看護師の業務の中に採血業務というものがありますね。
看護師さんの中には、「血管が細い人の採血は結構苦手・・」という方も意外と多いはず。
正直な話、私もそんな患者さんの採血はずっと苦手でした。
ところが最近、ちょっとしたコツを実践すれば意外とスムーズに採れることも多いという事に気が付いたのです。
こういった技術を言葉で紹介するのはなかなか難しいものですが、できるだけわかりやすく紹介したいなと思います。
採血のコツ
それでは早速、血管が浮き出にくい人に対しての採血のコツについて紹介します。
どれもこれも簡単に実践できるコツばかりです。
駆血帯を強く縛ってみる。
血管が細い人は普通の駆血(駆血帯で腕を縛る事)をするだけでは血管が浮き出てこない事も多いものです。
そんなときは思い切って、駆血帯をギュッとして腕をきつめに縛ってみましょう。
そうすると、それまで出てこなかった微妙な細い血管や奥深くにある血管が一気に怒張してとってもわかりやすくなることがあります。
これまでの私の経験では、採血経験が浅い看護師が「血管がわからないんです」と言ってきた場合でも、私がグッと縛り直して「これならわかる?」と聞くと、「あ、これならわかります」となる事も珍しくありませんでした。
ここで一点注意点です。
駆血帯をギュッときつめに縛る時は患者さんには「ちょっと強めに縛りますね」と事前に断りを入れましょう。
何も言わずに突然、グッと縛ると患者さんに「痛い!緩めて!」と言われてしまうこともあります。そしてきつく縛った後は「痛くありませんか?」と必ず一度確認しましょう。
この心遣いをするとしないとでは患者さんのこちらに対する態度が全然違ってきます。
細い針を使う
一般的な病院やクリニックにおいて成人の採血に使う針は21Gや22Gというサイズだと思います。しかしこれだと患者さんの血管が極端に細い場合、患者さんの血管の内腔より太いため血液が漏れてしまい、上手く取れないことがあります。
そんな時は23Gの針を使ってみましょう。
この23Gの針というのは生後間もない赤ちゃんの採血をするときにメインに使う針です。針が細くなるので当然採血のスピードは落ちますが、細い血管からもスムーズに採血することができます。
患者さんの痛みも少なくなるというメリットもあります。
穿刺部を心臓より低くする。
腕を縛っても血管がなかなか浮き出てきにくい患者さんの場合、採血台の上に普通に手を乗せるだけではなかなか血管が出てこないものです。
そんな時は患者さんの腕をぐっと下げてみましょう。(アームダウンといいます)
腕を乗せる部分の高さが調整できる採血台もたくさん販売されています。
腕を乗せる部分に傾斜のついた採血台もラインナップされていますから、自分の働いている施設にないか探してみましょう。心臓より腕を低くすることで、血流が腕に集まりやすくなり結果として血管が張り出しやすくなるのです。
肘を曲げてもらう
腕から採血を試みる時は、おそらく肘の部分の血管を探すことが多いと思います。
普通に血管を探してみてどうしても血管がわかりにくい場合は、患者さんにお願いして肘を90度くらい曲げてもらいましょう。
すると不思議なことに、これまで隠れていた血管に急に触れるようになることがあります。一度「これは血管かも?」とわかると、そのまま肘を伸ばしてもらってもなんとなくわかるものです。
完全に肘を伸ばしてしまうと血管がわからなくなってしまうのであれば、少しだけ肘を曲げたままキープしてもらうのも一つの手でしょう。
血管を暖める
これは特に寒い冬に有効な手段です。
患者さんの中には、夏なら血管が浮き出るんだけど寒くなると急に浮き出てこなくなる、という方も少なからずいます。寒い冬は血管も収縮してしまうので、血管が浮き出にくい患者さんの場合は普通に腕を縛ってもなかなか血管が浮き出てこないものです。そんな時には穿刺したい部分を温タオルやホッカイロなどで数分暖めてあげましょう。
暖める事でこれまで浮き出てこなかった血管がわかりやすく浮き出てくれる場合もあります。
血管がわかりにくい患者さんの場合、緊張してしまいより血管がわかりにくくなってしまう事もありますが、温タオルには患者さんをリラックスさせる効果もあります。
手背や腕の裏面を探してみる
一般的に採血は肘にある血管から行う事が多いですが、肘の血管がわかりにくい場合、一度視点を変えて手背(手の甲)や腕の裏側を見てみましょう。
意外と太い血管があることも多いのです。
肘にある細い血管を無理やり狙うより、手背や腕の裏にあるしっかりした血管から採血したほうが良い結果になることも多々あります。
ただしこれらの部位は肘の内側より神経が敏感で痛みを伴います。
これまでそういったところで採血したことがないという患者さんには、必ず痛みがあることを最初に説明しましょう。
恥ずかしいことですが私自身そういったところで意気揚々と採血して、「こんな痛いなんて聞いてない」と怒られたことがあります。
早い段階でベテランに代わってもらう
採血業務にある程度慣れてきて採れるようになってくると、「この患者さんは絶対に自分が採ってやる!」となってしまいがちです。
採血しにくい患者さんを相手にムキになって、失敗しても何度も挑戦してしまうこともあるでしょう。採血というのは痛みを伴う行為ですから、何度も刺していると患者さんも気分が滅入ってきます。
「自分が採りにくいのはわかっているけど、さすがに・・」とイライラして、険悪な雰囲気になってしまうことも。
散々そうなってしまった後「変わってください」と言われると、たとえベテランであったとしてもとても緊張してしまいます。
私もこれまで散々失敗され穴だらけになった患者さんの採血に入ったことがありますが、とても険悪な雰囲気で思わず腕が震えてしまったものです。
普段は問題なく採れるような血管であったとしても、「もう失敗できない」というプレッシャーに負けて失敗してしまう事もありました。
そうならないように、早めにベテランの看護師に代わってもらいましょう。
「2回失敗したらベテランに交代する」というルールを作っておいてもいいかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
手前味噌ではありますが、私は総合病院で年間5,000人の患者さんの採血を10年以上行っていました。最初は簡単な血管であっても全く採れず、患者さんに怒られながら冷や汗をかきながら採血したこともあります。
今回紹介したコツはそんな中で試行錯誤しながら見つけたものばかりです。
自分にはセンスがないから、なんて諦めないで、色々試してみてください。
諦めずにずっとチャレンジしていると、いつの間にか「あれ、意外と採れるぞ」と思う瞬間があるはずです。
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