認知症患者の転倒、転落に関するアセスメントのコツと実践

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#624 2019/03/21UP
認知症患者の転倒、転落に関するアセスメントのコツと実践
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私が勤めていた病院は田舎にあり地域に根差した地域密着型医療を目指しており、そこに住む高齢者の方が多く入院されていました。
そして、高齢者の方と『認知症』という病気は切っても切り離せない関係にあります。防ぎようのない高齢に伴う疾患の一つだからです。今回はその、認知症が原因で起こりうる事故に関するお話を少しさせていただきたいと思います。  

 

認知症の患者さんへのアセスメントをどうやって行う!?

私の働いていた病棟は一般病棟で、まず第一に入院してくる患者を情報収集、アセスメント、対策、家族の対応、書類整理などの内容で行っていました。

その中で高齢者という事で前述したとおり認知症を患っている可能性は外せません、他院からの転入が多かった当院は、他院での患者の生活やADL、治療後の経過や既往歴など、また実際に患者と会話をして判断能力の有無や、認知力、記銘力といった項目の情報を収集し、アセスメントへとつなげていかなければなりません。

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)というものがありますが、入院直後には行われないため、認知症の有無の判断が必要でした。

これらの情報をもとに、適切な医療、看護を受けていただくために必要な医療器具やマットの選定、簡易式トイレの使用の有無などの準備を行います。そして、今回のお話の核である転倒、転落へのアセスメントは始まっています。

情報収集の段階から、転倒、転落のリスクを考える

認知症がなぜ転倒のリスクとの関係があるのか?

それはまず、その症状、記銘力の(記憶力)低下に起因します。

これがあると自分自身のADLがどのような動きまで可能なのか?という事が理解できません、

できていても忘れてしまうのです。これによって、人間の基本動作である歩くという、今までに普通に行ってきた動作ができない状態、という事が理解ができなくなってしまいます。骨折を起こしていても、痛みを忘れてしまい歩こうとする患者さんもいるほどです。

そのため、入院時に認知症の発症の有無、というものはとても重要であるといえます。

その判定方法としては、

  • 『日常会話が円滑に行えるか』
  • 『目線を合わせて話せるのか』
  • 『話の辻褄は合うか』
  • 『他院での問題行動(転倒歴など)』
  • 『他院でのHDS-Rの検査結果』
  • 『既往歴で骨、筋系に関する疾患がないか』
  • 『四肢の状態の異常はないか』


などの項目を確認します。その上で必要な物品を揃えます。

必要物品の用意


当然の事かとは思いますが、認知症の患者でも体動の有無でその物品が必要かどうかがかわってきます。ここでは、使う物品の一覧と、事例を一つあげ説明していきたいと思います。

  • マットレス(通常のものと、体圧分散機能の付いたもの、エアーマットレス)
  • すべり止めマット
  • センサー(立てかけ式、マット式)
  • 手すり付き(介助バー付き)ベッド
  • 簡易式トイレ(大きめのもの)


などを用意する必要があります。

脳梗塞患者さんの事例

80歳 男性 脳梗塞にて左片麻痺を発症、認知症を患っており、手引き介助での歩行が可能という患者がいたとします。

その際に用意するものは、マットレス(体圧分散機能の付いたもの)、センサー(マット式)、手すり付きベッド、簡易式トイレ(大きめのもの)という事になります。

このようにすべて使用する、というわけではなく、必要に応じてこの中からも取捨選択する必要がある、という事です。

人の行う看護のにも限界があります、60人もの患者を2人の看護師だけで管理するというのは不可能なので、必要な時には機材、医療機器を使用することは必ずと言っていいほど必要になりますので確かな知識と、操作方法の把握が必要になります。

アセスメントと、実践

上記事例の患者、なぜその物品が必要なのかというところからアセスメントの解説をしていきたいと思います。

80歳であり年齢的に高齢者であるといえます、前医からの診断で認知症も患っていると診断されているため、認知症の症状が出現する可能性が非常に高いと判断できます。

このことから、医師や看護師からの説明に関して最悪の場合理解ができない可能性がある、という事を考えなくてはいけません。よって、患者への説明、了承を得た後にセンサーの取り付けを行う必要性があると考えられます。

また手引き歩行での歩行が可能という状態、これは自力での歩行が難しいと、逆に判断できるため認知症の症状も相まって、単独での歩行を行い転倒する可能性が非常に高い状態という事が考えられます。よって、センサーの使用、また介助バー付きのベッドの使用、簡易式トイレの使用を要する状態と言えます。

マットレスに関しても、脳梗塞に伴う四肢の動きの制限(左片麻痺)のある状態で普通のマットレスを使用することは、褥瘡(床ずれ)を起こす可能性も高くなるため、またエアーマットレスの場合には座位を取った際に不安定になることから転倒のリスクが高まると考えられますので、ここでは、体圧分散機能の付いたマットレスで、褥瘡予防を行いながら、転倒も予防する方法が得策であるといえます。

このように、実際起こりうるであろう可能性の中から、それぞれに合った対策を行っていくことが転倒予防を実現する要因になると思います。

そして、日々の患者の性格や、行動、言動などからも転倒に関する情報を得ることも可能です。閉鎖された空間からのストレスから、帰宅への強い意志を口にする患者もいます。ここが家だと勘違いして動き出そうとするような症状が出たり、病院だという事を認識できない患者も、日中の覚醒状態の変化からも患者の動き方の傾向(いつ動いて、どこまでの動作が可能なのか)ということも情報としては必要な事だと思います。

このように、アセスメントのコツしては、より多くの情報をどのように患者にあてはめるのか?という点にあると思います、そのためには知識が必要となり、疾患に対してどのような症状がでて、どういったリスクがあるのか?という事を理解することが大事になってきて、実際にどういった対策が必要だと決定することが正しいアセスメントを行う上で必要になると考えます。

まとめ

今回は転倒に関しての事例や、対策についてのお話をさせていただきました。しかし、アセスメントというものの基礎はより多くの情報をいかにして収集するか。

その情報を病気や症状とどのように結び付けていくのかということ、そしてリスクに関しての対策(過剰に反応していいと思います)にどう繋げていくのか、という事にあると思います。転倒のみならずどのような看護の場でも同じような考え方が必要になってくることだと思います。

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