小児科には摂食障害の子どもたちもたくさん入院してきます。小児科の知識だけではなく、精神疾患の知識も必要となり看護師としては知識も技術の必要な難しい症例となります。そんな摂食障害の子どもにかかわった事例をご紹介していきます。
摂食障害の患者さんへの看護師の対応方法
小児科に就職したとき、先天性の疾患や感染症の病気で入院する子どもたちが多かったけれど、それに混じって思春期の摂食障害の子どもたちも非常に多かったのが印象的でした。小児科というのは、基本的に中学生までを対象にするところですが、小さいころから診察や治療を受けていて、その継続で成人してからも小児科でフォローするということも少なくありません。また高校生になってからも小児特有の病気にかかることもあることから、明確に小児の入院対象年齢は定められていないことも多いのです。
そんな中、私の勤務する小児科には、小学生、中学生、そしてまれに高校生の摂食障害の問題を抱えた患者が入院をしてきました。そこで私が受け持ちになったのが、女子高校生でした。デブと思われるのが嫌だ、痩せたいという希望から、だんだんと食事量が少なくなり、それと同時期に、祖母が食べ物の誤嚥で救急搬送されたことをきっかけに、食べること自体が怖くなってしまった患者でした。
入院当初から、食べるものを見るのも嫌だ、怖いという衝動にかられ、食べることは拒否。脱水も著明となり、点滴をずっと継続していました。その間カウンセリングを受けながら、何とか経管栄養でカロリーや栄養を補うことには納得し、徐々に胃は食べるものを受け付けるようになっていったのです。ただし、精神的には、やはり食べることに対する恐怖感はあり、口から摂取することは困難でした。経管栄養も口からは怖いし、ずっと管を入れておくのは嫌だからという理由で、鼻から栄養を注入するたびにチューブを入れるようにしていました。
どのように口に食べ物を入れるか?
食べること自体が怖いというのでなかなか経口摂取をすることができません。ミキサー食やペーストも試みましたが、見た目の問題もあるのかもしれませんが、このようなものは食べたくないと拒否をし続けました。そこで何とか口から食べることのきっかけになればと思い、経管栄養で注入している栄養剤をかき氷のようにして進めてみたのです。
かき氷というのは、口に入れると溶けていきます。この患者は、唾液は問題なく飲み込むことができました。そのため溶けてしまうものであれば問題なく口から摂取できるのでは?と考えたのです。始めは製氷機で凍らせたひとかけらの栄養剤を摂取することから始めました。
栄養剤というのは、それだけでとても甘く、数種類のフレーバーがあるので、飽きずに楽しむこともできます。ただし、栄養剤も処方されたもの。やはり高カロリー独特の飲み物であることは間違いありません。かき氷にすることに抵抗はないかな?また口にすることに抵抗はないかな?と心配でした。しかしこの方法であれば、少しずつ摂取することができたのです。
摂食障害児には、私たちにない感覚がある?
私はこの患者の看護アセスメントをするまで、全く知らなかった知識があります。それは患者がげっぷをした時に口に湧き上がってくる匂いが受け入れられるかどうかということです。
しゃべったり、食べたりすると自然に空気を飲み込んでしまうので、食後にもげっぷが出てくることがありますね。しかし私たちは食べたものの味がしたり、胃液の味がすることもありますが、特にそれについて何も感じることはありません。しかしながら摂食障害児の一部では、げっぷをした時にかえってくる匂いが嫌だと強い不快感を感じる児もいるのです。
この患者の事例の場合、経口摂取を始める前には経管栄養を導入していました。そして胃に物を入れるということに慣らしてから経口摂取を始めたのですね。看護アセスメントをした時に、やはり経管栄養で使用しているときもげっぷは出ていた。それと同じものを経口すると、同じ味のげっぷが出るので、拒否感が少ないのではないかと考えたのです。
この経過を通して、摂食障害児には私たちにはあまり感じ取れない繊細な感覚があるなと痛感しました。また口から食べたくない、怖いといったもののほかに、匂いや不快感を強く感じるのだなということを実感しました。
かき氷がきっかけとなって、徐々に液体のものは経口摂取できるように
この栄養剤のかき氷がきっかけになり、徐々に量も増やしていくことができました。またいつも同じ味では飽きてくるから、自分の好きな味がいいなとジュースを飲むようになったのです。始めは炭酸ものどの刺激になるので嫌だったようですが、少しずつ炭酸にも挑戦。そしてのどの刺激になれたころから、少しずつペースト状のものにチャレンジして半年くらいかけて、おかゆを食べるまでに至りました。
そのころには、誤嚥で救急搬送された祖母もすっかり元気になり児を励ますためにお見舞いに来るほどに。その姿を見て、誤嚥という恐怖感も減少したのでしょう。だんだんと児の顔に笑顔が戻ってきたのです。
摂食障害の児は家族背景も影響するといいます。この児もまじめで親の期待にこたえなくてはいけないという心理的なプレッシャーを抱えていたこともわかりました。また学校では優等生でありたい、注目されたい、そのためには太っていることはハンデになると考えていることもわかりました。カウンセリングをしながら得られた結果を、看護アセスメントに反映させ、その都度展開できたことで、その時に必要な児の看護を行うことができたと思います。また時間はかかりましたが、児の根底にある心の悩みを引き出して、少しずつかかわることができたことが摂食障害の克服にもつながったと考えます。
まとめ
小児科になると、対象年齢層は広く、また疾患も多岐にわたります。近年では摂食障害児も多いのが特徴です。身体的な問題を解決するだけでなく、心理的要因も深く関係するので看護アセスメントや展開は簡単ではありません。しかし個別性を重視して、焦らずじっくりかかわることで解決することができるということも実感しました。また児の持つ力を信じて待つことも大切だということがよく分かった事例です。
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