産休明けで復帰する総合病院の看護師さんは、お産や育児の経験があるため、病院によっては復帰する病棟が産婦人科になりやすい場合があります。それ以外にも、産科のクリニックへ転職される看護師さん、突然産婦人科へ異動になった看護師さん達が、産婦人科へ行って最初に困られる技術の一つが胎児の心音聴取ではないでしょうか?
コツを掴むと簡単ですので、ぜひ助産師からコツをお伝えしたいと思います。
胎児の心音聴取のコツ
胎児の心音聴取はいつ行う?
胎児の心音聴取は、色んな場面で実施します。
管理入院中の妊婦さんの1日1回の赤ちゃんの心音確認、分娩中の赤ちゃんの定期的な心音確認など…。基本はドップラという機械で胎児の心音を拾い、1分前後測定し胎児が元気かどうかを確認します。超音波と同じ用量で、ジェルを使い心拍を拾います。
それ以外にもお腹の張りの具合と胎児心音を見るための分娩監視装置という機械を付ける際にも、胎児心音をしっかり拾うことが必要不可欠です。助産師が行う場合が多く、あまりしたことがないという看護師さんもおられるかもしれませんが、毎日しなければならない看護師さんも多いかと思います。産科分野では基本中の基本の技術となるものです。
胎児心音の確認の基本
まずは簡単に基本を説明したいと思います。
胎
児心音の正常値は110〜160bpm(1分間に心拍数110〜160回)です。妊娠週数が浅いほど心拍数は多く、成熟してくるほど少なくなっていきます。だいたい1分前後聴取し、心音のベースが正常値の範囲内かどうかを確認します。
病院によって、もしくは助産師・看護師さんによっては、もっと短い時間の聴取で終わってしまう方も多いかもしれません。場合によってはそれもアリなのですが、胎児の心音は正常値の範囲内であれば問題ないとは言い切れないのです。もう少し長めに聴いたほうが良い理由をお伝えしたいと思います。
基線細変動という言葉をご存知でしょうか?胎児の心拍の細かな変動のことを基線細変動といいます。基線細変動は消失・減少・中等度・増加に分類されます。正常である中等度の場合、6?25bpmの細かな変動が見られるのです。
ドップラで心拍を聴いていても、変動が中等度より少ない場合やほとんど変動していない場合、赤ちゃんがかなり危険な状態である場合があるのです!ですので、しばらく心音を聞いてちゃんと変動しているかを確認することが必要不可欠となります。
次に一過性頻脈です。これは赤ちゃんが寝ていたりすると、赤ちゃんが元気でも数分〜十数分見られないこともあるのでドップラで聴くには限界があります。ただ一過性頻脈が見られれば赤ちゃんの元気さが更に分かるので、覚えてもらえると良いかと思います。
一過性頻脈とは一時的に胎児の心拍数が上昇することを言います。15秒以上の上昇を指し、この一過性頻脈が20分に2回以上あると、赤ちゃんが元気なサインとなります。ですので、しばらく心音を聞いて基線細変動以上に心拍数が上昇し数十秒後にベースに戻る動きがあれば、さらに赤ちゃんは元気だと安心することができます。
妊娠後期の心音聴取は簡単?
妊娠後期に入ると、赤ちゃんは大きくなっているので、胎児の心拍は確認しやすくなるかと思います。細かく説明するとややこしいので、ポイントとコツだけお伝えしたいと思います。
胎児の心拍数は、赤ちゃんの肩あたりにドップラを置くと拾いやすいです。
胎児は多くの場合、妊婦さんの左側(看護師から見ると右側です)を背中にしていて、頭を下にしています。ですので、まずは妊婦さんの左下側にドップラを当ててみてください。
それで拾えなければ右下側に当ててみます。
それでも拾えなければ範囲を広げていくのですが、むやみやたらと場所を変えて探すのはお勧めできません。
同じ位置でも、ドップラの角度を変えると聴こえてくる場合も多々ありますので、聴こえないからと次々と違う場所を探すのではなく、ドップラの角度を360度変えながら少しずつ動かしていったほうが確実だと思います。くれぐれも探すのに必死になって強く押すことがないように注意してくださいね。
妊娠前期の心拍聴取は難しい?
妊娠10週前後になるとドップラでの心音聴取が可能となってきます。
ただ切迫流産の方の場合、ドップラーで下腹部を触ることが刺激になってしまうため、必要以上に実施しない方がいいとされています。
ただし1日1回は病棟の決まりで聴取する必要があったり、妊娠継続に対して不安を感じている妊婦さんの希望で心拍聴取をする場合もあります。実施する場合はぜひぜひ優しくしてあげてください。
赤ちゃんはまだ小さいので心音聴取が難しい場合もありますが、実は意外と簡単だと思っています。なぜならまだ子宮も小さいからです。多くの場合は恥骨上で聞こえますので、まず恥骨上真ん中にドップラーを置くことがコツです。聴こえない場合も少しズラしたり角度を変えると聴こえてくるかと思います。
胎児心音聴取が楽しめるように…
週数が浅い妊婦さんの場合、心音が探しにくいことがあります。また切迫流産や早産の妊婦さんの場合、この操作が刺激になることがあるので注意が必要です。そのために苦手意識を感じてしまう方がいるかもしれません。
私が前に勤務していた場所では、ちょっと探して心音が拾えないと、「お願い?」と助産師に任せてくる看護師さんも多かったです。
今までの看護技術にはなかったものですから、特に最初は戸惑いますよね。心音がなかなか聴こえないと、妊婦さんや産婦さんも不安になってこられるので、医療者ととして申し訳ない気持ちになったり、"赤ちゃん…大丈夫?元気?"と密かに焦ってしまうこともありますよね(笑)
しかし心音聴取は、妊婦さんや産婦さんと一緒に赤ちゃんが元気かどうかを確認できる手段です。心拍が聞こえると多くの方は素敵な笑顔になり、"よかった?"と安堵されます。とても素敵な時間だなと感じます。経験を積んで、ぜひコツを掴んでいただきたいと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?
手技は簡単だけど、慣れるまでは焦ってしまう赤ちゃんの心音聴取。今まで違う分野で働いてこられた看護師さんであれば、馴染みのない手技であるため、最初は戸惑ってしまいますよね。
今回の内容が少しでも参考になり、心音聴取がより簡単に感じてもらえるようになれば嬉しく思います。ぜひ産婦人科病棟での勤務を楽しんでくださいね。
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