90歳代の女性、脳血管疾患の患者さんです。後遺症にて、経口摂取が難しく、鼻からチューブを入れて栄養を確保する経鼻胃管チューブを留置している方でした。入院する前自宅で普通に生活しているようなADLで、現在は寝たきりの状態です。そんな患者さんのアセスメント方法をご紹介します。
脳血管疾患のアセスメントのコツ!
患者さんの自体は嚥下の状態が悪いから、経鼻胃管チューブを入れているというわけではなく、認知症による、認知機能の低下によって、食べるという意思が乏しい状態でした。いわゆる、食思低下ということです。下肢には、塞栓症により創もあり看護の面でも栄養状態の改善はとても必要な患者さんでもあり、スタッフみんなでアセスメントしていきました。
嚥下のアセスメント
まず、主治医の許可を得て現在の患者さんの嚥下の状態をアセスメントしていきました。病棟には専任の言語聴覚士さんがいます。患者さんの情報共有を行い、嚥下造影検査の結果、嚥下自体には問題が無いことがわかりました。
やはり、認知症によるものから、食べたいという意欲が無くなってきている状態であるようでした。しかし、声をかけると、目が合い、時々発語が出るような患者さんでもあったため、どうにか口から食べるという、人として当たり前のことを、私たちでサポートしてあげれたらと思い、看護していくことに決めたのです。
当たり前のことが、当たり前にできないことほど、人として悔しいことはないと、私は思います。美味しくご飯が食べれることって本当に幸せですよね。家族や恋人、親しい友達と美味しい食事を囲むことは本当に楽しいひと時であるし、大切な時間です。それは人間らしさでもあり、人間の基本的欲求の1つなのです。
摂食のアセスメント
次に病棟の専任の管理栄養士さんとも相談して、まずはゼリーから始めてみることにしました。様々な味のゼリーを日にちごとに試していき、写真や記録に残してアセスメントしていきました。実際に口からゼリーを食べる時には、認知症患者さんに有用とされるユマニチュードという技法を用いました。
ユマニチュードというのは、フランスのイブ、ジネスト氏らが考える技法で認知症患者さんと接する際のポイントを4つの柱の観点から関わっていく技法のものです。『みる』『話しかける』『触れる』『立つ』という4つの柱です。
当たり前のようで、日々の業務の中でもできていないことを、改めて考えさせられるきっかけになった技法です。私の働いている病棟は、特殊疾患患者さんが多く入院している病棟です。もちろん慢性的な病気が主となる患者さん達のため、入院生活も、何年、何十年とベテランです。病院が、もう生活の場となっているのです。
だからこそ、患者さんの反応が無くても、声をかけながら、1つ1つのケアを行うことが大切なのだと思います。いきなり流れ作業のように、声も説明もせずケアを始めてしまうことは、医療に携わるものとしてして欲しくないことの1つでもあります。忙しい日々の業務の中、心のゆとりもなく、時間的な余裕もなく、こなしていく中で、難しい問題であることは、実際に働いている身からして大変であるし、難しいことは百も承知です。しかし、そんな時だからこそ、患者さんと同じ立ち位置で、同じ目線になって接することが大切なんだと、私は思っています。
もし患者さんが自身の家族だったら・・・
もし、その患者さんが、自分の大切な家族であったら?と考えるようにしながら私は看護、ケアをするように心がけています。気持ちが大切です。
技術は後からついてくるものではないでしょうか?こんなひとに看護してもらえたらいいなと思いながら、あなたで良かったと言われるほど、この看護師という仕事をしていて嬉しく、幸せなことは無いと思います。それが看護師としてのいきがいです。そのためには、気づくこと、正常と、異常の違いがわかることがアセスメント能力を高めるために大切な一歩であると私は思っています。
今回の経口摂取でゼリーを食べようという試みも嚥下の仕方、ムセの有無、食べた後の呼吸音の変化など、観察点をあらかじめ、理解した上で行うこと。
異常がわからないと、何かあったときに、気づき、対処するという行動に移すことができないからです。
新人の看護師さんでも、あれ、何かいつもと違うとか、おかしいなと思う感覚は日頃から観察をしていることで養っておきたいポイントでもあると思います。きちんとアセスメントが出来ることで、先輩の看護師さんに報告できることにもつながりますし、スタッフ間の連携、情報共有の強化ともなっていけるからです。
一人一人のアセスメント能力の向上は、チームナーシングとしても効果を発揮するとともに、それは看護の質の向上にもつながるとても有意義なことであると、私は思います。
ホウレンソウは、こういうことが言いたいのだと思います。
アセスメントできれば、異常の早期発見、予防につながり、患者さんの命を救うことはもちろん、私たちスタッフのためにもなるのです。経験を重ねていくことで、より、アセスメント能力は、洗練されますし、気持ちにも余裕があることで、忙しい日々の業務の中でもユマニチュード技法を用いることで、さらにプラスアルファの効果がうまれてきます。
実際に声をかけながら、触れながらなどしながら、患者さんにゼリーの摂取を行なっていった結果、『おいしい』などの発語が増え、挨拶もお互いにできるようになりました。コミュニケーションが取れるようになってきたことは、嬉しかったです。
アセスメントのコツは、まず正常と異常を知ること。その違いを踏まえた上で患者さんと関わることが大切です。
私が新人の看護師だったころ、先輩の看護師さんに夜勤中に教えてもらった言葉があります。『困ったら、頭から足の爪先まで見ること!そうしたら必ず異常に気づくことができる』と。私はそれをモットーに日々患者さんと関わっています。
まとめ
・アセスメントのポイントは、正常と異常を知ること。違いがわかることで異常の早期発見、予防となること。
・それは患者さんのためにもスタッフのためにもなること。
・そうすることが看護の質の向上につながること。
・困ったときは、『頭から足の爪先まで見ること』をする!そうすれば、アセスメント漏れは無くなるし、アセスメント能力の向上につながること。
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