看護アセスメントってちょっと面倒くさいな…と思っていませんか。電子カルテ化が進み、特定の看護診断のフォーマットがデーターベースに組み込まれているという病院も珍しくないかと思います。看護計画を立てるとき、なんとなく察しをつけて看護診断を選び、看護計画も立てていませんか。
今回は看護過程、アセスメントってなんだろう、を筆者なりに紐解いてみたいと思います。
患者さんの近くにいるからこそ得られるSデータ、Oデータ
みなさんご存知のとおり、看護アセスメントはSOAPで表される看護過程のうち、Aにあたる部分になります。
Sは主観的情報、Oは客観的情報をそれぞれ情報収集する部分にあたりますが、アセスメントの重要性を語る前にまず、この情報収集がとても大切になってくるのです。
- 「情報収集をしながらすでに頭の中ではアセスメントを行うこと」
- 「必要な情報は目的意識をもって拾ってくること」
が大切だと考えます。その理由はこれから2つの事例を通して解説していきたいと思います。
2つの事例から見るアセスメントの大切さ
筆者は以前、外科病棟で勤務していた経験があります。
がんを患い、手術や化学治療を行う目的で入院してくる患者さんが多い病棟でした。術式や、抗がん剤、放射線を用いた治療計画に関してはプロトコールが決まっているため、治療に沿った看護計画、予想される副作用や合併症なども患者さんが入院される前からある程度予測がつくものが多く、疾患とその治療に伴う看護はある程度標準化されていた印象があります。よく聞くクリティカルパスなどはまさにその典型ですね。
しかし、筆者が勤務していた病院では大学病院だったため、特定機能病院としてのその役割柄か、主疾患以外に既往症を持った患者さん、より高度な治療が必要で他の医療機関から紹介をされた患者さんが多くいました。
1つめの事例を紹介します。
消化器がん+糖尿病の患者さんへのアセスメント
全身麻酔で消化器がんの局所切除をする患者さん、既往症に2型糖尿病があるケースです。
普段はインスリン自己注射を用いて血糖コントロールを行っています。
しかし、手術で消化管病変を切除するため数日間の絶食が必要となります。その間の血糖コントロールはどのようにしたらよいでしょう。
他科が充実している大きな病院では、代謝内科にコンサルテーションを行い、入院中の血糖コントロールについては専門医から指示を仰ぐことができます。しかし、看護師が看るのは術前、術後を通したその患者さん、そして患者さんの生活です。
患者さんが入院前、日常生活でどのような食事管理を行っていたのか、インスリンの自己注射はきちんとできていたのか、術後、自宅での食生活を再開させる際に不安に思っていることはないか、など、入院中の血糖コントロールにとどまらない問題がたくさんありました。
ヘビースモーカーの患者さんへの呼吸訓練アセスメント
2つめの事例です。
もともとヘビースモーカーの患者さんが、開胸手術を行うことになりました。当然ながら術前術後の計画的な呼吸機能訓練が必須です。
患者さんは一見、それを理解して一生懸命に呼吸機能訓練に取り組んでいるように見えました。しかし、筆者が病室を訪れるとき、患者さんは不在のことが多く、「どうしたのかな」と疑問に思っていました。
他の病棟スタッフに確認しても、廊下を歩いて、エレベーターに乗ってどこかに出かけているようだ、という話は聞きますが、いつも数分で戻ってくるというのです。
手術を2日後に控えても不在がちな様子は変わらなかったため、気にかけて様子を見ていると、病院の施設外で喫煙していたという事実が発覚したのです。
これについては、喫煙がルール違反、という病院規則による問題もあります。
しかしそれ以上に、手術の説明を受けて同意書にサインをしてもなお、病気や手術をすることに対する患者さんの思い、不安という部分が拭いきれてはいなかったという事実が明らかになったケースだと考えました。
患者さんと初対面の際には、気さくで、明るい40代の男性という印象で、思ったこと、気になることが表出できないようなタイプの方だとはお見受けしませんでした。しかし、手術のこと、仕事のこと、退院後の生活のこと、外来通院や主治医には話せなかった思いがあったのだと改めて思ったのです。
以上2つのケースから考えられるのは以下のようなことだと考えます。
1つめの事例からは、2型糖尿病であるという事前情報から入院後に収集すべき情報を類推し、それにそったアセスメントを行うことが大切であるということです。
○○の疾患を持った患者の看護、には当てはまらない情報がたくさん出てくるはずです。
そして2つめの事例からは、看護師自身が感じた細かな気がかりを大切にするということ、病室にいないのはなぜだろうと思ったら、それを流さずに留めておきアセスメントし続けることが必要であるということです。
アセスメントの活用方法
このように考えると、看護過程はSデータ、Oデータとアセスメントというように分けて考えられるものではないように感じられます。
患者さんに会う前に、患者さんの基本情報から得るべき情報を予測しておくこと、相反することかもしれませんが、それと同時に、患者さんの人物像、考えられる問題をこうと決めつけず、柔軟に感じ取る看護師自身の感性が大切ではないかと思うのです。
患者さんと接しながら、触れる情報から、常にアセスメントしつづけること、その姿勢が必要なのではないでしょうか。
看護はチームで行うものですから、自分だけの頭の中に留めず、こまめなアセスメントを看護記録に残すこと、患者カンファレンスなどで他のスタッフに情報を共有することもとても大切だと思います。
実際に看護として患者さんに影響を及ぼすものはSOAPのPの部分、看護計画にあたりますが、S、O,そして特にAの部分が重要であるということを改めて感じられたのではないでしょうか。
看護師のこまやかなアセスメント次第では、医師や管理栄養士、理学療法士や、作業療法士など、他職種を巻き込んだ看護計画を立案することも可能であり、看護師の専門性が光るところであるといっても過言ではないと思います。
まとめ
看護師が日常的に行っているアセスメントは日常の看護活動の中でとても重要なカギです。それは日々提供する看護の下に潜む、縁の下の力持ち的な存在ですが、その根拠となる看護の柱となるものだと思います。情報収集、アセスメント、看護計画の流れを分断することなく、丁寧に見直してみてはいかがでしょうか。他職種と連携して提供する医療の質が上がるのも看護アセスメント次第かもしれません。
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