発達障害をもつ患者さんは近年かなり増えています。患者さん自らが自覚できている場合であればある程度対応しやすいのですが、そうとは限りません。自覚のない方や発達障害児などであれば混乱などを引き起こしやすく、ケースバイケースで接する必要があります。そのコツを見ていきましょう。
発達障害の患者さんへの対応
発達障害は近年特に注目されています。15人に1人はいるとされていて、一クラスには何らかの障害を持つ方が1人から2人はいる計算となっています。病院においては外来、入院病棟を問わず小児科や精神科にて多く接する機会があります。しかし、その他の科でも発達障害をもつ方と接する機会は少なくありません。
しかも、本人だけでなく家族にそういった方がいるケースなど、多岐にわたります。そのような方とうまく接するための看護師としてのスキルを身につける事で、仕事を円滑に進めるチャンスとなります。
そもそも、発達障害とは?
医療従事者の方であれば一度は聞いたことがある発達障害ですが、発達障害者支援法によると「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定められています。
近年では大人の発達障害として
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- ASD(アスペルガー症候群)
も注目されていますが、これらの障害が持つ特徴として、主に社会に適応する中で様々な障壁にぶつかり、ある種の生きにくさを抱えやすくなっていると言えます。
それぞれの症状に応じて対応が異なるのが大きな特徴です。
どのような場面で看護師は関わるのか
具体的に看護師がぶつかる場面としては、小児科での発達障害児への看護の場面や、精神科での衝動性の高まった発達障害をもつ患者への対応、外来でその他の疾患を併発している場合で医療者の説明などに対してしっかりとした理解が至らないケースなどがあります。
本人だけではありません。家族に対して説明する場面などで、家族が発達障害者であるとうまく互いの意図が汲み取れずに適切な治療関係を築けなくなる事もあります。
なお、自ら診断を受けているなどの場合であれば本人が自身の傾向を理解できているので、病識がない場合より円滑なコミュニケーションが図れます。むしろ診断がない場合のほうこそ大変となりやすいと言えます。
発達障害をもつ患者との関わり方の方法、コツとは
発達障害をもつ方と言っても、生きにくく感じている原因は千差万別です。はっきりこれだという対応は無く、その都度探していく必要があるため難しいのですが、ある程度タイプに応じたやり方があります。特に多く接する機会があるのは前述したADHDとASDですので、まずはその方への対応力を身に着けることが発達障害の方とコミュニケーションをとるコツとなります。
ちなみにですが、発達障害には学習障害の方もおられます。しかし、認知的な面で大きく崩れているわけではないので対応にとても困るという場面は後述するADHDやASDに比べては少なくなります。
ADHDの場合
ADHDは注意欠陥・多動性障害というだけあり、注意力が散漫になるのと、落ち着きがなくなることが主な症状です。大人でこの症状が見られる場合、前者の症状だけが見られるケースが多くなっていますが、小児期での問題の場合、最も取り組むべき内容として衝動性のコントロール不良があります。
多動の場合、自らの行動をうまく抑制できず、座ってられない、落ち着かないということがあります。
また衝動性のコントロールができない場合は些細な事でイライラしたり、最悪の場合暴力性を帯びる方もいます。あまりに酷いと治療薬が必要となる場合も見られます。
ただ、認知的に歪みが大きく見られるわけではないので本人の苦手な事に沿う対応だけで治療関係が築きやすいのも特徴です。特性を活かしつつ、振り返りを密にして行くことでクリアできることもたくさんあります。
若干空気の読めない事はありますが、空気を読もうとする動作はされるのでその点でも話しやすいです。
また上の空である特徴から、説明方法も書面や図を用いる説明方法が効果的です。
紙などを無くしてしまいがちなのであれば物によっては電子データにするのも一つです。苦手なものを埋めていく関わり方ができる場面もあるため、関係を築き治療を進めやすい時もあると言えます。支持的でありながらも、看護師側である程度苦手な部分を埋めてできることを活かしていくことが良い関係づくりのコツです。
ASDの場合
ASDでは主にこだわりが強いことが問題となるイメージがありますが、実際は対人関係でのトラブルが大きな問題となります。話が一方的であったり、思ったことをすぐに言ってしまうため他者とのトラブルを引き起こします。また、こだわりが強いという面から派生して、変化を嫌うことがあります。それにより、予定の変化にも弱く、対応できないでパニックになる事もあります。
基本的に空気を読むという概念がなく、空気が理解できないのが特徴となります。
しかし、論理的な思考や特有の正義感がある事からそれらを理解した上での関わりでよい介入ができます。
繰り返しなどルーチンワークは得意なので、作業を覚えさせるとうまく行きます。また理屈っぽさもあるので、しっかりと説明することが大切です。日本語ではよく見られる曖昧さは理解してもらえません。額面通り受け取りやすいのも特徴的ですので気をつけましょう。
なお、こちらの説明に納得がいかないとひたすら自身の意見をぶつけてくることがありますし、時には過激な表現を使ってしまいがちです。
その特性を踏まえ、相手の言動に振り回されすぎないようにしつつ、行動を具体的にしていくことが必要です。道筋を立てることが治療を進めやすくするコツと言えます。
なお、発達障害は一つの診断であっても症状の程度がかなり異なります。これは発達障害という概念自体があやふやで、スペクトラムという連続体とされているためです。
そのため、ある障害と思われるのにその他の症状も見られるというケースがある事は理解しておきましょう。
時には医療者側がストレスに感じるかもしれませんが、その思いを相手にぶつけると相手は殻にこもってしまいます。関わる側もまたストレスに悩むことがありますのでうまくチームで対応するのもまた、重要なポイントといえます。
まとめ
発達障害の方とコミュニケーションを取ることは専門職である看護師でもなかなか難しい問題です。特に治療が円滑に進むように関わらなければならず、ただでさえ難しいやり取りが、さらに煩雑となります。しかし、これからの医療現場において避けることができない問題とも言えますので、このコツを使いつつここの適切な対応、看護に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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