身障者って怖いの?身障者施設に就職・転職するうえでの注意点は?わたしが身障者施設勤務で、経験したこと・感じたことをお話ししていきます。
身障者の方たちとは
身障者(別名:身体障害者)― 身障者施設に入っている人たちは基本的にそう呼ばれています。
「身障者の人たちは何をするかわからず怖い。」
世間一般でそう感じる人たちがいることは事実です。
確かに、身障者の方たちは健康で丈夫な方が多いので、体力が有り余っている方もいらっしゃいます。決して饒舌ではない方、どちらかというとあまり口を利かない方もいらっしゃいます。
だから「何をするかわからない」といって敬遠するのはいかがなものでしょうか。
わたしたち看護師が身障者の方たちと接してみるとわかるのですが、身障者の方たちは基本的に人に対して優しい方たちが多いのです。
これから身障者施設に就職・転職しようと考えているみなさんには、まずそのことを認識していただきたいと思います。
身障者の方たちの一般的な生活
わたしが就職した身障者施設は定員60名の施設ですが、デイサービス・ショートステイを含めると最大で80名程度の受け入れが可能となっています。
それまでは総合病院に勤務していたのですが、看護の幅を広げたくて身障者施設に転職したのです。
身障者の方たちは早起きで規則正しい生活を送っていますが、頚椎損傷などの身体障害や知的障害、精神疾患を患っている方もおり車いすの乗っている方が大半です。
車いすに乗っている方たちは普段起きられずに寝ていることが多いのだろうと思われがちかもしれませんが、昼間の間、まったく寝ないで一日中起きているのがごく一般的な身障者の方たちなのです。
自分ではうまくお話ができない方もいらっしゃいますが、デイルームに集まり顔を合わせることで、みなさん日々の暮らしを楽しんでいるのです。
生活支援員の手助けは必要ですが、身障者の方の中には積極的に外出される方もいらっしゃいます。生活支援員は、身障者の方々の健康から身の回りのことまで生活全般を見てくれています。
身障者の方たちはその身体的特徴から嚥下障害を持っている方もおり、そういう方たちは食事の時間でも十分満足に食事をとることができません。
そのような場合、生活支援員は食べたときのうれしい気持ちを身障者の方に話すことにより、嚥下障害のある方にも楽しい雰囲気を感じてもらえるよう努めているのです。
身障者の方たちに対する看護師の役割
このように身障者の方たちは普段は健康で丈夫なのですが、一度体調を崩されると悪化してしまうケースが少なからずあるのです。
その体調を崩しかけているサインにいち早く気づくのが看護師の役割です。
たとえば
- 抗けいれん役を使用していてもけいれんを起こしてしまう
- 一度褥瘡(じょくそう)を起こすと治りにくい
- 嚥下(えんげ)が難しいため肺炎になりやすい
このような症状を起こしてしまう前に、管理栄養士や理学療法士、ST(嚥下障害に対して支援する人)、生活支援員などと連携・協力し、大事に至らないようにしなくてはならないのです。
また、看護師の重要な役割に排便コントロールがあります。
身障者の方たちは少なからず麻痺がありますので、自力での排便が非常に困難です。
健常者の方と違いしっかりとした運動ができませんし、水分の補給も十分に取れないケースも多々あるため、便秘をしたり下痢になったりもします。
この排便コントロールを看護師が上手に行うことで、身障者の方たちの生活をより快適にすることができるのです。
身障者の方たちへの社会の対応
身障者の方たちの中には、自分の置かれた状況から世をはかなみ自殺未遂などのつらい体験をし、ナイーブで傷つきやすくなっている方もいらっしゃいます。
そのように傷つきやすい身障者の方を、何をするかわからないからという理由なのか、あからさまに入店拒否をしたレストランがありました。
そのレストランは知的障害者の方たちが勤務するお店であるという評判であったため、身障者の方と生活支援員が楽しみに出かけていったのです。
外出をすることにより、身障者の方は気分転換にもなれば生きる意欲がわいてくる効果もあります。
にもかかわらずそのような行為がなされてしまいました。
事態に当面した身障者の方と生活支援員のショックは計り知れませんでした。
その一方、駅の駅員さんたちは身障者の方たちのエレベーターの利用や電車に乗る際などに当たり前のように補助してくれます。他の業務もやりながら大変な労力だと思いますが、嫌な顔一つせず行ってくれるのです。
ご近所の街の人たちも、身障者の方たちが買い物に出かけた時など、車いすが通りやすいように道を開けてくれたり、坂道の段差があるところなどでは生活支援員に手を貸してくれたりもします。
このように正反対の対応がなされるケースも少なくないのが今の社会なのです。
身障者の方たちとのエピソード
ショートステイにたびたび来られる身障者の方がいます。
その身障者の方を仮にBさんと呼びます。
Bさんは、大柄なひげの濃い陽気な男性の方です。
普段Bさんはひげをそるのを嫌がり、暴れこそしませんが生活支援員がひげをそろうとしても駄々をこねてひげをそらせません。
ほとほと困った生活支援員が
「Bさんがまた駄々をこねてひげをそらせてくれないの。あなたから話をしてみてくれないかしら。」
と、わたしに相談してきます。
そういう時には決まってわたしが
「Bさん。支援員さんが困っているわよ。言うことを聞いてあげないとね。」
と、微笑みながら諭すように言うと、看護師の言うことだからなのでしょうか、素直に聞いてくれることもあれば、その日の気分次第では拗ねてしまってどうしても駄目なケースもあります。
そんなBさんですが、帰宅されるときにはおぼつかない口調で
「ありがとう。また遊びに来るからね。」
とニコニコしながら手を振って車いすで帰っていくのです。
その時のBさんは、さっきまでの拗ねた表情はどこに行ったのか、非常に穏やかな晴れ晴れとした表情をしているのです。
その笑顔を見たときに、私たち看護師は癒され、もっともっと頑張って身障者の方たちに寄り添おうと思えるのでした。
まとめ
わたしが身障者施設に勤務していた経験からみなさんに言えるのは、身障者の方も一般の健常者と何一つ変わらないごく普通の方であるということです。
それどころか非常に感受性の強い方たちであることが多いということです。
これから身障者施設に就職・転職しようとするみなさん。
また世間一般のみなさん。
身障者の方に対して、奇異の目で見ずにぜひ普通に接していただけるようお願いします。
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