糖尿病の有病者が1000万人を越える中、どの病棟でも糖尿病の患者さんがいらっしゃるのではないでしょうか?
糖尿病をコントロールするため、血糖測定は不可欠です。一度で正確に測定できればいいのですが、上手く穿刺できなくて失敗してしまうこともあるかと思います。最近では痛みの少ない血糖測定器が開発されていますが、そうは言っても少なからず痛みはあります。失敗しないためにどのようなコツがあるのか、ご紹介します。
糖尿病の患者さんの測定の失敗しないコツ
病棟やクリニックのどの科で働いていても、糖尿病の患者さまっていらっしゃいますよね。
手術の傷の治りが遅くなってしまうので、血糖値のコントロールをしなくてはいけない等、血糖測定をする機会も多いかと思います。患者さま自身が血糖測定をしている場合や、看護師が行う場合もあります。
しかし、高齢の患者さまや長年血糖測定をされている患者さまでは、指先の皮膚が固くなっていて血が出にくかったり、そもそも実施者が血糖測定に慣れていないと失敗してしまうこともあります。
血糖測定は、看護技術の中では基本的なものになりますが、学校ではなかなか実践練習をする機会も少ないかと思います。
私も糖尿病内科の病棟で働いていたときは、何度も血糖測定をしましたが、失敗して患者さまに謝ることが何度かありました。その経験の中で、失敗しないために行ってきたコツを、いくつか紹介したいと思います。
基本の血糖測定の方法
まずは、基本の血糖測定の方法を確認してみましょう。
- 実施者、患者さま共に手を洗い、物品を準備します。
- 穿刺部位を決定して、消毒します。
- 穿刺器具を当てて、穿刺します。
- 血液を絞り出します。
- センサーチップを当てて、測定します。
- 穿刺部位を止血します。
- 穿刺針とセンサーチップを破棄します。
以上のような流れで、血糖測定を行います。
その中で、失敗しないようにできるコツを、穿刺前、穿刺時、穿刺後にわけて紹介します。
穿刺前にできるコツ
穿刺部位を変える
穿刺する部位は、指先または手のひらが良いとされています。特に指先は穿刺しやすいので、選択しやすいのですが、同じ部位ばかりに穿刺していると、皮膚が固くなり次回からの穿刺が難しくなります。穿刺部位は、毎回変更するようにしてください。
例えば、今回は左手の親指、次回は人差し指等順番にすると、わかりやすくなります。
指先や手のひら以外にも、耳たぶで測定することも可能です。ただし、耳たぶは組織が薄いので、穿刺の際裏側を指で支えると貫通してしまい、看護師の指を針刺ししてしまう事故が起こる可能性があります。耳たぶを引っ張ったり、V字に折り曲げて穿刺するなどの工夫が必要です。
指先のマッサージをする
指先の血流が悪いと、穿刺しても血液が出てこないことがあります。指先の血流をよくするために、まずは穿刺する部位を優しく揉んでマッサージしてください。
穿刺部位を温めてみる
指先を温めることでも、血流を良くすることができます。特に寒い冬場や、夏場でもエアコンが効いていると指先が冷えてしまい、血流が悪くなっています。ホットパックを当ててしばらく待ってみたり、お湯に手をつけて温める方法もあります。お湯に手をつける方法は手軽ですが、温めた後、必ずしっかりと水分を拭き取って下さい。水分が付着したまま測定を行うと、血液と水分が混ざってしまい、測定値が低く出たり、血液が上手く球状にならず、センサーチップで吸入できなくなる場合があります。
グーパー運動をしてもらう
こちらも手先の血流を良くするために行います。患者さまに、手のひらを結んだり、開いたりを何度か繰り返すよう説明します。この時、手は肩より下げて行うと効果的です。
指先を駆血する
採血を行うときと同様に、指先を駆血して血を出やすくさせる方法もあります。駆血の仕方は、専用の補助具を使用する方法もありますが、ない場合は、輪ゴムを巻き付けて行うこともできます。
穿刺前に患者さまにしっかり手を洗ってもらう
清潔保持のために、患者さまには穿刺前に手洗いを実施してもらいますが、その他にも、穿刺前に果物等を手で食べていると、果汁が付着していて、穿刺して出した血液と混ざってしまい、測定値が高く出てしまうことがあります。それを防ぐためにも、しっかり手洗いをするように患者さまに説明してください。アルコール消毒だけでは果汁は拭き取れません。
消毒液をよく乾燥させる
「穿刺部位を温めてみる」でも触れましたが、穿刺して出した血液と水分が混ざると、測定値が低く出てしまいます。手洗いの後、手を乾燥させることはもちろんですが、穿刺部位を消毒した後もしっかり乾燥させることも必要です。特に、アルコールアレルギーの患者さまに、クロルヘキシジンを使用して消毒する場合、アルコールに比べて揮発性が低いため乾燥に時間がかかるので、注意してください。
患者さまが自己血糖測定をされている場合、消毒液を乾燥させるために息を吹き掛けていることがあるのですが、せっかく消毒して清潔になった穿刺部位に唾液が付着する可能性もあるので、手で扇いだり、振ったりして乾燥させるように、指導してください。
穿刺の際にできるコツ
穿刺器具を垂直に当てる
穿刺器具を指先に当てる際、斜めになっていると針が上手く刺さらず、血液が出てこないことがあります。指先と穿刺器具が垂直になるように、しっかり当ててください。
指先をしっかり固定する
指先が不安定な状態で穿刺すると、ぶれてしまって上手く針が刺さらないことがあります。
また、血糖測定に慣れていない患者さまだと、穿刺する際、無意識に怖くて指先が動いてしまうこともあります。
穿刺する際は、指先をテーブルなどにしっかり固定して、安定した状態で穿刺してください。
穿刺した後にできるコツ
指の根本からゆっくりもみ上げる
穿刺後、穿刺部位の周辺を押すだけでは、血液が出にくい場合があります。血液を出す際は、指の根本から、ゆっくりともみながら、血液を上げていくイメージで押すと出やすくなります。その際、強く押しすぎると、組織液が血液と混ざって、測定値が低く出ることがあるので、注意してください。
センサーチップを優しく当てる
血液が米粒の半分ほど出たら、優しくセンサーチップを当てて、測定してください。センサーチップの先端に血液吸入部があるので、押し付けてしまうと、穴が塞がってしまい、上手く血液が吸入されなくなります。そのため、センサーチップは垂直ではなく、斜めから血液に当てるようにします。
まとめ
血糖測定を簡単にできるコツを、紹介いたしました。全て行うと時間がかかってしまうので、患者さまの状態をアセスメントして、どれを実施するか選択してください。
紹介したコツは、看護師が血糖測定を行う際に使えるだけでなく、患者さまが自身で血糖測定を行う際にもアドバイスできるかと思います。
血糖測定は基本的な手技ですが、失敗せずに行えるよう少しずつ技術を習得してください。
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