食事介助のコツ&気を付けるべきこと

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#656 2019/04/16UP
食事介助のコツ&気を付けるべきこと
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食事介助は、病棟や高齢者施設はもちろん、訪問看護やデイサービスなど、多くの職場で必要とされる看護技術です。

若手看護師が担当することも多い基本の技術ですが、実際は奥が深く、誤嚥などのリスクも伴います。

そこで、脳外科病棟で4年間勤務した経験から得られた、患者さんに安全・快適に食事して頂くためのコツをご紹介します。
 

食事介助の前に排尿・排便の確認を!

まず基本ですが、一連の介助を始める前に排尿・排便の確認をしておきます。

便意がある状態でゆっくり食事はできません。また食事中にトイレに行くのは患者さんにとっても看護師にとっても負担になります。

トイレの確認ができたら、ポジショニングを始めます。食事介助のいちばんのコツはまずポジショニングをしっかりと行うことです。

食事の際に姿勢が悪いと胃が圧迫されたり飲み込みにくかったりして、食べられるものも食べられなくなります。自分でも椅子にいろいろな角度で座ってみると、無理のある姿勢では食事ができそうにないことがよく分かると思います。

車いすや椅子に移乗して介助する場合

お尻が前に滑って浅い座り方になっていると胃が圧迫されるので、しっかり深く腰掛けるように調整する必要があります。

ベッド上で介助する場合

ギャッジアップする前に一度体をしっかりと上にあげておき、腰の位置を確認してから上体を起こす必要があります。
また足の高さを上げ過ぎると腹部が圧迫されるので気を付けてください。

中には最初にセッティングした姿勢を保つことが難しい患者さんもいるので、その場合は足元やお尻の周りにクッションを挟むなどして姿勢を安定させます。麻痺のある患者さんは特に麻痺側に傾いてしまいがちなので調整が必要です。

食事介助を行っている間、患者さんに比較的長い時間その姿勢でいてもらう必要があるので、辛い姿勢でないかを患者さんご本人にも確認します。

座り方が安定したら、頭部のポジショニングを確認します。

誤嚥を防ぐためには、できれば軽い前傾の姿勢をとり、あごを引くことが必要です。背中や頭の下に枕を置くなどして、あごが上がってしまわないようにします。
看護師の全介助でなく患者さんがご自分でも食器を使う場合は、机の高さも高すぎたり低すぎたりしないように調整する必要があります。

口腔ケアも念入りに!


次に口腔ケアを行います。食事前に口腔内の状態を整えておくことは忘れられがちですが重要なことです。

まず特別な理由やご本人の拒否がない限り、義歯は必ず装着します。ソフト食などの柔らかい食事形態だからといって、看護師の判断で義歯を装着しないことは食欲減退につながってしまいます。

そして、口腔内が不潔な状態でないかどうかを確認する必要があります。口腔内に痰や食物残渣の付着があったり、過度に乾燥した状態であったりすると当然ですが食べにくいので、必要に応じて食事前にも口腔ケアを行います。
嚥下体操などの誤嚥予防も食事前に行うことで効果を発揮します。

いざ食事介助!ポイントを紹介

いざ食事介助をする時は、忙しいからと言って看護師のペースにならないよう気を付けてください。

汁物をご飯にかけたりおかずを混ぜたりするのは、患者さんご本人の希望であれば問題ありませんが、看護師が時間短縮のために勝手に行うのは論外です。

ソフト食など見た目でメニューが判別し辛い食事形態の場合、分かるのであれば「これは〇〇です」と口頭で説明することで、患者さんが納得して食事をすることができます。

誰にでも食事に関するこだわりや好き嫌いはあります。これらのコツを守らないと、患者さんの食欲減退につながってしまいます。

介助中のポイント

介助中は患者さんの咀嚼、嚥下の様子を注意して観察します。

あご先が上がってしまわないように注意しながら、喉元がしっかり「ごっくん」と動いているかどうか確認します。特に嚥下障害のある患者さんの場合は一口ごとに口腔内を確認し、残渣がないか観察することが大切です。

むせが見られた場合はすぐに食事を中断し、誤嚥していないか確認します。咳嗽によって食べ物の気管への侵入が防げていればいいですが、誤嚥した可能性がある場合は吸引など迅速な対処を行う必要があります。

誤嚥がないかどうかを判断するひとつの手段として、患者さんに「あー」と声を出してもらう方法があります。

クリアな発声ができていれば問題ない可能性が高いですが、上手く声が出ない場合や、痰が絡んだ時のような湿性の声になる場合は誤嚥の可能性があるのですぐに対処してください。

ただしこの方法は指示動作ができる患者さんにしか使えません。指示動作が難しい患者さんの場合、この方法だけで判断が難しい場合は聴診やSpO2測定などを組み合わせて判断する必要があります。

誤嚥がなければ食事を再開することもありますが、その前に誤嚥しやすいような体勢になっていないかポジショニングをもう一度確認する必要があります。

ポジショニングに問題ない場合、食形態に問題があるかもしれません。刻み食・ソフト食・ペースト食など、どのような形態がその患者さんに適しているかアセスメントしながら介助する必要があります。同時に水分につけるとろみの程度も検討します。

また、高齢の患者さんの場合は特に、むせないからと言って誤嚥していないとは限りません。不顕性誤嚥の可能性もあることを頭に置いておく必要があります。

脳神経外科に多い顔面麻痺がある患者さんでは、患側の頬の裏などに残渣が溜まってしまいがちです。この場合、横向き嚥下(麻痺側を向いて嚥下する)ことで反対側(健側)の咽頭部が広くなり、嚥下障害が改善することもあります。患者さんに合わせた飲み込み方の個別指導も必要になってきます。

食事を終えたら、口腔ケアをきちんと行うことが重要です。

口腔内に残渣が残ったままの状態にしておくと誤嚥のリスクは高まります。義歯は裏側に残渣が入り込んでいることが多いので外してしっかり洗浄します。

ご自分で歯磨きができる患者さんでも、終了後に看護師が口腔内を確認し、必要に応じて仕上げ磨きをすることが大切です。中にはうがいの水を飲んでしまったり、その水でむせる患者さんがいるので、うがいの際は特に注意して観察する必要があります。

可能であれば、食事のあとすぐには身体を横にせず、しばらくは少し上体を起こした状態にしておくことが望ましいです。これは嘔吐による誤嚥の予防になります。

まとめ

食事は人間にとって大きな楽しみのひとつですから、食事を安全・快適にできるかどうかは患者さんのQOLに大きく関わってきます。

食事介助とはただ食べる行為そのものを手伝う事ではなく、食事前の準備から食事中のアセスメント・食事後のケアまですべてを含めた看護技術であるということを看護師が理解し、介助を行うことで、患者さんのQOLを向上させることができると思います。

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