回復期病棟では、病態に応じて入院期間が決まっています。しかし、日々病態とともに看護診断や介入方法など検討すべきことがあり、その為に様々な情報をとっていく必要があります。在宅復帰するために、何が必要なのか、どうすれば在宅復帰できるのか、また在宅復帰出来ない場合の今後はどのように取り組むのか、考えていく必要があります。
在宅復帰のアセスメント事例紹介
脳梗塞で寝たきりとなり、半身麻痺状態。気管切開、胃瘻での栄養注入中。意識不明瞭にて、本人からの情報は急性期病院からのサマリーのみです。
入院時から1ヶ月間までのアセスメント
入院時には医師、リハビリスタッフ、看護師、ソーシャルワーカーでの在宅復帰へ向けた介入方法を話し合います。またご家族からも情報を聞きながら、医師より現状をお話しします。
私は看護師として、NANDAを用いて、嚥下障害、移乗能力障害、排泄セルフケア不足、摂食セルフケア不足、入浴・清潔セルフケア不足、便秘、皮膚統合性障がいリスク状態、転倒リスク状態といった看護問題を挙げ、スタッフで介入していきました。特に、看護診断とともに、指標や尺度、2週間ごとの評価をカルテに記入し、誰でも見ることが出来るように心がけました。
在宅復帰へ向けた関わり
回復期病棟では入院できる期間が病状によって決まっています。そのため、在宅復帰出来ない場合の関わりも頭に入れ、ソーシャルワーカーとも連絡を取り合っておく必要があります。
入院1ヶ月を過ぎ、これまでのアセスメントを振り返りながら、今後についてチームで話し合っていきました。それまでは誤嚥性肺炎や尿路感染への観察・看護や栄養状態の管理(食事介助等)をメインに関わっていました。
他にも、リハビリスタッフとも協力し、日中覚醒・離床を促してみたり、皮膚状態の観察、日内変動や疲労に対するスケジュール調整なども行いました。今後問題になってくるものとしては、食事や排泄、皮膚障害があります。
食事に関して
現状としては、上肢の機能が伸びず、入院時から停滞していて、自力摂取は難しいです。
本人がしっかり認識して目的がわかっていれば上肢の動きが出ることもありますが、高次脳機能障害の為、難しい。気管切開しているため、スピーチカニューレにして、リハビリスタッフによる介入にてまずは摂食練習開始しました。看護師も介入方法を見守りながら看護師でも出来るように指導してもらいます。
その為、段階を見ながら、リハビリスタッフがメインで介入し、その後看護スタッフも介入予定としました。
排泄に関して
2日おきにトイレ誘導し、排便をトイレにて促せるよう介入しました。その後、トイレで排泄見られることがありますが、排便日だけでなく、リハと一緒に看護スタッフも一緒に介入し、病棟でも1日に何度かはトイレ誘導出来るよう試みています。
トイレ誘導していく中で、尿意がしっかり出てくれば良いなという考えです。
トイレ動作確立に向けて、車いす⇔トイレやベッド⇔車いすトランスも含めて、トランスの仕方の再検討をリハスタッフと行っています。
本人の日内変動もあるが、上肢の動きも取り入れた介入方法を適時していけたらと考えています。また、家族への指導も適宜行い、現状を把握してもらいながら、在宅を見据えた介入を行っています。
皮膚状態について
入院時よりプロペトで処置中で、大きな皮膚障害はみられずにきましたが、栄養状態の悪化やリクライニング車いす使用しての離床、オムツ内排泄等も重なり皮膚状態悪化しました。栄養状態については介助の甲斐もあってデータも上昇傾向となりました。
リクライニング車いす使用については体位交換時も頚部が体幹についてくることが少なく、通常の車いす座位時も日内変動はありますが、頚部後屈がみられることもあり、リクライニング車いすはまだ外せないと考えます。座位時間としては1時間30分が臀部にとっては限界のようです。
トイレ誘導やリハビリ、看護スタッフの関わりなどでの臀部の除圧を図ったりで日々観察していけたらと考えています。
在宅復帰出来ない場合の今後の関わり
もし在宅復帰できないと考える場合、施設入所などを検討していかないといけません。
しかし施設では、回復期病棟のようなリハビリも看護も行えない可能性が高いです。特に気管切開しているため、カニューレを外して食事を介助してでももらえるのかなど、現在の状況とはとても変わってきます。
少しでも今やっていることを継続してもらうためには、カニューレを外す試みが必要となってきます。
そのため、医師やSTスタッフと相談しながらタイミングを見てカニューレを外し、全身状態の観察・アセスメントを日々行っていきました。
すると、日内変動や疲労なども影響し全量摂取できないときもありますが、練習の成果も徐々に出てきました。食事時間の経過と共に、咀嚼・送り込み停滞なとってしまい、誤嚥リスクが高くなりました。そのため、疲労となりやすい入浴時間の変更や食前のリハビリの休息などを行うようにしました。
しかし、家族の協力なくして在宅復帰は難しいです。
特に寝たきり状態ではそうです。その為、事前にソーシャルワーカーと医師と一緒に施設検討や施設見学を家族にもお願いしました。また、なぜ施設入所しなければならないのか、家族の不満もあります。それを防ぐため、患者さん自身の現状をしっかり把握し、家で介護が出来るのか、判断してもらいます。
もちろん、その際は担当スタッフが付き添い、リハビリでの現状、日常生活での現状は看護師が、病状については医師がお話しします。上記でも書いたように、回復期病棟での入院期間は決まっています。それまでに出来ることを行い、在宅復帰出来ない場合も考えながら連携をとっていかないと、手遅れになってしまいます。
まとめ
急性期病院とまではいきませんが、回復期病棟でも病態の変化があります。また急性期病院とは違い、リハビリに重きを置くので、目に見える変化がみられる場合があります。
今回のケースのように気管カニューレを脱管するために、日々の病態の変化、アセスメントがとても大切になっていきます。脱管するタイミングや脱管したあとの病態の変化は日々そばにいる看護師が観察・アセスメントしながら状況を医師やリハビリスタッフと相談し、問題点を検討します。
またトイレ介入や皮膚状態の観察についても看護師の情報を他職種は大事にしてくれています。在宅復帰できない場合もソーシャルワーカーと相談しながら話を進めていきます。
看護師は患者さんや家族にとって一番寄り添えるスタッフだと考えています。その為、日々アセスメント力を発揮していかなければなりません。
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