみ適応される薬剤で、特定の病院でしか処方されていません。

そのため、一般科で目撃する事は少ないのですが、オランザピンに関しては統合失調症などの治療では使用される事が多い薬です。糖尿病になった時点で薬剤調整を行うので他の薬に置き換わる事になりますが、以前使用していた薬剤に含まれるという事は少なくありません。

 

糖尿病を併発している統合失調症の方のかかわりはなぜ難しいのか

なぜ統合失調症を持つ方が糖尿病を併発するとかかわりが難しくなるのかという事ですが、それは統合失調症の症状と相まって抗精神病薬の副作用による行動が止めにくいという事があります。

まず統合失調症の症状には陽性症状と陰性症状という主症状があります。
前者は幻聴や被害妄想、滅裂な思考などがみられ、後者はその反対に意欲の低下などから、自閉的な生活習慣が生じます。緘黙状態となりコミュニケーションが取れないケースもあります。それに加え認知機能の機能障害として実行機能の障害(段取りよく行動を行えない、変化に対しての対応力が乏しくなるなど)や注意力の障害、言語的な記憶力の障害が生じるとされています。これらにより、社会生活を送る事すら困難になります。

糖尿病を併発した場合に必要なことは、服薬・インスリン注射による血糖コントロールと生活習慣の改善です。

治療導入時には幻聴などに支配されると治療者側の言葉が入らない、もしくは覚えることができないため適切な服薬習慣を取ることができないといった事が起こりえます。また、陰性症状が強い場合は看護者主体で血糖のコントロールを行わなければ自らでは出来ない状態になります。そもそも実行機能の障害により、行動の変化が難しいので糖分を我慢するなどの行動がとりにくいケースも少なくありません。

オランザピンなどでは空腹感の増強と糖の取り込み促進が体の中で起きているので、血糖の取り込みが促進された体でさらに食事量の増加します。一週間に数キロ体重増加する事も珍しくありません。前述した機能の障害によって食事制限などのコントロールも難しく、結果的に対応困難となってしまうのです。

また、前述した多飲などを併発しているケースが多いのも注意するポイントです。

抗精神病薬などの副作用として抗コリン作用が生じるケースは多く、口渇感を持っている方が少なくありません。コーラなどの炭酸飲料が爽快であるという方は少なくないので、より糖尿病を悪化させていくことになります。

飲めば飲むほど喉は乾くため血糖値は悪化し、また多飲による水中毒など別の病態を様することになりえるためこちらにも注意が必要です。

どのような視点でアセスメントし、介入していくことが重要なのか

統合失調症の方が糖尿病を併発した場合、コントロール不良となりえます。しかし、適切な看護介入によりうまく病気と付き合うこともできないわけではありません。そのためには適切なアセスメントや介入が求められます。

身体的な側面としては、糖尿病に関するデータをアセスメントしていく事が重要です。

HbA1cなどの血液データだけでなく、食習慣や嗜好、過食に至る原因を把握することが看護者に求められます。総合的に把握した上で、どのような食事であれば問題ないかを本人を交えながら医師らと検討して、なるべくストレスのない治療の継続を支援することが重要です。

インスリン導入が必要なのか、経口薬でコントロールできるのか、はたまた食事療法だけでも良いのかといった治療の選択が迫られますが、本人の意向を踏まえながらサポートしていくアドボケイトの役割も看護者が担っていかなければなりません。

精神的な側面や社会的な面からの介入としては、治療関係の形成が何よりも必要です。

妄想などで人とのコミュニケーションがとりにくい中でも敵ではなく味方であると思ってもらう事が重要です。ただし妄想の対象となれば一人では対応せず別のナースに対応してもらうなどの工夫も必要です。場合によっては受け持ちを変えることも考えなければなりません。チームで対応する事を忘れずに関わっていきましょう。

その中で、日々の糖尿病治療の重要性を理解してもらうために何度も介入を試みることも大切です。絵などを交えて視覚的に見ていただけるような介入を検討する事や、口頭ではなく資料として渡してみてもらえるよう準備する事や、自分で上手に糖分が少ないものを間食として選べない方もいるので、間食や食事内容のサポートをする事が看護計画になります。アセスメントを行いどの程度の認知能力があるのかを把握する必要があるので、患者ごとに対応が変わっていくのです。

そのほかにも食事以外のレクリエーションなどを通し、食事をとる時間を少なくするなどの関わり方もあります。糖尿病というものに単一的に関わるのではなく、統合失調症の特性を踏まえながらの関わりが必要というわけです。

最後に、糖尿病をコントロールする意欲がないので間食などを取るわけではなく病気の一部という視点が必要です。前述したオランザピンだけが血糖に関する副作用が生じやすい訳ではなく、抗精神病薬ではどの薬でもある程度のリスクが生じます。薬によって図らずも患ってしまっているという苦しみに共感する姿勢が必要です。

食事は人が生きる上で重要な要素です。統合失調症の方は症状はもちろん、デポ剤などでもなければ毎日の服薬だけでも既にストレスを抱えています。その中で食事すらも変えなければならないとなれば苦痛を生じることは無理もありません。私たちが同じ状況であれば、同じようにできるのか。そういった視点を持って関わり、総合的に判断することが求められるといえるでしょう。

まとめ

以上が統合失調症の患者で糖尿病を併発しているケースでのアセスメントのポイントと関わりのコツとなります。使用している薬剤は何か、生活習慣はどのようなものであるのか、血液データなどから体の中でどのような事が起きているのか、なぜ糖尿病の治療がうまくいかなくなっているのかを把握して総合的にアセスメントする事、そして共感的な姿勢をもって接するという事が大切となります。ある側面だけでなく幅広い面からアセスメントしていく事、また共感的な姿勢で接するという事は看護の現場では常に求められるものです。近年多くの方が精神障害で苦しまれている現状からも、そのサポートを考えた看護の提供ができることは、看護師としてのスキルアップにも繋がり看護の質を向上するきっかけになるといえるでしょう。

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