看護におけるアセスメント~高齢者の転倒転落防止に関する事例

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#610 2019/03/07UP
看護におけるアセスメント~高齢者の転倒転落防止に関する事例
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高齢の患者様が入院された時、病気の治療と共に必要になってくるのが環境整備などの安全への配慮です。しかし、対策をやっていたはずなのに患者様が転倒されてしまった‥という事例も私も多く経験してきました。その中で私が感じたのが、リスクをアセスメントする力が足りなかったということです。今回、私が体験した事例をふまえ、アセスメントすることの必要性やアセスメントすることの魅力について記載したいと思います。
  

アセスメント事例と経過

事例

80歳男性 肺炎で入院。
元々ADL自立だが、発熱による身体的疲労感強く現在ADL全介助の状態。認知症のような明らかな症状は今までになし。年相応の物忘れはあり。頷きなどの疎通は図れナースコールはできる。家族の希望で個室入院。

経過

治療により発熱改善し、ベッド上で頭を起こしたり、足を動かしたりする状況がみられている。入院後、夜間不眠で日中寝ておられることが多くなっている。
この患者様を看護させていただく際、転倒転落防止に注目したアセスメントと対策を以下の三つ考え、看護展開していきました。

アセスメントと対策方法

せん妄をどうやって対策するか?

転倒転落の可能性として一つ目に考えられたのが主に状態が安定しない急性期に注意が必要なせん妄の発生です。

発熱による身体的苦痛、入院という環境の変化によりせん妄を起こす可能性があり、ベッドからの転落が予測されました。そして家人から詳しく、入院前の患者様の認知機能や性格、ADL等情報収集をし高齢患者様は身体的苦痛や環境の変化によりせん妄になりやすい状況を家人に理解していただき、必要に応じて個室ではなく詰め所近くの見守りが可能な部屋に移動していただくこと、転倒防止のためのセンサー類を付けさせていただくことへの了承を得ました。

実際に患者様の転倒転落リスクが高いことが予測されるうちは、詰め所近くの個室に部屋を移動し、センサーを使用させていただきました。

活動範囲が広がることへの対応

二つ目は元々ADL自立の患者様であったため今後身体状態の安定により徐々に活動範囲が広がることが予測されることです。しかし、高齢者は数日のベッド上生活であっても筋力低下が著しく起きてしまうので、一人での行動は転倒のリスクが高いと言えます。疎通は図れるので、もしもトイレに行きたい等の希望がある場合はナースコールを押して呼んでいただきたいことをお伝えしますが、自尊心や遠慮などから、一人で行動されてしまう可能性があることをアセスメントしました。

夜間の休息を多く行うための対応

三つ目は昼夜逆転傾向にあることから日中の覚醒や促しや睡眠への援助が必要となりますが、状態が安定しないうちは車いすで散歩やテレビを見るといった日中の覚醒を促す援助に限界があります。そのため夜間の休息を得られるようにすることが必要と考え、主治医に相談し睡眠剤を投与することになりました。

しかし、高齢者への睡眠剤投与をする際はせん妄やふらつきによる転倒へのリスクが高まることをアセスメントし行動をしなければいけません。そのため睡眠薬を使用開始となった日はより頻回に病室へ行き患者さんの状態を観察し、転落を防止するためにベッドを壁側につけ、ベッド下には緩衝マットを敷くといった対策もとりました。

そして入院から数日経過し、発熱は改善しているものの睡眠薬を使用してから2日目の夜、突然センサーが鳴って病室へ駆け込むと、患者様がベッド上で立っておられる姿を発見しました。

患者様は「夢をみていました」と今にもベッドから倒れこみそうな状態でした。

対策をとっていなければ、確実に転倒転落となり、骨折など患者様の身体損傷の可能性もあったためきちんとアセスメントを行い、予測を立てて行動することの必要性を感じました。

アセスメントには終わりがない

アセスメントは対策をすることで終わりではありません。この患者様も対策によって転倒は防止されましたが、日々状態は変化しています。身体的、精神的状態が改善していく過程で、必要のない対策も出てくると思います。センサーや壁付けのベッド、緩衝マットや詰め所近くの部屋、患者様の転倒予防としてとっていた対策も状況が変わればそれは身体拘束となり患者様に苦痛を与えてしまいます。対策を取り除く際も再びアセスメントが必要になってきます。

今、この対策は本当に必要か、日々の患者様の言動や治療経過から看護の仕方も変えていかなければいけません。

上記のような事例を踏まえ、私なりのアセスメントをするときのポイントを四つにまとめました。

アセスメントをする際のコツ&ポイント

情報収集

一つ目は情報収集をきちんと行うこと。情報がなければ、必要な観察をすることも、アセスメントをするポイントも絞る事ができないからです。現在の状態だけではなく、入院前の生活はどうであったかを知る事は今後の経過予測を立てていく上でも必要になる情報だと思います。

知識

二つ目は知識をつけることです。経験は年数を積まなければ得る事はできませんが、知識は本で調べたり先輩看護師の話を聞くなどして沢山得る事ができます。看護をする上で無知ほど怖いものはありません。知識があればあるほど、できる看護の幅もきっと広がり仕事の楽しさも感じられるようになると思います。

複数の目

三つ目は一人の看護師の目ではなく、複数の看護師の目から意見を得て対策を得られるようにカンファレンスを積極的に実施することです。自分では気が付かなかった沢山の意見が出てきて目から鱗の状態になります。カンファレンスをすることは緊張感もありますが、やってよかったと患者さんへ良い看護が提供できたらきっと思えるはずです。

日々状態変化への対応

四つ目は患者様の状態は日々変化することを常に意識し今の状態から次起こりやすいリスクを考えていくこと。そして本当にその援助が必要かについても考えていくことです。当たり前に実施しておられることかもしれませんが、私は情報やアセスメントを整理し次の勤務者に繋げるためできるだけ記録をSOAPで記載するように心がけています。患者様をきちんとみて、日々必要な変化のある看護を提供できることは患者様との信頼関係を築くことにも繋がっていくと思います。

まとめ

日々患者様を観察することが看護師の仕事ですが、ただ「みる」だけでは看護とは言えないと思います。知識を持って、次に起こることを予測し行動していかなければ患者様の安全も命も守れません。アセスメントをすることは患者様のより近いところで関わっていける看護師が発揮できる最大の看護の魅力ではないかと思っています。

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