年々増加傾向にある認知症。
病棟勤務でも介護施設での勤務でも避けては通れないのが認知症を持った患者様とのケアです。
何がトリガーとなるか分からず、お話をしても理解していただけないことも多々あり、精神的に参ってしまう職員さんも少なくありません。
今日は元々認知症を持つ患者様とのコミュニケーションが苦手だった私が認知症の方が多いフロアで勤務していく中で身につけた関わり方のコツをお知らせいたします。
意外と多い!?認知症を持つ患者様とのコミュニケーションが苦手な職員
医師でも看護師でも、介護士や看護助手などのワーカーさんでも意外と多い「苦手な患者様」が、認知症の症状がある患者様との関わり方。
私が学生の頃は基本的に実習で関わらせていただく患者様には大抵認知症の症状が強い方が多く、職員さんもソツ無く対応していたので認知症の方と関わることが苦手な人は職員というよりむしろ学生に多いイメージでした。
しかし実際に働くようになってみると、ソツなく対応しているように見えた職員さんの中には必死により良い対応方法を悩んでいる看護師さん・ワーカーさんが数多くいました。
「自分は平気だ」と思っていても予期せぬ言動を受けて対応方法に困ったことはありませんか?
まずはどんな時にどんな対応をしてインシデント・アクシデントを回避した行動ができるようになるのかというコツをご説明しましょう。
いつどのような症状が出やすいのかパターンを分析した上での行動を
認知症といっても症状は様々で、それこそ人それぞれです。
ですが、ある程度パターンの決まっている事象ってありますよね。
例えば「帰りたい症候群」などの名で呼ばれている夕方になるにつれて不穏になってしまう患者様への対応。
この場合は夕方になるとオムツ交換などと重なり職員の手も薄くなるので尚更患者様達の異変に気付く事も難しいですよね。病院や施設によって異なると思いますが、私の職場では夕方に業者さんから上がってくる洗濯物を畳んでいただくことで、
- 在宅と同じ事をしてもらうことで在宅で過ごされていた頃と少しでも同じように貰える
- 日常生活動作や残存機能の保持・向上に繋がる
- 洗濯物を畳むことに集中してくれる人であれば「帰りたい」という気持ちを少しでも逸らすことが可能
などのメリットがあります。
洗濯物って業者さんから上がってきたら時間のある時に手早く済ませたくなりますが、ケアの1つとして敢えて残しておくという手段も1つの方法なんですよ。
このように、パターンがある程度存在する事象には仕事の優先順位を変えてみる事で、それもまたケアの1つになります。
少しでもその人がその人らしくいられるような空間の提供を
認知症の方の中には見当識障害(自分が今どこにいるか分からない)や記憶の保持が難しい方など様々な症状を持つ方がいらっしゃいます。
入院初日はニコニコされていても、そもそも入院しているという事実を把握できていない、自分の知る家族もいない、見たこともない機械で身体を洗われて風呂に入った気分にもなれない、そんな場所に1人で放り出されるわけです。
生活のタイムスケジュールも病院や施設に合わせた生活になるので精神的にも不安定です。そうなると必然と認知症の症状も出てきやすくなってしまいます。
その為に職員が対応していけるコツは、ケアや処置をしている中でもその人が興味を持つもの、関心を示すものを見つける観察眼を身につける事です。
日々の業務に追われて余裕なんてない!という方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、その余裕がない分情報共有のも重要になってくるんです。
自分では引き出せなかった情報が他の人は手に入れているかもしれません。
トリガーになってしまうようなことがあれば、それを事前に知っておけばコミュニケーションで失敗する可能性も下げることができます。
また、ご家族が面会にきた際にさりげなく在宅での様子を聞いてみるのもコツの1つです。患者様のより良い対応方法を一番わかっている可能性の高い人は患者様とこれまで過ごす時間の長かったご家族やご友人です。
どんなに些細な情報だとしても、時としてケアに繋がる情報も含まれています。
なので普段から面会時には環境調整などをしながらお話するなど、ご家族とお話をするタイミングを作るように心懸けると良いでしょう。
認知症とうつ
認知症の患者様と関わっているとどうにも引き離せないのが鬱症状です。
元々は鬱症状を持っていなかった患者様でも、入院や入所生活を通してうつになってしまう方も少なくありません。また、認知症の方とのコミュニケーションがうまくいかなくて病んでしまう職員も多いのが現実です。
そんな中でうまくやっていくコツは、やはり「相手を知ろうとする事」です。
もちろん個人情報を保護できる範囲内ではありますが、意外と「相手を知ろう」と意識しないと相手の違った一面というのは見えてきません。
その違った一面を知る事で患者様が落ち込んでしまわれた時の声掛けも変わってきますし、職員が鬱傾向になりはじめている事にいち早く気付いて思い詰める前に周りに頼りやすい環境を作ることもできます。
患者様がご家族には見せたことのない一面を見せることもあるのが私達の職場です。ちょっとしたことがきっかけでケアの突破口が現れるかもしれませんね。
そういう意味でも普段から患者様や職員間でのコミュニケーションはケア上達へのコツの1つです。
患者様への傾聴を大切に!
患者様も認知症になりたくて認知症になったわけではありません。
ただ、患者様から見れば今起きている事象そのものが現実なのです。たとえ目の前が火事になっている、虫がいっぱいいる、そのような訴えをされても現実では確かに何も起きてはいません。
ですが、患者様からしたらそれは今現実で起こっていることであり、だからこそ職員に助けを求めるのです。
「そんなのないよ、幻だよ」と対応するのと「消火器の場所を知っているので私が火を消してきます、危ないのでここで待っていてくださいね」と対応するのではどちらが安心してもらえると思いますか?
対応1つでも患者様の精神的な問題や職員への警戒心はかなり変わってきます。
患者様の訴えをよく傾聴し、その中に何か疾患に繋がる要素が隠れていないか判断しながらコミュニケーションを取るのも、対応が上手くなるコツとして大切なことです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回ご説明したことはあくまでも基本的なことであり、そこから更にご自分の職場に合わせた対応方法を見つけていくことが重要です。
うまくコミュニケーションが取れなくて悩まれている時は、ぜひこの記事を読んで基本に戻ってみるのも良いと思います。
普段から職員同士でどういう時にどのような対応をしているのか話し合ってみるのもかなり有効ですので、カンファレンスの議題にしてもいいかもしれませんね。
少しずつでいいので、認知症を持つ患者様とのコミュニケーション技術をスキルアップしていきましょう!
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