心肺停止患者と聞くと皆さまどう感じられますか?特に心肺停止患者を受け持ちしたことのない新人看護師さんは何をしてよいかわからず立ち往生してしまう・・なんてこともあるかもしれません。でも大丈夫です!重症患者における対応の際、自身で自身ののスキルを把握していればチームで患者さんに対応することで救える命があります!今回は新人看護師における心肺停止患者の対応についてのお話です.
救急外来での看護師の対応方法とコツ
「先生!HOTラインです!」
「50代男性 急に倒れて意識がなくなり救急隊接触時、橈骨が触れず、胸骨圧迫を開始したそうです!」
救急外来ではこんなフレーズよく聞くことと思います。そんな時に新人看護師の胸中は計り知れないほどの不安でいっぱいになっていることでしょう。
そんな不安を一つ一つ解消していくために心肺停止患者における対応を考えてみましょう。
心肺停止患者におけるもっとも大切なことってまず何でしょう?そうです、絶え間ない「胸骨圧迫」ですよね。
手順としてはC→A→Bなんて言われますが、一番大切なCはcirculationつまり循環のことを意味しますが、circulation(循環)ではなくcompression(胸骨圧迫)と覚えてしまっても構いません。
なぜなら心肺停止患者においての循環は胸骨圧迫によってしか保てないからです。
絶え間ない心臓マッサージにおいて脳血流を保持し患者の心肺を蘇生しようというものです。胸骨圧迫は5cm~6cmの深さ、1分間のリズムは100~120回で行い、胸をしっかりと元の位置に戻すという非常にシンプルなものになります。
BLSなどで一般人向けに行われる胸骨圧迫と病院で行われる胸骨圧迫になんら違いはありません。シンプルであると同時に質の高い心肺蘇生(以下CPRと記す)には絶え間ない胸骨圧迫は必須です。
この胸骨圧迫を新人看護師さんには是非行って頂きたいと思います。なぜなら胸骨圧迫は体力は必要ですが、人形を使ったトレーニングなども可能ですし知識がない新人にも行える手技だからです。
胸骨圧迫を勧める理由
では胸骨圧迫を新人に勧める理由を見ていきたいと思います。心肺停止患者が搬送されてきた状況を思い浮かべてみてください。救急外来の看護師にはどんな役割があるでしょうか。
大まかに考えてみると・・まず先ほどから述べている最重要な胸骨圧迫ですね。換気を行うために気管挿管の介助、薬剤を投与するための抹消静脈路の確保、波形確認のため除細動の装着、薬剤投与の時間管理、血液検体の提出などが挙げられるかと思います。
上記の役割を新人看護師が行えるか考えてみましょう。
気管挿管の介助
実際に挿管するのはもちろん医師です。
看護師は挿管チューブとスタイレット、マッキントッシュ(マックグラス)などを医師に手渡し喉頭展開する医師の補助が主な作業になります。
無事に気管にチューブが入るとチューブを固定します。固定もテーピング固定やトーマスチューブホルダーを使用したりなど施設により違いはあるかと思います。どんな方法でもかまわないのですが固定がしっかりしていなければ、チューブが奥へ入り込んでしまい片肺挿管になってしまう可能性もあります。
また、挿管後に「送気の音を聴診器で確認してくれ!」と医師からお願いされる可能性もあります。
言われても新人看護師さん困っちゃいますよね?「え?どこ聴診すればいいの?」となると思います。
挿管確認のためにはチューブの曇りやいくつかのポイントがありますがなかなかそこまでのスキルはないでしょう。以上の理由から気管挿管の介助はお勧めしません。
抹消静脈路の確保
心肺停止患者における抹消静脈路の確保は正中肘静脈などが推奨されています。
普段から行っている点滴注射と何ら変わりはありません。しかし想像して下さい。
胸骨圧迫されている患者さんの体が揺れに揺れている事。まず普通の業務では揺れている患者さんの上肢に点滴を打つことなんてありえません。失敗すれば薬剤投与の時間が遅れる、そして何より大切な血管を潰してしまう可能性もあるのです。
そんなプレッシャーがかかる手技を新人看護師に行わせて自信を無くさせてしまっては大変です。「こんな動いてる体の血管に針を刺すなんて無理だよ~やったことないし・・・」となると思います。以上のことから抹消静脈路の確保も新人看護師にはお勧めしません。
除細動器の装着
これはモニターで波形を確認し必要であれば除細動を行うためにCPRには必要不可欠な機器になります。電源を入れてリードを患者の体に3か所貼り付けるだけなんです。
一見簡単な手技になりますが、除細動器は電源を入れると初めの誘導がパドル誘導になって感度も一番低くなっていることが多いと思うんです。
誘導をⅡ誘導に切り替えたり、感度を上げたりなどは使い慣れていない新人には扱いきれません。また、ベテランになるとホットラインからの情報でVT、VF、徐脈などあればパットに切り替えてみたりなど、患者の情報によって使い方が変わってくるので予測して行動するのが難しい新人には不向きと言えます。
- 「え??電源入れて装着したのに波形が出ない?」
- 「先輩!除細動器が故障しています!」
なんてことになりそうです。ですから新人看護師にはお勧めできません。
ここまで救急看護師が行うCPRでの手技について考えてみました。ここまで述べた上でやはり、新人看護師には胸骨圧迫が行う上でベストな手技ではないでしょうか。
前述した手技は器具や機器を使用するため使い慣れるまでに知識と経験が必要になります。しかし胸骨圧迫は自分の両手があれば看護師でなくとも行える手技だからです。
胸骨圧迫のコツ
胸骨圧迫のコツをいくつか挙げてみたいと思います。
患者にできるだけ近づく
患者から自分の体が遠い位置にあると自身の体重がかけられず腕の力で圧迫することになります。ですから手技を行うときには前のめりになって腕に上体の体重をかけて圧迫することが大切になってきます。肘をまっすぐにのばす
上体の体重は重ね合わせた掌底付近に乗るように肘を真っすぐにのばすことが重要です。肘が曲がると腕の力で圧迫しようとするため質の高い胸骨圧迫は行えません。伸ばした肘を患者に垂直になるように圧迫し続けることが大切です。以上のように胸骨圧迫のコツは非常にシンプルです。あとはしっかりと医療者として今行える看護として両手に「魂」を込めることができるかどうかが最後のポイントです。
心肺停止患者などの重症患者にまず一人で対応することはありえません。人を集めて、チームで対応することが鉄則です。ですから新人看護師はチームリーダーに自身が行える手技について伝えることも重要です。先輩看護師からすると新人看護師のスキルがどの程度なのか把握しておくことが必要です。双方がお互いにコミュニケーションをとりながらチームとして臨むことが非常に大切になってくるのです。
まとめ
いかがでしたか?
新人看護師が心配停止患者を目の当たりにしたとき立ち往生することなくやるべきこと、できること、そして一番大切なこと。それが胸骨圧迫だと思います。積極的に人形などでトレーニングすることが可能ですし、何よりトレーニングすればわかると思うのですが、胸骨圧迫にはかなりの体力が必要です。日頃から鍛えておく必要がある手技と言えるでしょう。
心肺停止患者に即座に胸骨圧迫ができる新人看護師目指して頑張ってください。
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