看護師の中には、腰痛という慢性的な職業病を抱える人は少なくありません。患者を抱える、移動させるといった動作をしていると看護師の腰に負担がかかり、それが積み重なって腰痛出現につながるのですね。今回は、そんな腰痛対策のためのケアのコツをご紹介します。
腰痛は看護の職業病!?
看護学校では患者の体位交換や移乗、移動などの勉強はしたけれど、その時にどのように自分の体を使うべきかというボディメカニクスを学んだ経験のある人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
そのため就職してから、腰を痛めたという人や継続して働く間に腰が悪くなってきたという看護師は後を絶ちません。そのため、就職してからの研修で腰痛対策について、また患者ケアをするときのボディメカニクスを学ぶ機会を初めて得ることができるのです。
腰痛というのは、出現してからの対策では遅すぎます。できれば、腰痛が出ないように、腰を痛めることのないようにあらかじめ対策をしておくことが重要なのです。そこで今回は、看護師の職業病ともいえる腰を痛めないコツをご紹介します。
患者のケアをするときには、体全体を使って行う
患者をベットからベットへ、車いすからベットへ移動をするとき、ベット上でずり落ちた体を上のほうに上げるときなどには瞬発力が必要です。そしてその動作の際には一気に腰や足などに負担がかかるので、腰を痛める人が少なくありません。しかしこの瞬発力が必要な時に、ちょっとした工夫で腰を痛めることを予防することもできるのです。
看護師の中には、患者を持ち上げる時に、腕だけの力で何とか持ち上げようとする人もいます。またその時には、腰や足といった部分まで意識していないので、腰は曲がった状態で力を加えるので腰を痛めてしまうことがあるのです。
患者のケアをするときの基本は、体全体を使うことです。そうすることにより、腰にかかる力が分散されるのです。しかしどのように体を使うのがわからないという人もいますね。一番簡単な方法は、足を使うということです。足といっても股関節と太ももを使うことが重要です。
ケアをするときのコツは、腰を落とす。つまり股関節と膝を少し曲げてくの字状態になることが大切です。そしてもしも患者の体をベットの上のほうに上げる時には、自分の曲げた膝をベット柵につけて体を安定させましょう。また膝で柵を押し付ける、大腿に力を入れることによって腰だけの力ではなく、足の力を利用して患者を動かすことができるのです。
この時に意識するのは、腰はまっすぐにのばしたままで、下肢を利用して腰を落とすこと。そして瞬発力を加える時には、下肢を利用するのです。
ベットの高さを見直そう
病院のベットというのは、高さが変えられるようになっていることが多いですね。患者自身で移動ができADLが拡大している患者は、ほとんど介助が必要ないのでベットの高さが変えられないようになっていることもありますが。
重症度が高い患者ほど、ベットも高性能になります。そのため看護師がケアを行うときにも、ベットの高さを看護師のケアがしやすい高さに調整することが重要です。体位交換、更衣をする、おむつ交換をするなどケアのたびに高さを調整するようにしましょう。少し手間はかかるかもしれませんが、看護師の腰を守るためには、このひと手間が重要なポイントになります。
看護師によっては、ちょうどよい高さというのは異なります。それは身長が違うからです。また体位交換の時には、自分の膝をベットの上にのせて足と腰で支えるということもあるかもしれません。腰を痛めないようにするコツ、それは自分にちょうど良いベットの高さを見つけることなのです。
コルセットを仕事中に使用しよう
コルセットを仕事中に着けている看護師は少なくありません。腰が痛くなってからコルセットをまくのは遅すぎます。そのためできれば、仕事中腰を保護するためにも日常的に使用するのがおすすめです。コルセットをまいていると、自然と腰を意識することができます。また腰を曲げる時に自然と腰を伸ばさなければという意識が働くのです。さらにコルセットで腰をしめることによって、重心がしっかりとして安定感が増します。
コルセットには、細いタイプや太めのタイプ、またバネが入っているタイプや柔らかいタイプもあります。あまり締め付けが強いと動きにくさを感じる人もいますし、緩すぎると安定感がなく不安を感じる人もいます。そのためできればコルセットを選ぶ時には、お試しを使用して購入するのがおすすめです。また人によって体形が異なるので、ある人がおすすめだといったコルセットがみんなにあうというわけではありません。そのためコルセット選びは慎重に行いましょう。
ボディメカニクスを利用することが下手な人はグッズを利用しよう
介護用品を検索してみると、患者の移動を容易にするためのグッズが販売されていることを知ることができます。病棟でもスライディングボードの使用やスライディングシートを使っているところはあるかもしれません。しかしながら、そのようなグッズがない場合、どのようにするべきでしょうか。ナイロン製のものがあれば代用することができます。例えばナイロン製のものを患者のお尻の下に敷き、スライドさせることによって、ベットの上のほうに移動させることができます。このようなグッズを利用することは、仕事の効率をアップさせることにつながります。
また看護師が楽だと思う介助の動作は、患者の安楽にもつながっています。看護師が力を加えて患者を抱えると、時には、患者も圧迫感を訴えることがあるのではないでしょうか。また脇の下に手を入れて持ち上げることに苦痛を感じる患者もいるのですね。そのようなことを考慮すると、看護師が楽にできる動作は、患者の不安や苦痛軽減にもつながっているのです。
まとめ
いかがでしたか?いったん腰を痛めてしまうと、なかなか改善するのは難しいです。また腰を痛めて思うように動くことができない、仕事を続けることができないと腰痛が原因で看護師をやめてしまう人もいるほど。しかし日ごろから体の使い方を覚え腰痛対策をしておくことが仕事を長く続けていける秘訣にもなります。
腰を痛めないケアのコツをぜひ参考にしてみてください。
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