急性期病院の第一線で活躍する救急看護師に必要な知識と技術。どのようなイメージをお持ちでしょうか。患者さんの命の瀬戸際に直面する場面が非常に多い部署です。
一体どうやれば救急看護師になれるのか?看護師として挑戦してみたい人は少なくないはずです。今回は救急看護師として活躍するためにその概要を説明していきたいと思います。
どうすれば救急看護師になれるのか?
施設により救急看護師への道のりは大きく異なると思います。
救急看護師も病棟看護師も免許は看護師免許に変わりありません。しかしながら国家資格だけでは現場の看護師としては当然ながらついていけません。
特に1年目で救急看護師として働いていくには毎日が自身の力不足を痛感し落ち込んでいくことと思います。救急看護師になる方法としては、
- 部署配属希望を提出する
- 他部署から(病棟、ICU,OPE室など)から推薦、抜擢される
などが主な救急看護師になるための道のりになります。病院施設によっては看護師経験年数を求められることもあるかもしれません。
なので1年目から救急看護師として働きたい意欲をもった学生は就職先の病院の条件指定などがないか確認することが必要です。
まずは救急看護師として働きたい意欲を病院側へしっかりと意思表示すること!それがシンプルですが救急看護師になるための第1歩です。
救急看護師の仕事とは
2次救急であろうが3次救急であろうが共通して言えることは老若男女問わず、さまざまな患者さんが24時間休むことなく搬送されてきます。
- 救急車で搬送されてきた患者さんの診療の補助
- 時間外診療で受診された患者さんの診療の補助
などが挙げられます。日中であれば他科から院内トリアージを依頼されたり、院内での急変事案などにも迅速に対応する、いわば「何でも屋さん」的な位置づけであると言えます。
専門科全てから相談を受けることの多い救急看護師には広く、そして深い知識が必要とされる所以です。病棟の様に患者さんの生活に合わせある程度決まったルーチン業務などは存在しません。いつ救急車の受け入れ依頼の電話が来るのか、他科からの相談がくるのかは予想できないのです。
診断がついていない患者さんも多く来る
ではそんな救急センターを救急車や時間外診療で受診する患者さんとは一体どういう状況なのでしょうか。
一つ言えることは患者さんの診断がついていないということなんです。
例えば病棟の看護師であれば、外来で発生した入院患者の受け入れや、検査目的のための予定入院など、診断がついていたり、ある程度予測する事態に対応しやすい状況にあるのです。
しかし一方で救急看護師が対応する患者さんというのは主訴が腹痛であれば内臓疾患だけでなく心臓を含む大血管系の疾患がどこかに隠れていないか疑って観察していくことが必要になってきます。
そのためにはありとあらゆる方向から患者さんの検査を進めていくアプローチが重要になってきます。
「この患者さんは肺炎診断だから呼吸器症状に焦点を当てよう」
と高を括った色眼鏡で患者さんを診ることはできません。常にどこかに疾患が隠れていないか疑いの目を持つ看護師でなければなりません。
救急はF1ピット作業に似ている!?
救急車搬送されてきた患者さんの診療に言えることなんですが、患者さんを4~5人のスタッフが一気に囲み、バイタル測定から問診、検査までの流れはまさにF1のピット作業に似ています。
各スタッフが各々の役割を即座に取り掛かり、患者さんを安定化させたのち、病棟、ICU、OPE室などへ送り出す作業はチーム医療という言葉が当てはまります。
医療は医師一人がどれだけ優れていても患者さんのベネフィットには繋がりません。チームで取り掛かり結果を出すことが重要なんです。一人では一人前の仕事しかできませんが二人なら三人前の仕事ができる!それがチーム医療なんです。医師は医師、看護師は看護師として各々の役割をしっかりと把握しそれが阿吽の呼吸で執り行えるのが理想の救急医療としての姿です。
救急看護師の大一番!
救急看護師の大一番の戦いとして挙げられるのがやはり心肺停止患者さんの対応になると思います。テレビドラマなどでもよくある、いわゆる心臓マッサージをしたり電気ショックを与えたりするアレです。そんな大一番を戦える看護師になるにはどのような知識が必要なのでしょうか。
二次救命に関する学習、講習は必須!
二次救命に関する講習会や、資格は各分野ごとに多数存在しており何から学習すればよいか悩む方もいらっしゃると思います。
まず必須であるのが、
- BLS
- ACLS
- ICLS
などの救命講習は受講すべきです。
心肺停止患者において基本的な心臓マッサージの技術以前に、なぜ心臓マッサージをすることが必要なのか?
医療者であれば理解できていると思いますが当然、脳血流量の確保です。よく誤解されているのが心臓マッサージをすることで心臓を動かして蘇生させるというイメージがテレビなどでは見受けられますが実際、二次救命においてはアドレナリンなどの薬剤を投与することで、心拍が再開することは稀ではありません。
しかしその後の社会復帰などの予後を含めた上で脳の蘇生が最大の課題となるのです。
前述した二次救命の講習会ではそういった基本的な蘇生方法から病院内でのチーム医療についての取り組みなどがガイドラインをもとに事細かに説明されています。救急看護師として必要な基本的知識が二次救命の講習会にあると言っても過言ではありません。
加えて、3次救急では
- JPTEC
- JNTEC
などの外傷初期診療を念頭に置いた講習会を受講することも必要になってきます。内科的な心肺停止に留まらず、高エネルギー外傷患者のショックの回避など救急医療における初期対応を学ぶことができます。
質の高い医療知識を蓄えていくうえでこれらの院外講習会の参加は必須です。
救急看護師はエビデンスを元に手を動かせ!
前述したような講習会受講後、資格を取得したとしても現場で患者さんを助けられるか?
答えは「ノー!」です。
それはいくら知識を持ったとしても体現する技術がなければ患者さんは助けられません。
例えば心肺停止患者さんに薬剤を投与したい!だけど静脈点滴ができない!酸素投与してもSpO2が上昇しない!あれ?気道が閉塞してるかも、開通させるにはどうすればいいんだろう!これら基本的な技術も慌ただしい状況では普段の思考回路が機能せず、手が止まってしまう経験をした看護師はたくさんいると思います。特に新人の頃は。
脈拍が感じられない、呼吸が止まりそう!と直感したときにすぐさま看護師として患者さんの胸に手を当て心臓マッサージをすることができる!とはっきり答えられる看護師になるにはやはりある程度経験を積む必要があります。
その看護師としての手を動かすために二次救命の講習会を学び知識とともに体得していくことが一流の救急看護師になるための方法なのです。助けたい気持ちがあっても知識と技術がなければ、医療者として体を動かすことはできないのです。
心肺停止患者を対応するにあたり看護師が必要とする技術として、
- 胸骨圧迫
- BVM換気(EC法)
- 抹消静脈路確保
- 気管挿管介助
- CV、UKライン確保介助
などが落ち着いて出来るようになればある程度の対応は可能になると思います.
当然ですが医療は日々進化しています。
今あるエビデンスが明日も同じエビデンスである確証はありません。
看護師として医療者として目の前の患者さんを救うために日頃からの鍛錬、学びは看護師である以上、生涯続くものであります。
まとめ
看護師国家資格を持ったとしても救急医療の現場では通用しません。
ACLS、ICLSなどの二次救命の知識と技術は当然持っておくべきスキルになります。
そして医療は日々成長し看護師も日々勉強の毎日の繰り返しです。
辛い時もあります。悔しい時もあります。
ただ目の前の患者さんを救うためには必要なことなのです。
二次救命の資格を取得し現場で体現し戦える救急看護師を目指していきましょう。
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